僕が物語を書く理由
「どうして物語を書いているの?」
って、言われたことがある。
どうして。どうしてだろう。
解らなくて、僕は適当に
「生きてるから」
って、答えた気がする。
「あなたの趣味はなんですか?」
それは、僕の一番苦手な質問。
その後には必ず、
「どうしてそれを始めたのですか?」
なんて、聞かれてしまうから。
僕の一生は回り回って、
気付いたら十六歳になってしまった。
十六歳。十六年。
いい子に、真面目な子に、優しい子になるように生きてきた僕の、集大成が今の「僕」だ。
「つまんないやつ」って、言われたことがある。
「まじめなやつ」って、笑われたことがある。
「役立たず」って、怒られたことがある。
……「死んじまえ」って、囁かれたことがある。
だけど。だけど。
物語を綴れば、僕は「僕」で居られる。
「生きていていいんだよ」って、言って貰える。
「そのままでいいんだよ」って、微笑んで貰える。
「泣いても良いよ」って。「独りじゃないよ」って。
「汚くなんか、ないよ」って。
嘲笑も、怒鳴り声も、喧嘩も、突き放されるような言葉も、苦しいぐらいの劣等感も。
何もかも、聞こえない世界へ。
僕が物語を書く理由。
僕が、詩を書く理由。
僕が、絵を描く理由。
僕が、読書をする理由。
それは、僕を。
此所に居る、十五歳の僕を、守るためだと、僕は思う