穏やかな朝です
ブクマがたくさん!
うわぁ〜〜ありがとうございます
ゆさゆさ
優しく肩を揺られて夢の中から現実へと意識がぼんやり浮上していきます。
「シアラ様、朝でございますよ」
「んん〜…あと……ご……じかん…」
「5、時間ッ⁉︎昼寝までいく気ですか⁉︎本日は早めに土の様子を見ると仰ってたじゃないですか!さぁ、起きてくださいまし!…んもぅ、昨日は夜更かしなさったんですか?」
「ん…ちょっとね……」
昨夜は、無事に殿下にリュダシスを見せられて、達成感を胸にホッとして眠りにつきました。
殿下に伝わったといいのだけど。
紅は屠る色なんかじゃない、とっても暖かい色だって。
「伝わってたらいいな…」
ありがとう、と言ってくれた声はとても穏やかだったから、こちらまで嬉しくなってしまった。
うん、なんだかやる気が出てきました。
「頑張りますか…!種をお預かりして、土とお見合いさせなくちゃ」
種の話をしに、支度を済ませて朝一で殿下のもとへ。
コンコン
昨日のことを思い出して、ソワソワしながらノックする。起きていらっしゃるかしら…
「入れ」
ほ…っ
よかった、今日はちゃんと返事してくださいました。
「失礼致します。殿下、おはようございます」
部屋へ入ると、昨日とは打って変わりすらりとした体躯をシャツで覆った殿下の姿が。
「あぁ、シアラか。お早う。昨晩はよく眠れたか?」
書類を見ていらした殿下が顔を上げてふっと口の端を上げて気遣ってくださったのですが。
「は、はい。お陰さまで…」
……なんか、ちょっと違和感があるのは何でしょう…?
「朝食はまだだろう?良ければ一緒に食べないか?」
「え、あ、はぁ」
いやぁ、別々でお願いしたいん「昨日美味しそうに食べていたクロワッサンもあるぞ」
「ご一緒させていただきます!」
「わかりやすい反応だな」
ははっと快活に笑う殿下に、声をかけられ朝食を準備し始めたジェシカが目を丸くしています。
何か昨日までと雰囲気が違う気がしなくもないですが、お会いして間もない我々では何が違和感なのかまではさすがにわかりませんし特に問題もないのでまぁ…いいですよね放っておいても!
おとなしく席について、いただきましょう。
「いただきます」
「いただきます」
むぐむぐ、もくもく、ふんふん〜やっぱりこのクロワッサン、美味しいです〜
ほにゃ〜んとなりますねぇ。
「ずいぶん幸せそうに食べるな」
「むぃっ!…し、失礼いたしました気をつけます…」
うわぁ変な声を出してしまいました!また食べるのに夢中になって…!なんでわたくしはいっつもこう淑女としてキチンとできないのでしょう…
「いや、それでいい」
窓から差し込む日差しの柔らかな雰囲気を纏わせた殿下は紅茶のカップを傾けながら、肩を落としたわたくしに向かって目を細めます。こ、神々しいです…
え、というか、いいのですか?
殿下は寛大ですね…有り難いです…。
わたくしのような引きこもり令嬢にとっては王族の方と一緒にアレコレするのは中々に大変なので…。
「土の様子はどうだ?」
「あ、はい。土作りはうまくいったと思います。種と合うかどうか見てから植えようかと。」
「なるほど、単にいい土ならば大丈夫というわけではないのだな」
そうなのですよね、完璧に土を仕上げればどんな花も咲いてくれるというのならばいいのですけど…
「合う合わない、欲しいものが満たされているか、相性はやはり大切ですね。種ごとにちょっとずつ好みもありますし」
「ほぅ、好みか…………………ちなみに、シアラの好みはどうなんだ?」
「わたくしのですか?」
殿下はいつになく真剣な眼差しです。
急になんでしょうか…?
「……うーん…慎ましく小さくもたくましく、束ねる時にはなくてはならない大切な存在というか…」
「控えめながらも強いヤツ、か…」
「そうですね、レヨンはそういう花です。」
「は?」
「え?」
「花?」
え、花の話ですよね?
「レヨンは大体どんな野原でも見られますので、殿下もご覧になったことがあるかと。見た目は控えめな白い小さな花弁ですが、どこにでも生えるたくましい花なのです」
花束を差し上げる時には大体レヨンを使います。花束を作る時、他の花をそっと引き立ててくれますしボリュームも出るので。比較的容易に手に入りますしね。
「……………………そうか」
殿下、なぜ苦笑されているのですか?
よくわからないけれど、ここは笑っておきましょう。ふふふ?
高貴な方と過ごすということで王宮に来る前は大きかった畏怖と緊張は、殿下や周囲の皆様のおかげもあって早くも落ち着いてきました。
そうして穏やかな1日の始まり。
その後、わたくしの部屋を訪ねたお姉様が、わたくしと殿下が2人で朝食を食べていたことに「シアと朝食なんて100年早いですわよ!」と殿下にチクチクしていましたが。
レヨン…かすみ草のようなイメージです。
変わらずの分刻みのスケジュール(8月まで 笑)のくせに書きたくなる病気。
読んでもらってると思うと早く上げたくなるんですよね…




