第1話「日常そして召喚」
俺―カラスこと黒羽翔太は狭い路地裏で喧嘩をしていた。
「おらっ」
俺は一人の男の顔面に向かって拳をブチ込む。
周りには二人の男が倒れている。
俺は三人の男に絡まれて喧嘩を売られて喧嘩を買ってしまった。
男は俺の拳を腕を交差して受ける。
慣れてやがるな。
俺は内心、舌打ちをしながら数歩後ろに下がり間合いを取る。
男は交差させていた腕を解き構え直す。
俺と男は視線を交わす。
刹那、相手の男が先手を出して来た。
右の顔面狙いのストレート!
俺はそれを左にサイドステップで躱す。
標的を失った拳は空を切る。
隙だらけだぜ!
「ふっ」
俺は短い息を吐き相手の顎に向けて右アッパーを放つ、相手の男の顎にクリーンヒットし相手は糸の切れた人形のように倒れた。
「ふう。やっと終わった」
俺は地面に落ちている鞄を拾いながら路地裏を出て学校に続くロ商店街に向かった。
俺は眼つきが鋭いとか怖いとよく言われる。俺は別に睨んでいるつもりないのだが周りからはそう見えてしまうらしい。
「全く損な顔だよな」
短髪の黒髪に鋭い目の中で輝く黒い瞳。
小さい頃からそうゆう扱いを受けてきた俺は意地焼けてグレた。
グレたと言っても根っからグレたわけでない
周りに合わせることにした。
「っつ」
さっきの喧嘩でやれた所が痛みやがる。
「朝から喧嘩か?」
後ろから見知った声が聞こえる。
「まぁな」
俺は振り返らず答える。いつものことだ。
すると声の奴が俺の隣に来た。
笹川亮だ。こいつは俺が根っからのヤンキーではないことを知っている悪友だ。
「全く損な顔つきだよな」
全くだと心の内で頷く。
こいつは俺とは違いイケメンだ。なんつーか優しい顔つきの。
女が好きそうだよなこいつの顔。
少し長めの茶髪、俺とは違い笑顔が似合う。俺よりも少し背が低く。
ちなみに俺は180センチだった。また背が伸びた。
亮は175センチくらいだろうか。
「で、何人とやったんだよ、喧嘩」
俺の顔を覗き込むようにしながら聞いてくる亮。
「三人だよ」
「三人かぁ。それにしては怪我がひどいね強い奴でもいたの?」
「まぁな」
最後の奴はかなり強かったな。
「そっかぁ、でも黒帝のカラスにはかなわないか」
と笑う。
「おまっ……。カラスはいいけど上のはやめろ恥ずかしいから」
「え、恥ずかしいの?かっこいいと思うけどなぁ黒帝のカラス」
と手を口に当てながら笑いを堪えながらいいがった。
完全に馬鹿にしてやがる。
高校に入ってからは目の鋭さに磨きが掛かったのか絡まれる回数が増えた。最初はやりたくないと断るのだが、馬鹿にされるとムカイつてきてさらに負けず嫌いの俺は喧嘩してしまうだった。
そんな俺のついた二つ名が黒帝のカラスだ、ちなみに亮が流行らしたらしい。
とまぁ、こんなくだらない会話しながら俺は亮と一緒に学校へ向うのだった。
✵
学校へ付いた俺は亮と別れ教室に向かう。
他の生徒は俺が歩いていると道を開けて壁際を寄る。
見ていてあまり気持ちのいいもんじゃない。
すると前からもの朱いポニーテールを揺らしながらすごい顔で走って来る女がいた。
俺はこの時めんどくささを顔を出したのだが何故か近くにいた女子生徒がヒッと顔を恐怖に染めていた。
全くそんな顔だ。
「ちょっと翔太!また喧嘩したでしょ!」
ダンッという音と一緒に大きな声がする。
こいつは、鈴宮朱音俺のアレだ。そう、えーとなんだっけまぁいいや。
背丈は160くらいだろうか陸上部のエースだ。
だが痩せすぎてはいない必要なところに程よく丸みを帯びていて顔は綺麗というより可愛い感じだかなりの美少女だと言えるクラスでも人気がある。
朱音は髪と同じ赤色をした瞳を怒りの炎を燃やしながら行ってきた。
「うるせぇな、朝から怒鳴んなよ。いい女が台無しだぞ」
と冗談で言う。
「え、そ、そう?」
「あぁ、そうだ。黙ってればいい女なんだお前は」
皮肉を言うと。
朱音はえ?いい女と小さな声で何か喋っていたが自分の世界に入ってしまっているらしい。
俺はその脇を通り教室へ向かった。
俺は教室の扉をスライドさせ入った。
すると少し空気が凍る。
はぁ、全くそんな顔だ。
「おはようございます。翔太さん」
俺に挨拶をして来たのは西園寺白雪だ。
学年一の美少女と言っていいだろう。これぞ大和撫子というのだろう。
黒髪を腰辺りまで伸ばしていて顔は朱音とは違いこちらは凛としている目尻が少し上がっているのがそうさているのかもしれない。同じ制服を着ているのにまるで朱音とは別物だ。
そしてかなりの巨乳だ、服の上からそれは確かに見れて取れる。
朝から眼福ものだ。白雪は何故か俺のこの目つきでも大丈夫な女子生徒だった。
「おはようさん」
俺は礼儀として挨拶を返す。
今日、真面目に挨拶された気がする。
まぁそんなことどうでもいい。
