世話焼きな下僕とものぐさ女王様
「お前らって漫画の幼馴染みみたいだよな」
そう言ってきたのは、高校の友人で、俺自身そう思う。
両親が親友同士で家が隣で部屋が隣で窓越しに行き来できるとかどこの漫画だよ。
その上、幼馴染みは美少女。
まあ、今の関係が続いてるのは、幼馴染みのおかげなんだけどな。
俺の幼馴染みは、安藤 優理。
何でもすぐにできてしまうハイスペックなのに面倒臭がりのいわゆる残念な美少女。
優理の性格が幸いしたのか、親の性格なのか、少なくとも両親やあーちゃんさん(優理ママ)や幸成おじさん(優理パパ)から比べられる事はなかった。
誕生日は、俺が4月2日で優理が4月1日。
優理は、早生まれになるから1年早く生まれた俺と一緒の学年。
それに小さい頃の俺は優秀で、5ヶ月目にして一人歩きができていたらしい。
優理は反対に中々歩かなかった。
うん、あいつの性格的に歩けなかったじゃなくて、歩かなかったんだろうと思う。
幼い頃は、周りが心配するくらい成長が遅かったのに、頭も運動神経も良くてびっくりってお母さんが言ってた。
多分、周りが何でもしてくれる利点を離したくなかったんだろうなー。
イヤイヤ期がないと周りが心配しだしてから、イヤイヤをするようになったと思ったら俺にやらせたらしいし、優理の面倒臭がりは幼い頃から筋金入り過ぎる。
まあ、そんな優理とだからずっとお馴染みだったんだろうなって思う。
残念過ぎるお知らせで、俺は容姿も平均以下で太ってて体毛が濃くて、汗っかきで、若白髪に若ハゲ、チビ、勉強も運動も出来やしない。
気弱な性格も災いして、いじめられっ子になりかける事も多かった。
小学校に上がってから「豚ゴリラ」なんて呼ばれる事もあったけど、優理は、グループになる時、必ず俺と一緒になってくれた。
それが面倒事を押し付けるためでも、俺は一人になるかもしれないなんて思わずにすんだ。
それでも高学年になって、男女を意識するようになると不安になった。
女子に陰で「キモイ」と言われてることにも気付いたし、男子から「優理の優しさにつけこんで付きまとうな」とも言われた。
正直、クラスのリーダー格の男子が優理の事が好きで、俺を邪魔に思ってるって知った時は、優理と距離を置こうとした。
でも、よく考えてみると優理が距離を置こうとしない限り無理だった。
あのものぐさが俺を手放すわけなかった。
「帰ろ」っていつもみたいに言われて、「一人で帰る」って言えば、男子は満足気で、女子は優理と一緒に帰ろうとした。
でも、優理は不愉快そうに「拒否権なんてあるわけないでしょ」そう言って、俺にいつもみたいに鞄を押し付け、俺の手をひいてあるきだした。
それから優理は、俺といる時間が増えた。
幼馴染みのベター。一緒にお風呂も俺と優理は、していた。
それも小学校を卒業するまで。
優理は、小4で生理が来て、小学校を卒業する頃には、Bカップだった。
あっ、全て本人の自己申告で俺は無実だからな!!
生理が来た辺りであーちゃんさんに一回、マーくん(俺)と入るのやめたら?と言われたらしいが、本人が断った。
なぜ断る!!
おかげで夢で優理の裸が出てきて、精通しちゃった罪悪感!!
その日の夜はバトルだった。
一緒に入る(優理)、入らない(俺)って。
てか、何で幼き俺よ、精通しちゃった事も、優理の裸で出しちゃった事も言うんだよ!!
あーちゃんさんいたのにぃぃぃいいい!!!
あの生暖かい目!!生暖かい目!!生暖かい目!!
くっ、原因はそうまでしなきゃ優理が納得しなかったせいだけどな!!
つか、そこまで言わせて「生理現象じゃん」って、そうだけどさ!でも、嫌がれ!嫌悪感を感じろ!自分で勃起されたんだぞ!おかずにされたんだぞ!一緒に入ればおかず提供することになるんだぞ!何で引きずっていったんだ馬鹿女ー!!
その後、いつもみたいに優理の髪を洗って、タオルで体を洗ってる時に起って、頑張ったけど射精して、風呂場から逃げ出して、早く帰っていた幸成おじさんに泣きつきました。
ホント、謝りたい。
娘で精通した上、勃起も射精も見られました。なんて、父親として知りたくなかっただろう。ごめんなさい。
その後、うちの両親とあーちゃんさん、幸成おじさんが必死に優理を説得してくれて、小学校の卒業式の日までってことになった。
裸見られるより、勃起されるより、髪と体を洗うのが怠いってどうだよ!
