第3話「王城にて」
少し時間を巻き戻す。
クロウが魔王の城に召喚された頃こちらでもある物語が生まれようとしていた。
ルスカ城・召喚の間―
「やった、やったぞ」
おぉと、歓声が起き上がる中、その中心では何が起きたのか把握出来無いと言った表情でいる四人の若者がいた。
「おぉ、これは、これは勇者どのよくぞ来られた」
一番豪華な服装をしている。初老の男が四人の若者に声を掛けた。
「ゆ、勇者?」
とここで早く復活したのは茶色の髪で少し目尻が垂れている。いかにもモテる顔の男だった。
「そうである。あなた方四人は我々が呼んだ勇者である。その証拠に右手の甲に紋章があるであろう?」
と男が言う。
茶髪の男が右手の甲を見るとなるほど確かに何かの模様の刺青見たいのがある。
「名前を聞かせてくれぬか。勇者殿」
「俺は、笹川亮だ」
亮は四人の右端に居た為。左に向かって他の三人の名前を教える。
「俺の隣にいるのは、鈴宮朱音。次が西園寺白雪。そして最後が……十六夜勇気《十六夜勇気》だ」
十六夜勇気と呼ばれた男はダークブラウンの短い頭髪をしており亮より少し大きい感じでスポーツマンの快活な笑顔が似合う青年であった。
「ここではなんだ部屋を変えようでないか」
勇者四人は言われるままこの部屋を出た。
✵
勇者達は謁見の間に通された。
四人は移動の時間で少し頭が冷えていた。
「では、何から話そうか」
亮が一歩前に出て膝をつき頭を垂れ発言する。
「よろしいでしょうか」
「おぉ、勇者亮殿。よいよいそんな堅苦しい事」
では、と言って立ち上がる。
「まず、我々はこの世界から元の世界へ帰る事ができるのでしょうか?」
亮は真面目な顔つきで王に聞く。
「……………」
答える事はしなかった。
(つまり、帰る方法がないと。これは困ったなぁ~)
と内心呟く亮。
朱音は少し顔に怒りを溜め、白雪は顔を青くしている。
(まぁ、当然の反応か)
亮は勇気の方を見る。
(へぇ~)
勇気は以前、憮然と立っていた。
亮は話を続ける事にした。
「では、次にそちら側の紹介をしてもらってもよろしいでしょうか」
亮は笑顔で王に頼んだ。
あぁ、そうであるなと王は良い紹介が始まった・
「我は、この国の王である。名はカルフス・オルバト・C・ルスカと言う。カルフスと読んでくれ」
と自己紹介をするとその隣を立っていた騎士と呼ばれるに相応しい鎧に包まれた男は出てくる初老とまでわ行かない金髪の男が一歩前に出て一礼をする。
「こちらベルク・サルバート将軍だ」
ベルクはよろしくお願いたしますと言うと下がった。
この部屋には後、十数人の兵士がいたが紹介するまでもないのだろうカルフスが話を始めた。
「つい先日、竜神王と言う魔族の長が復活した。1000年前に勇者に倒されたと言う伝承が残っているのだがそれが復活してしまった。そして、この大陸を我が物にすると言って攻めてくる宣言をしたのだ魔族達は我々よりも人間よりも遥かに強い。だから我々は伝承に従って勇者を召喚するしかなかった。勇者は一騎当千の力を持つとされていた。確かに何の断りもなくこの世界に呼んでしまった事を詫びよう」
この通りだと言ってカルフスは頭を下げた。
「国王、な、何を」
ベルクが慌てた様子でカルフスに近づくカルフスはベルクを手で諌める。
「どうか、国を大陸を世界を救ってくれ」
カルフスは懇願した。
少しの間が空間を制す。カルフスはまだ頭を下げたままだ。
すると、一つの声がカルフスに掛かる。
勇気の声だ。
「なぁ、国王。俺は自慢じゃないが頭悪い」
カルフスその声の主を見るように頭を上げる。
話は続く。
「んで、俺はボランティアが嫌いなんだ。だから俺は条件を付ける国を救って欲しければそれなりの報酬があるってもんだろう?」
その声はカルフスを試すような口ぶりで聞く。
「俺は単純だ。その報酬でやる気も違ってくるだろう」
どうだと言わんばかりの態度。
周りの兵士から少しのプレッシャーが放たれる。
「倒した暁には恩賞は必ず渡そう」
カルフスは答える。
「具体的には?」
勇気が質問を重ねる。
「望むもの与えようではないか」
カルフスは腹を括った様に言った。
勇気はその言葉を聞いて破顔し―
「俺は乗った」
と言った。
勇気はお前らは?と三人に視線を向ける。
「あたしはまぁいいけど白雪が」
と朱音が白雪を見る。
「わた、私は少し怖いです……」
と下を向く白雪。
「少し考える時間を下さいませんか国王?頭の中を整理する時間を頂きたい」
亮が国王に断りを入れる。
「あぁ、そうであったな。こんな事をすぐに決めろと言われても困ってしまうな。部屋を用意しよう一晩ゆっくり考えてくれ」
