種植えです
お待たせしておりますー
長い間土の中にありながらも芽を出さずに眠っていたセイント・リリーフ。
その鈍い光沢を帯びた種をじっくりと改めて観察していきます。
軽くコツコツ、と叩いて硬度を確かめてから手の平よりも大きな大きな楕円サイズのそれを抱えて膝に乗せ、道具を手に取ります。
「シア、それは?」
あまり日常生活でお目にかからない物が気になったのか、黙って見守ってくれていたお姉様がそう聞いてきたので、ヒョイと目の前に掲げて説明します。
「これは、細かな部分の研削を行う手動工具です。セイント・リリーフの種は表面がとても硬いですから、発芽しやすくするために、敢えてキズをつけようかと。そうするとうまく水を吸わせることができるはずなので」
「なるほどねぇ、硬いカラに覆われたままだと水が吸えないものね」
コクリと頷いてから、種に向き直ります。
抱え込んだ種の大事な部分まで削ってしまわないように、慎重に……
ザリッザリッと音を立てながら、照りつける太陽の下、無心で作業。
額から汗が粒になって流れ落ちる前に、お姉様が水魔法でスッと取り去ってくれるおかげで気にせずに手元に集中出来ました。
ふぅ、ずいぶん表皮が薄くなりました。
こんなところでしょうか。
種を先ほど掘っておいた穴に静かに横たえ、
土を被せます。
無事に花が咲きますように……
土にそっと手をつき、お祈りをしながら魔力を流し込んで…後は、用意していた水を撒けば、完了です。
ついでにリュダシスの花にも水をやって、ようやく一息つきました。
「ふぅぅ…と、」
おぉ、顔を起こすと首がバキバキと淑女らしからぬ音が。
うーんずっと種を抱え込んで下を向いていたので、肩が凝ってしまったようです。
後でジェシカにマッサージしてもらおうかしら…
よっこらせと立ち上がると、立ちくらみがしてフラついてしまいました。
それを見咎めたお姉様の「今日の作業はこの辺までにしたら?」という言葉に従い、今日は下がらせてもらいましょうか。
「お姉様、お願いがございます」
「あら!シアがあたしにお願いなんて珍しいわね!なぁに?なんでも聞いちゃうわよ♡」
ほっぺをむにむにしながらそう言ってくださったのですが、なんでも聞かれてしまっては困りますお姉様。
「王宮の外に出たいのです」
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