そのせいでその後も何度か優理の裸で起ってイく所を何度か見られた。
死にたい。
大騒ぎしたせいで、二つ下の妹に知られて汚物を見る目で見られた。
死にたい。
二つ下の妹は、おませで、小3辺りから一緒に入るのを渋りはじめて、小4になる頃には一緒に入らなくなった。
優理を反面教師にまともに育つ妹にお兄ちゃん安心です。
中学校に入って、お風呂は、バラバラになったけど、部活が一緒なので、登下校は一緒のままだった。
「部活何にするー?」って聞かれたから、「柔道部に入る」って言ったら、優理も柔道部に入ってきた。
流石にビックリした。
中学校に入って、クラスがバラバラになって、部活もバラバラになって、行く時間も帰る時間もバラバラになって、少しずつ離れていくんだと思ってた。
それなのにクラスが別でも休憩時間になれば俺のクラスに来て、俺の隣や前の席に座り、友達とおしゃべりする。
うちの中学の柔道は、弱小で、人数も少ないから男女混合で、始まる時間も終わる時間も変わらない。
それに仲が良くて、部活メンバーで遊ぶ事も多かった。
そして、ハイスペックな優理は、弱小の柔道部から全国に行って優勝した。
アイツは、本気で努力している人に謝るべきだ。
飽きたとか言うな。
それでも、3年間続けて三連覇して、推薦が沢山来てる。
飽きたからやめるって、お前な!!
3年間、1勝も出来てない俺に推薦なんか来るわけもなく、さてどこの高校にするかな。
高校は、家の最寄り駅から2駅離れた公立高校にした。
行事に力を入れていて、文化祭が一番面白かったってのが理由だったりする。
まあ、学力は俺が安全圏な平均より少し低いくらいなので大丈夫だろう。
優理は、推薦を全部蹴ったので、家から最寄りの俺の学力じゃアウトな公立の進学校に行くんだろうなー。
なんて、思ってた時期が俺にもありした。
残念。同じ高校です。
学年首位をキープして、全国模試で1位だったのに何でだよ!
勉強怠いって!努力している人に謝れ!!
こうして、面倒臭がりな幼馴染みと漫画みたいな関係を維持している。
と、いうか維持されている。
高校に入って、野球部に入ったら優理がマネージャーになった。
うちの野球部は強豪で、高校から入った俺がレギュラーになれるわけはないけど、去年の文化祭の出し物が好きだったから入った。
マネージャーは優理の他にも居たし、優理は最低限、敵を作らない程度しか動かないからその分、俺が動いた。
後輩達からの認識がマネージャーになってた。
文化祭は、楽しかった。
俺のクラスは屋台で、優理のクラスはアニマルメイド喫茶だった。
多分、獣耳かメイドさんかの争いを一緒にしちゃったんだろう。
優理のクラスは可愛い子が多かったし、正統派の白黒のメイド服で絶対領域だったのは確かに良かった。
鼻の下が伸びてたらしく、友達にキモイって言われた。
俺より元が良いからましなだけで、同じ顔してると言っといてやった。
優理は、羊さんで、ちっちゃな耳とくるんとした角がついていた。
上半身は、露出こそないけど体にフィットしててラインが分かってエロかった。
太すぎず、細すぎない程よい肉付き、胸はCってこの前片付けたブラジャーに書いてあった。
いや、悪気はなかったんだよ!新品だったみたいで、色褪せしてなくて、片付けるときにチラッと!チラッと見えちゃっただけだ!
てか、唯一見える肌が絶対領域とか目がいくわー。
でも、野球部のエースの狼執事姿で優理とツーショット姿は似合いすぎてうざかった。
運動できるイケメンとかリア充爆発しろ。
つーか、ちけぇぇええ!!
明らかに下心あんじゃん!優理も気付け!!
野球部の方は、優理の迫真の演技で悲鳴が半端なかった。
総合売り上げは、優理のクラスが1位、野球部が2位だった。
部活も学校も休みの朝、優理が珍しく早く起きたらしく、俺を起こしに来た。
俺は夢精してた。
泣いて良いですか?
笑うな。部屋から出ろ、無神経女!!
自慰しないのー?ってするけど、女子が使うなそんな言葉!!
おかずは私ー?って、人の話を聞けよ!
いたっ!
叩くなよ!
だー!もー!夢だから忘れた!
思い出せとか理不尽!
言わなきゃ脱ぐ?鬼か!!
いや、ご褒美だよ、下に両家が揃ってなきゃな!
変態認定イヤ!!
てか、小学生じゃないんだし、好きな女の子が自分の前で脱いでくとか、襲わない自信がない!
ないわー、強姦とかないわー。
てなわけで、分かったから、言う!言うよ!
夢に出てきたの優理!言わせてドン引きとかすんなよ!!
