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大好きなのです!

数ヶ月休み無し…仕事地獄。


なのにそういうときって書きたくなるんですよねぇ


お待たせしました。

いつもブクマ、評価、ありがとうございます。


励みにしております



到着した執務室には、すでに先客がいました。

書類の山に囲まれた優しげな男性が…この国の宰相、デヴィッド・フォスター様。わたくしの義理のお兄様です。



「おや〜殿下。おはようございます。本日はずいぶんノンビリ出て来られましたねぇ。それだけ余裕があれば仕事を倍にしても大丈夫ですよねそうなんですよね?」


「…おはよう、デヴィッド。遅れて悪かった。だからそれは止めてくれ…」


「あーら、デヴィッド、しかたないわよ。殿下は昨日か弱い令嬢を攫ってくるのにお忙しかったんだから」


冷たく強い女性の声に、殿下が片眉をはねさせ執務室に入っていきます。


「…アデル。攫ってなどいないぞ」

「父の了承も得ずに連れて行ったのですから攫ったも同然ですわ!」

「本人の許可は得た!」


「アデルお姉様!」


殿下の後ろにいた背の低いわたくしからは角度的にお姉様の姿が見えなくて、ぴょこんと横から顔を出すと…

いつ見ても美しい深い海色の瞳がわたくしをとらえ、腰まである同色の髪がふわりと揺れて。


「シア〜っ!!!」


バッと駆け寄ってきたお姉様は、殿下をおいやりわたくしをふんわり抱きしめてくれます。



「おい、お前の嫁、俺への態度が悪すぎないか」

「うちは基本どうでもいい人には塩対応なんで〜」

「お前らいい加減不敬罪でつきだすぞ」

「それ、後が大変なのは殿下ですよ?」

「くそ…っいつもこれだ!」




背後で繰り広げられる言葉の応酬はスルーして、お姉様がぎゅうっとしたままわたくしの頭を撫でてくれます。

わたくしが猫ならば喉をゴロゴロ鳴らしているでしょう。


「お姉様、お会いできてとっても嬉しいです!ますます綺麗になられたみたい!」

「あぁ〜久々に会ったら……どうしようデヴィッド!」

「どうしたんだい?」

「あたくしの妹が可愛すぎる!」

「それは大変だね〜、愛でたらいいんじゃないかな?」

「そうするっ!きゃあんシア〜ふにふに〜」頬ずりされ「んにゅうぅ」変な声出ました。



と、そこへ。


ばあんッ!!



「シアっ!ここか!!」




執務室の扉を壊さんばかりに乱暴に開けて入ってきたのは、ライトグリーンの瞳に髪、スラリと背の高い男性…

「まぁ!ノエルお兄様!」



「また面倒なヤツが来た……おい、ノエル、お前一応近衛隊長だろう、仕事は?」


「陛下は自室でお休み中、近衛隊はいまイアンが稽古をつけているところなのでサッと抜けて馳せ参じました!殿下!!シアに会いに!」


「馳せ参じんでいい!」


お兄様はビシッと敬礼をしてはいますが、明らかに意識がこちらへ一直線。



「そんなことより、シア!大丈夫か?いきさつは大まかには聞いたけど、殿下に変なことされてないか⁉︎」


「兄妹揃ってこれか!」


お姉様に代わりお兄様にも抱きしめられ、というか持ち上げて覗き込まれます。



「お兄様にもお目にかかれるなんて嬉しい!わたくしは元気です、殿下もとても良くして下さってますわ」


にっこり笑うと「オレのシアが天使すぎる…!」とよくわからないことを言って悶絶するお兄様。


お兄様お姉様が優しく撫でてくださるのが本当に安心できて、大好きなのです。

ふにゃりと笑み崩れてしまいます。

逆に弟のリアムはナデナデしたくなっちゃうんですけどね。


「で、なんで私達のシアラはつれてこられたんです?」


ふと真面目な顔でお姉様が殿下に尋ねると

「…いまからお前にも話すがこれは、国家機密だ。チェスター家と近衛団長・副団長、宰相含む国の上層数名しか知らん」そう前置きして、語り始めました。



*********



「…"セイント・リリーフ"ねぇ」


ちらりとこちらを窺うお姉様に、小さく笑んで返します。

生まれて初めて頼りにされているのですから、純粋に、応えたい。


その想いが伝わったのか、お姉様は何も言いませんでした。



「…ていうか、育て主として狙われるよりも殿下の側の部屋ってのはかえって危なくありませんこと?あと殿下がシアの婚約者とか許せない個人的に」

「確かに!天使のように可愛いシアがすぐ近くに寝泊まりするとか…。あと婚約者はないよなぁシアにはもっと良い奴がいるだろう」

「殿下欲求不満そうだしね〜」


「貴様らのその妹天使フィルターを外せ。そしてデヴィッド、後で覚えてろよ」


わぁこわ〜いと全く怖くなさそうに、むしろ眠そうにしながら紅茶をすするデヴィッドお義兄様、一応申し上げますとこれでも切れ者宰相として他国まで名を轟かす人でもあります。



「そうですわ。お兄様お姉様。特に見目もよくありませんし、わたくしに殿下が興味を持つことなどありえませんから大丈夫です!」


ふふん、自信を持って言えますとも!

あくまで"花の育て主"として求められているだけですから!


いつになく自信満々に言い切るわたくしに、場は微妙な空気に。あら?



「いや、そういうことでもなくてだな…」


「え?」


殿下がブツブツと発した言葉が良く聞こえずまた顔色を伺うと、また眉間にシワを寄せて渋い表情になってしまわれました。す、すみません…



このやりとりを黙って見ていたお兄様が、突然がばりとわたくしを抱き上げて殿下と距離をとります。


「きゃ…!お、お兄様どうされましたの?」

「いや、なんとなく。離れた方がいい気がしたんだ」

「ノエル兄様、グッジョブ!」


お兄様とお姉様の仰ることはよくわかりませんが、殿下、唸っていらっしゃいますよ?



「まぁシアラちゃんが嫌でないのなら…殿下の近くだと自動的に護衛もしっかりされてるしね」



デヴィッドお義兄様がそう言ってポンと頭を撫でてくれたのですが。



「嫌…………………では、ないです…はい…」



殿下にじぃっと見られてしまい、嫌だとは言えませんでした…

はいそうです、ノーと言えない貧弱土いじり令嬢です…

嫌というか、落ち着かない、だけなのですが。殿下はいい人ですし…



何故だかジーっとこちらを見続ける殿下の視線から逃れるように、お兄様の肩に顔を埋めたのでした。

お読みくださりありがとうございました!

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