「あの、朱音ちゃんに会いませんでしたか?翔太さん」
と小首を曲げながら聞いてくる白雪。
「あぁ、会ったけどなんか自分の世界に入ってたから置いてきた」
「それはそれは」
と少し驚いた顔をする白雪。
「まぁ、すぐに走ってくるさ」
「そうですね」
と俺は白雪との話をやめ自分の席に向かう。窓際の一番後ろの席だ。
待ったくなんで俺が一番後ろの席なんだよ。目が悪いって言ってんに先生の野郎、一番後ろにしやっがってまぁ俺のこの眼つきのせいだろうけどな。全くそんだぜ。
俺はそんなに目が良くない細かい文字はメガネをかけないと見えないくらいだ。俺すっごいメガネ似合わないけどな。
と自分の席に付いた直後にガンッと教室のドアがぶっ壊れんじゃないかというぐらいの勢いで開いた。
「しょ~お~た~」
般若を思わせる顔つきで俺を睨む朱音。
「あたしを置いて教室にいくんじゃないわよーーーー」
と俺に向かって華麗なドロップキックをして来た。
朱音はスカートの中に短パンを履いていた。
俺は朝から理不尽だと神を恨むのだった。
✵
「いてててて……」
俺は朝からパンツを見ることも出来ないただ痛いだけのドロップキックをされた。そんな美少女に蹴られるなんてご褒美!という変態やろうではない俺は我慢ならずに保険室に行き治療を受けていた。
「はぁ、全く君も懲りずによく喧嘩するわね」
保健室の先生は香織先生だ。かなり美人で男子からの人気が高い。白衣の美人。中々いいものだ。
「俺だって別に好きで喧嘩してるわけじゃ」
「ふ~ん、まぁ少しやんちゃくらいが可愛いとは思うけど、私は一様医者の端くれとして言うは、医者は怪我した人たちを直す職業。この世界では理不尽事故に寄って大きな怪我や病気で苦しんでいる人たちが沢山いるわ。私たちはその人たち為にいるの、自ら傷つく行為をしている人達をまた傷つく付ける為に直しているわけではないのよ。でも君も男の子だしね、拳を振るいたくなる時が必ずあるわ」
そのときは、と言葉切る先生。
先生は俺の目つきの悪い顔を見て少しやんちゃ弟に少し叱りつける様に。
「何のためにその拳を振るうのか考えなさい」
と優しく俺のガサガサな髪の頭を綺麗な手で撫でた。
俺はしっかりと先生の言葉を胸に焼き付け。
「うす」
と返事なってない返事をした。
✵
俺は香織先生に見送らながら保健室を出たあと先生の言葉を思い出していた。
「何のために拳を振るうか考えろか」
俺は誰もいない廊下を一人呟いて歩いていた。
俺はただ俺のわがままのために拳を握り、振るった。
馬鹿にされたから、先に殴ってきたからムカついたとかどうでいい理由だ。
何のためならこの拳に意味を持たせられるか、つまりこうゆう意味だろう。
俺にはよく分からなかった。
いや、考えたく無かったのかもしれない。この拳に意味を与えたらこの拳を振るう機会が減ってしまうから。
そうか、俺は退屈だったんだ。
この顔の性で友達が出来なかった。構ってくるのはヤンキーばかりいつの間にかこれが俺の暇つぶしになっていたのか。
「はぁ」
無意識にため息が出た。
顔の性じゃないな俺がガキだっただけだ。
それだけだな。
あぁ、俺の退屈を凌げる所ってないかなぁ。
俺はそんなことを考えながら教室に向かった。
✵
今日も退屈な一日が過ぎた。
帰りは一人だ。
朱音は部活。
亮は女とデートだろう。
白雪は……一緒に帰るなんて考えられないな。
俺は校門を出て朝通った商店街を通る。
すると、朝の奴らが俺の前に歩いて来た。
「面貸せや」
一人が言う。
「俺に負けたのにまたやるつもりか?」
俺は呆れ顔で言う。
「硬いこと言うなよ。どうせ暇なんだろ」
ともう一人。
「はぁ、俺はやりたくないだが」
「はっ、ほざけ。お前も俺も同じさ喧嘩にしか意味を見いだせないクズさ」
―意味―
喧嘩にしか意味を見いだせないクズか。はは、全くその通りだ。
先生ごめん俺はクズだ。
「わかった。付きやってやるよ」
俺は了承した。
俺たちは場所変える事にした。
近くの空き地だ。
俺は疑いもせずに行った。
するとそこには二十人近くの男がいた。
「さぁやろうか」
と言う声と同時に一人の男が殴ってきた。俺はそれを受けたたらを踏む。
「そうか、そうゆうことかよ。全く損な顔つきだよ」
俺はこの時どんな顔をしていだろうか。俺は獰猛な獣が獲物を見つけたそんな笑みしていたかもしれない。戦いにしか快楽を見いだせないどうしようも無い戦闘狂みたいな。だけど俺はそれを生まれつきの顔の性にした。だってそうしなければ俺は。自分のことを戦闘狂と認めてしまう事になるから。
俺は無我夢中で喧嘩した。
殴り。蹴り。殴り。蹴り。殴り。殴り。殴り。殴り。殴り。殴り。殴り。殴り。殴り。殴り。殴り。殴り。殴り。そして何度も殴られた。
気づいた時には俺と今朝、最後に喧嘩った奴がいた。
そいつは恐怖していた俺に。
何故?
