姉の気持ち
※第三者視点 姉視点
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執務室へ向かう殿下と別れ、シアラとアデル、ジェシカは庭にやってきた。
「ここで育てるのね」
「はい。いまはまだ土を診ている段階なのですが」
土にそっと手をつき、じんわり温かく、力の流れもうまく馴染んでよりエネルギーが多く巡っているのを確認。
「どう?」
「そうですね…水分量、柔らかさ、どれもいくつかある文献に載っているものと合致してきたように思います。あくまで文献なのでこれが正しいかはわかりませんが。うん…いい感じ、ですね」
そのままシアラは道具を使って土を均し始めたので、作業の邪魔にならないところに下がり、妹を眺める幸せな時間を堪能するアデル。
いつもならふわりと柔らかく広がるシアラのブラウンの髪は纏めてつばの広い帽子のなかへしまい込まれている。
一心不乱に土をいじる様子は確かに一般的に令嬢らしいとは言わないが、それは本人が全くそう呼ばれていることなど知らない"植物学の革命児"としての妹の姿。
アデルや家族にとってはとても誇らしく、もっと自信を持って欲しいといつも思うのだ。
それでなくとも愛らしさと優しさだけで我が家の宝物なのに。
「何度見ても不思議ねぇ、あの"診察"の光景…」
「左様でございますね」
シアラは土に手を当て、考え込むように目を瞑っている。
「シアだけが使える、土を読み花を育てる能力…お母様は土の魔法が得意だったけれど、それも関係あるのかしらね……。で、ジェシカ?」
「はい」
アデルは持っていた扇で口元を隠す。
「話は変わるけど。シアと殿下、何かあった?」
「何か…とおっしゃいますと」
「わかってるくせにぃ!」
シアラには見えないように扇の下でむぅーっと口を尖らせた。
本当にこのお方は……。苦笑しながらも
「…シアラ様はともかく、殿下は…そうですね、シアラ様に対して随分と優しくなられたというか。朝食の時などは、もう眼差しが甘くって……。」思い出し、遠い目をするジェシカ。
「もちろんシアラ様はお気づきではありませんが」と付け加えると、「さっすがシア!そのまま黙殺しちゃえばいいわ!ほほほほ」
パチン!と扇を閉じて楽しそうに笑うアデル。
「…アデル様、差し出がましいようですが、あまりお邪魔をされるのもいかがなものかと思いますよ?」
使用人との距離が近しいチェスター家とはいえいきすぎた進言であると思いつつもそうたしなめると、アデルはぶぅっと頬を膨らませて不満そうな声を返す。
シアラの前では絶対に見せない姿だ。
「わーかってるわよぅ。あたくしはシアがちゃんと幸せならいいわ。お相手を試させてはもらうけどね!」
それがお相手にとっては結構な障害なのですけれどね………
そうは声に出さず、ジェシカは自分の仕える主人の幸せを密かに願った。
お読みくださりありがとうございます。
登場人物紹介とかはまだ大丈夫ですよね??
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