プロローグ「平穏の訪れと平穏の終わり」
よろしくお願いします。
不定期でがんばります。
魔王の城・謁見間―
「うおおおおおおおおーーーーーーーーーーー!」
雄叫びに呼応するように剣の輝きが増す。
「フハハハハ、久しいなこの感覚。共に命を削り合うのも厭わない死闘。なぁ勇者よ」
「知るかよ!竜神王!」
勇者は答える。
勇者は聖剣を振り上げながら波動を溜める。
「ライジングジェットォォォォォォォォーーーーーー」
聖なる魔力を竜神王に向かって雷鳴のごとく打ち放つ。
「黒炎弾っ!」
竜神王も負けじと強大な魔力を口に溜め漆黒の炎弾を放つ。
二つの魔力がぶつかり合う。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー」
勇者が叫ぶ。
「おぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーー」
竜神王も叫ぶ。
轟轟となる白と黒が塊が侵食しあいながら勇者、竜神王の間合いを埋め尽くし爆ぜた。
魔王の城の最上階で爆発が起こる。
謁見の間を砂埃が包み隠す中勇者は神速を速度で竜神王の背後に回り込み、波動を三つ程放つ。竜神王の背中に被弾するも竜神王は無傷。勇者は苦い顔をしながら間合いを取る。
「ふん、そんな気の抜けた攻撃など我にはきかんぞ勇者!」
竜神王は怒気を含んだ声を発する。
「……」
勇者は何も答えなかった。
竜神王は手に魔力の塊を作りそれを前方に向ける。
「竜撃砲」
静かな声。
それに答えるかのように魔力の塊がビームとなって勇者に向かっていく。
勇者は動かない。いや動けないのだ、勇者の体は神々しく光り輝いている。精神を集中し一発で戦況を変える一撃を放とうとしている。
だが、竜神王の放った一撃がそれを阻止しようと勇者に向かって行った。
(これで終わりか)
竜神王が呆気ない戦いの終了を悟った。
しかし、その予想は外れる。
勇者はビームが当たろうとした刹那、目を見開き一撃必殺の攻撃を放つ。
「裁きの一撃」
そこに現れたのは光の流星。神々しく光り輝くその流星は竜神王のビームを打ち消し竜神王に向かって聖なる力を漲らせ走る。
竜神王はニヤリと笑う。
こうでなくてはつまらないそう言わんばかりの笑み。
竜神王は避けない、避けられるわけがない命を燃やし自分に向かってくるその攻撃を避けるなど愚の骨頂だ。
竜神王は前に手を突き出す。
「受け止めるというのか!?」
額に脂汗を付けながら叫ぶ勇者。顔には疲労の色が強い。先ほどの一撃はそれほどの力がこもっているのだ。
そして、竜神王と流星はぶつかりあった刹那、激しい光が空間を埋め尽くすと同時か少し遅れ衝撃が空間を揺るがす。
竜神王は思はずもう片方の腕を突き出す。
それでも流星の勢いは止まらず竜神王を後ろに下げさせる。
「お、おおおおおぉぉぉぉぉぉ。やはりやめられぬこの感覚は死闘でしか味わうことしかできぬ」
すると、どうだろうか押していた流星が竜神王に押し始められたではないか。
「勇者よ。このくらいでは足りぬぞ、もっともっとやろうではないか。互の命尽き果てるまで」
竜神王は嬉々とした声音で言う。
勇者はその言葉にはっと短く笑う。
「ゴメンだね。俺はお前とは違って戦闘狂じゃないんでね。その攻撃を少し細工させてもらった」
なぬと竜神王。
勇者が言霊を唱える。
「我は神の眷属そして正義の剣なり悪を滅し魔を打ち払う者なり!」
するとどうだろうか流星が粉々に砕き散るその破片が一つの剣と化した。数百いや、千を越える剣は一斉に竜神王に突き刺さる。
「うぉぉぉぉぉぉぉ」
苦悶の声を上げる竜神王。
「おのれぇ勇者ぁぁ¬!これで我を封じたつもりかぁぁ!」
竜神王は怒りを凶悪な顔面に映出す。
勇者は答えずさらに言霊を発する。
「己の正義に従いこの言葉を継ぐ。光の刃を悪の墓標とし永久の時間を奪い脅威を封印せよ!」
言霊に反応する光の剣は竜神王の胸のあたりに集まり一つの十字架となる。
「うおぉぉぉぉぉぉこの我がこんなことで、こんなことで封印されることなどあってならない。フハハハハ、勇者よ。お前には絶望した。やはりお前も人なのだな。醜く姑息で卑怯者だ」
竜神王は侮蔑した目で勇者を睨んだ。
勇者はそれを受け止め答える。
「あぁ、俺も一人の人間なのさ少しだけ他の奴らより強かっただけだ」
と肩をすくめた。
「そうか……ならばこの世界もろとも消し飛ばしやる!」
竜神王は口の端を苦しそうに上げる。
勇者は何!と驚く。
「最後の置き土産だ。受け取れ勇者」
「最後の灯火」
静かに宣言する竜神王。
「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
勇者は叫びながら走り出す。赤くなる竜神王を抱え上げ跳躍する足の裏を爆発させ音速を越える勢いで空を駆け上がる爆発のせいで足首から下の感覚が無い。たぶん木っ端微塵に吹き飛んだのだろう。
勇者はものすごいGに押しつぶされそうになるが何とかこらえる。
そして、爆ぜた。
空を埋め尽くしていた暗雲を蹴散らし爆発の衝撃が空に流れ走った。
そして、戦いは終わった。
天から赤い何かが魔王の城に落ちて行くのを何人もの人が見えたと言っていた。
✵
1000年後―
1000年前に平穏が訪れたこの世界に恐怖が走った。
そう竜神王が復活したのだ。
それは余りにも突然だった。
一人の村人がある異変に気づいた。空のある一部に暗雲が集まっていることに気づいた。そして、それは一瞬にして大陸の空を包んだ。そして、声を発したのだ。
聞けば誰もが恐怖する声をしていた。
「我は竜神王なり。1000年の月日を経て復活した。貴様ら人間の暮らしにもう平穏は訪れない」
その声に応じて家畜たちが悲鳴にも似た鳴き声をする。
モンスター達は雄叫びを上げ主の復活に感性を上げる。
人々は顔に恐怖持たせるものがほとんどであった。
「我は今度こそこの大陸を手中に収めることにした。精々足掻くがいい人間ども」
この言葉を最後にさっきまで広がっていた暗雲はなくなり、快晴に戻った。
そして人間達は顔を青ざめることしか出来なかった。
✵
イバァン王国・王都ルシオール・ルスカ城・謁見の間
一人の若い兵士が顔を青くして急いだ様子で謁見の間の扉を叩く。
中から入れと呼ばれる。
兵士は扉を開き、謁見の間に入る。
「ほ、報告しますっ!」
兵士は片膝を付き王に頭を下げる。
「わかっておる。竜神王の復活のことであろう?」
嗄れた声帯で発される声は決して大きくはないのに響く。
「はいっ、その通りでございます」
「わかった。もう下がって良いぞ」
「はい」
兵士は王に敬礼を捧げ部屋を後にした。
「ついにこの時が来たか」
王が呟く。
「どういたしますか?」
一人の騎士と呼ぶに相応しい格好した男が王に問うた。
「すぐに魔術師達を集めろ。召喚の儀式を始める」
「はっ」
騎士はそう言って他の兵士に魔術師を集めるように伝えた。
感想などお待ちしてます。
誤字脱字等ありましたら随時お知らせ下さい。