何、笑ってんだよ!
私の事、大好きだねって、うっせー!!
逆にテレビでもお目にかかれないレベルの美少女を知ってて、それ以外のおかずなんかあるかよ!
下に降りたら、両家から生暖かい目で見られ、妹から汚物を見る目で見られた。
泣いて良いですか?
高3になってから野球部のエースが優理に猛アタックしていて、優理がうざそうにしてる。
ねー、誠也(俺)って好きな人いる?って、居るわ!目の前に!なんて言えないから曖昧に誤魔化す。
ねー、誠也ー、私と付き合わない?って、真っ昼間のクラスで何言ってんの!?
男子からの大ブーイング。女子からの正気を確かめる声。
ただ一言、誠也以外の男とかないわー。
その言葉で察してしまう。
あ、俺の拒否権ない。
好きな子と付き合えるのは、嬉しいけど、男避け感が虚しい。
そう思いながら一緒に帰ったら、優理の奴、そっこー、あーちゃんさんに報告した。
あーちゃんさんに泣いて喜ばれた。
あの子、マーくん居ないと生きてけないから!本当にありがとう!!って、うん、あいつの面倒臭がり具合から否定できなくて辛い。
幸成おじさんや俺の両親、優理の姉夫婦やお兄さん二人、うちの妹にまでその日の内に伝わった。
あれ?外堀埋められてる気がする。
優理の家族に優理の事を頼まれ、うちの家族にこうなるだろうとは思ってたと言われた。
学校との反応の差に少し戸惑った。
「大学どこにするー?」って、聞かれた時から分かってたけど、同じ大学になった。
大学も一緒なら学科も一緒、受ける授業もバイトもアパートも一緒。
うん、アパートで同棲になっちゃった。
「住むとこどうするー?」って、聞かれるのも分かってたから、セキュリティのしっかりしてるアパートの2階に目をつけていた。
「狭くない?」って、言われた時に珍しいと思った。
面倒臭がりな優理は、俺の気ためたことに滅多に口を出さない。
一人暮らしなら充分な大きさだと言えば、
「二人で住む」と言うもんだから、すぐに両家の両親に助けを求めた。
優理の決定に俺は逆らえない。
それなのに歓迎ムードは何だ!!
結論、面倒臭がりな優理の一人暮らしを心配していた両家の両親にとって、優理と俺が一緒に暮らしてくれるなんて心配事の消えるありがたい事でしかなかった。
お互い、学生なのに同じ部屋にして間違いでも起きたらどうするんだと必死に説得したのに無意味だった。
逆に戸籍入れとく?ってそうじゃない!
少なくとも結婚も子供を作るのも仕事して、養える力と人を育てれる最低限成熟した人になってからじゃないと嫌だ!!
あれ?幸成おじさん?なんで、俺の肩を掴んで娘を頼むって何!?
とりあえず、2LDKの部屋を借りれる事になった。
たまに優理の寝顔にムラッてきちゃうし、助かったー!!
二十歳の成人式の次の日曜にあった小学校の同窓会。
同級生から美女と野獣だと言われた。
残念だが美男子にならないから惜しい。
同窓会で美少女から美女に美しさに磨きのかかった同級生にドキッとしたら、自分より不細工でのろまな男と付き合ってるとか悪夢でしかない。
リーダー格だった男は勝ち組人生を突っ走ってるらしい。
高校で県内一の私立の進学校に入って、大学も私立のトップレベルの所で、イギリスの某大学に留学したとか、するとかの言ってる。
どうやら優理の気を引きたいらしいが無駄だ。
別に俺にベタ惚れとか言いたい訳じゃない。
この面倒臭がりなお姫様の気を引きたいなら、地位とか名誉とか財力じゃなくて、どんだけぐうたら生活を許せるかを見せなきゃいけない訳で、落とし方が斜め上過ぎる。
いや、斜め上過ぎるのは、優理か…。
何をどうしたらあんなに残念に育つんだろう。
生まれつきの気しかしないけど。
三十路になった俺は、いわゆる勝ち組になった。
会社は規模は大きくないが、しっかりしていて、定時に上がれるし、福利厚生も良い、給料も妥当だと思う。
何より、美人な奥さんに可愛い娘や息子達。
たまに俺との血の繋がりを疑われるけど、あの面倒臭がりが浮気なんて面倒な事をするわけもない。
優理は、専業主婦で育児しかしない。
家事?俺の仕事に決まってんだろ。
面倒臭がりな優理がするわけないだろ。
育児は、半々くらいかなー。優理、子供好きだし、子供のためなら時間作るし。
あれ?なんで、勝ち組撤回しようとしてんだよ!
いや、俺は幸せだよ!
だって、優理以外を愛せる自信ないから。
優理と結婚出来て幸せ過ぎる。