お前らがしようって言ったんだろう?
「ば、バケモンめ」
俺はその言葉の意味に気付くのにいくらかの間が必要だった。
「は、ははははははっはっはっははーーー」
笑った。笑うしかなかった。20人相手に一人で向かってボコボコにした。
バケモノそう言われても仕方がないと思った。
そして俺は相手の方に首を向ける。
あいつに俺はどうゆう風に見えただろうか。
体はボロボロなのに悠然と佇みその瞳には獰猛さが一向に無くならないまさしく狂戦士に見えてしまったのだろうか?
だが、今の俺には相手に同情する感情は無かった。
だって、喧嘩にはいらないものだから。
だから俺はビビリながら腰が引けてるそいつボコボコにした。
そして、喧嘩が終わり帰ろうとすると。
後ろから拍手する音が聞こえた。
俺は素早く振り返るとそこには小さな少年がいた。
その少年は金髪に紅の瞳、鋭い眼つきだが俺のとは違う感じだった。格好は幼いのにその雰囲気は全く感じない表情は大人びていた。
「素晴らしいよ。君は」
少年の声はよく響いた。
「お前何もんだ?」
俺は相手がタダのガキじゃないと確信した。
「そして、素質もある。僕の力を扱うね」
と大人びた笑顔で言った。
「なんの話だ」
「こっちの話しさ。で、君に聞きたいことがある」
「聞きたいこと?」
俺は怪訝そうに聞き返した。
「この世界に退屈していないかい?」
その問に俺は大きく動揺した。
「…………」
「答えないか……まぁいいじゃあ質問変えよう」
少年はニヤリと口角を上げ―
「喧嘩をしても怒られない世界があるとしたら興味があるかい?
」
と言った。
「喧嘩をしても怒られない世界……」
その言葉を聞いたとき俺の体が熱を帯びた。
まだ、喧嘩したてのこの体が。
「そう、そしてその喧嘩は命懸けだ。己の全てを賭けてやるのさ一つの間違いでも命に関わることがある。そんな戦いだ」
俺は、行きたい―と思ってしまった。
「でも、そこに行ったら戻れない」
と最後に付け加える。
「…………そ、そこは退屈しないのか」
「あぁ、もちろん。この世界では味わえない戦いがある」
俺の知らない戦い。
味わいたい。
「君は、本当にいい目をする。その目を僕は求めていたよ。それで返事は?」
俺は笑った。獰猛に、凶暴に、兇猛に。
「連れてってくれ」
「了承した」
そう言うとパチンと指を鳴らすと俺の下に赤い光が溢れる。
「君の名前を聴いていなかったね」
「俺の名前は……クロウだ」
黒羽翔太。
黒い羽で空を翔ぶ鳥。
俺にぴったりの名前だ。
「クロウか、それだけじゃ不便だ性にシルバード付けよう。クロウ・シルバード。いいね」
少年は笑った。
「お前の名前は――」
俺の言葉はそこで途切れた。
そして俺はこの世界から消えた。
かくして黒羽翔太改めてクロウ・シルバードの冒険が始まった。
そうしてこの日もう四人この世界から消えたのをクロウはまだ知らない。
✵
「さぁ君は黒い怪鳥だ世界を飛び回れそして何を為すか僕は楽しみしているよ」
そう言って少年を包むように赤い光とが現れ消えた時にはもう少年の姿無かった。