王がおいと声を掛けると部屋の中に何人かのメイドが入ってきて御部屋まで案内しますと言って四人を連れっていった。
「国王、良かったのですかあんな約束してしまって」
ベルクがカルフスに問いかける。
「仕方があるまい。我々は託すしかなのだ。彼ら勇者に」
カルフスは玉座に腰を下ろしながら言った。
✵
亮達、四人は一人ずつ部屋を案内されたが白雪が一人は嫌だと言って朱音と一緒の部屋に入った。
亮と勇気は案内された部屋に入る。
(ふぅ~少し疲れた。色々な事が起こりすぎた。まさかこんなゲームみたいな事になるなんて)
亮は案内された部屋の豪華な装飾がされているベットにボフッと寝っころがりながらこれからのことを考えていた。
そこに部屋にノックする音が聞こえた。
亮はメイドさんだろうと思い体を起こし、入室の許可を出した。
「よう、どうだ?調子は」
扉を開けて入ってきたのは勇気だった。
「勇気、どうしたんだ?」
「いや、別に。一人でいてもつまらないからお前の部屋に来ただけだ」
と扉を閉めながら言った。
亮は部屋の椅子を勧めながら自分も椅子に座る。
勇気もそれに倣って椅子の背もたれに背中を預けながら勇気に問うた。
「お前はワクワクしないか?」
「ワクワク?」
「あぁ、そうだ。俺はかなりワクワクしているぞ。この状況に」
「どうしてさ」
亮が問う。
勇気は快活な笑顔を作りながら言う。
「だって、考えてもみろこんな経験、誰にでもできるものじゃないんだぞ。俺はむしろありがたいと思っている。あんな退屈な日常よりもこっちの世界の方が退屈しないだろ?」
ぜってぇと付け加えながら亮に言う。
「例え、命懸けでも?」
「…………」
勇気は答えない。
この質問がそう簡単に答えられないと勇気でも分かっていた。
「わるい、意地悪な質問をした」
亮は済まなそうに言った。
「いや、いいんだ。でもよ、こうなっちゃ仕方ないだろうここでウジウジ考えてても何も変わらねぇはずだ。お前も分かってんだろう」
「まぁね」
亮も分かっている。理解しているのだ。だけどまだ17歳の若さでそう割り切れるものでは無かった。
「後は、女共だな。朱音の野郎は大丈夫だろうが。白雪だったか?あいつは少し頼りないな」
と勇気は心配そうな声音で言う。
「大丈夫じゃないかな、女子は俺達が思っているほど、弱くないよ」
と亮が言う。
「さすが、色男だな」
勇気が茶化す様に言った。
✵
朱音と白雪の部屋。
白雪と朱音はベットに腰を掛けながら隣同士で座っていた。
「ねぇ、朱音ちゃんは怖くないの?」
白雪が少し目の下を赤くしながら震えた声で朱音に問う。
朱音はその質問に白雪の瞳をしっかりと見て答えた。
「怖いよ、とっても不安」
じゃ、じゃあと言う白雪の言葉を遮りながら朱音は言い続ける。
「中学の頃、あたしのお父さんが病気で亡くなったの」
白雪と朱音は高校で知り合った中であったため白雪はそのことを知らなかった。
あまりにも突然の話に少し慌ててしまう白雪だが気にせず朱音は話を続けた。
「その葬式の頃やっとあたしは本当にお父さんが亡くなったと実感が湧いてきて泣いたわ」
脇目も振らずね。と付け加えながら。
「その時ね、幼馴染だった。翔太があたしの頭に手を置いて言って来たの」
「『今は泣いていい。悲しいことがあったら不安なことがあったらその涙に乗せて吐き出せ。そのあとは前を向け現実と向き合え。お前の親父はお前の笑顔を見たがってるはずだって』てね。あたしはその言葉を聞いて、優しさに触れてより一層に泣いちゃったんだ」
でもねと続ける朱音。
「その言葉のおかげであたしは前も向けたし笑うこともできた。だからさ厳しいようだけど駄目なんだよ戦わなくちゃ現実と。ね?」
と朱音は白雪に言った。
白雪は口を結びうんと弱々しく頷くだがそこには確かな覚悟あった。
✵
四人はカルフスに夕食に誘われ、行くことにした。
長卓が置かれた部屋に通される前に四人が顔を合わせる。
彼らの顔は、拭いきれない不安と覚悟が出ていた。
四人は頷き合い王の頼みを聞くことを決めた。
「そ、そうであるか。ありがとう、ありがとう勇者達殿」
カルフスは安堵したようにお礼を言った。
何度も何度も繰り返し。
「では、気持ちを切り替え宴としよう」
カルフスの言葉を合図に料理が運ばれてきた。
四人は気持ちを変え楽しむことにした。
そして四人は部屋に戻りゆっくりと休み異世界の初日を終えた。
一応、十六夜が勇者の筆頭にしたいと思っています。
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