時々、手
◆ 一般ぴーぽー ◆
「いや、助かりました」
「ありがとうございます」
「なんもなんも。ゆっくりしていくとええ」
椅子にもたれ、隣にいる浅菜がほほ笑む。
あれから死に物狂いで遠くの方に見えた影を目指して数十分。
浅菜の言った通り見えた影は村だった。それも俺たちが目的としているドラゴンの被害にあった村だ。
村は至ってのどかで、村の横には家畜のための放牧スペースがあり、村から少し離れた場所には森もある。
本当にここはドラゴンの被害を受けているのか?
転がり込むように村へ到着すると、村人たちがここに運び込んでくれたんだ。
場所は村長の家。ここが一番医療などが集まっている場所らしい。
ハウンドドックによって負った左大腿部の裂傷は治療され、後はしばらく安静にしていれば傷は塞がるのだと。
ともかく助かった。
おあつらえ向きにここは村長の家なんだし、ドラゴンのことを聞いてみよう。
「実は我々は北部勇者育成学校からやってきまして、ドラゴンの被害があると聞いてきたのですが……」
「おぉ、では討伐をしていただけるのですか?」
「いえ、我々は討伐部隊ではありません。あくまでも我々の目的はドラゴンの情報を一つでも多く持ち帰ることです。詳しくお話をお聞かせもらえますか?」
「そうでしたか……。それでしたら喜んでご協力しますんね」
了承も得られたところで早速。
「主にどのような被害がありますか?」
「なんね、そっちにはなんの話もいっとらんのかい。被害は家畜から家屋、村人も襲われているんよ」
「他には? 例えば、魔物を引き連れてやってくるとか……」
「いんやぁ、ドラゴンが恐ろしゅうてのかは知らんが、他の魔物がやってくるどころか魔物の被害はなくなったんよ。逃げたんじゃろうなぁ」
「…………そうですか」
なるほど。
ドラゴンは知能が高い“魔族”に属されるから、どんな被害とかで何を思って襲っているのか分かると思っていたんだが……聞いている限りだと見境が無いみたいだ。
魔物を引き連れて村を襲うわけでもない。ドラゴンの目的はいったいなんだ?
「家畜はどのような家畜が襲われますか?」
「この村では鶏や豚などがおるが、豚だけじゃのう」
「豚だけ、か。人が襲われる時は主にどこで襲われますか?」
「北に森があるんじゃが、そこに木を切りに行った若者が襲われとるのじゃよ。おそらくそこがドラゴンの住処なんじゃろうなぁ……」
「森……。大変心苦しいと思いますが、死因はどのように?」
「……ドラゴンのブレスで丸焦げじゃよ」
「わかりました。ご協力ありがとうございます。我々はもう少しドラゴンの被害を調べていきますので、何か他に気付いたことがあれば教えてもらえますか?」
「わかりました。ここでゆっくりして行きなさんな」
「いえ、そこまでしていただくわけにはいきません。それでは」
訊きたいことは粗方訊いたので、俺と浅菜は村長に礼を言って村長邸を後にする。
左足はまだ治っていないから、ゆっくりと……なるべく早く調べて帰ろう。
「先生、足大丈夫ですか? まだ歩いちゃだめですよ」
「いや、あそこから離れなきゃいけない」
「何でですか?」
この生徒はちゃんと話を聞いていたのだろうか?
「じゃあ、先生からの問題だ。今の村長との会話で可笑しな部分がありました。制限時間は宿屋に着くまで。答えられなかったら論文五枚提出してもらおうか」
「え、ちょ!?」
「はい、スタート」
いきなり問題を出されて目に見えて動揺する浅菜。
しかし、浅菜は少し考えたところでニタリと意地の悪い笑顔を浮かべる。
浅菜の中で答えが決まったようだ。
「ふっふっふ。これはあまりにも簡単ですよ先生……」
「ほう、じゃあご高説願おうかな」
「おかしなところ、それは鶏だけが襲われず、豚だけが襲われていることです!」
「二十五点。赤点だ。回答権は後二回!」
「えぇ!?」
確かにひっかかるところだが、別段そこが問題ではない。
逆に、家畜が襲われていることに疑問を持ってほしかったが、今回の問題はそれではないので俺は口を紡ぐ。
「えーと、えーと、そうだ! ドラゴンが出るのに、村人を北の森に向かわせること!」
「四十点、回答権はあと一回」
「うえぇ!? えっと、えっと……魔物を引き連れてこない……は、ドラゴンがいるせいで魔物がいなくなったからですよね……? えぇー……。」
悩んでる悩んでる。
村人を北の森に向かわせたのは、単純に木がないと暮らせなかったからだろうよ。
それにしても実は凄まじいヒントが目の前にあるのに、気付かないモンなんだなぁ。
若者よ、考えるな、感じるんだツィー。
「うぅ……あ、村人がドラゴンのブレスの被害になっている……ですか?」
「はいしゅーりょー! 浅菜は帰ったらドラゴンに関しての論文五枚を提出するように!」
「うがー! だったら答えは何ですか!?」
「それは……っと。宿屋に着いたな。続きは宿屋に入ってからだ」
現役女子高生と一緒に宿屋に入るとは犯罪臭がしなくもないが、まぁ問題ないだろう。
しかし、何故だろう……何故村長は“嘘”なんてついたんだ?
……今は考えても仕方ないな。
早く宿屋に入ろう。
◆ ??? ◆
「ごきげんよう、フォボス」
「……セイラ」
あまりにも暇で狂いそうだったので、イリシア陛下のいいところベスト五十をしていたところ俺の元へ訪問者が。
その姿は忘れもしない。俺をこの独房にぶち込んだ死体だ。
セイラは俺を見るなりクスクスと笑いだし、死んだ魚のような眼で舐めるように見てきた。
しかし、そのくらいの視線などイリシア陛下の冷たい眼に比べたらなんてことはない。
「なんの用だ」
「別に、私は好きでここに来たわけではありませんから」
「だったらなぜ」
「【魔王】様より言伝を預かってきました」
「なに?」
【魔王】から俺宛に言伝だと?
「実は、今【勇者】のいる北部勇者育成学校に、とある所にとある危険なドラゴンが潜んでいるという情報を流していましてね」
なるほど、大体わかった。
「【勇者】に俺を始末するように仕向けたのか」
「そうですが……心優しい【魔王】様は貴方にその【勇者】を始末したら今までの不始末をお赦しになるとおっしゃっていました」
「なんだと?」
【魔王】が俺を赦すだって?
それも【勇者】を始末したらという難題で。
「確かにお伝えしましたから。それではごきげんよう」
セイラは去り際に侮蔑の眼で俺を見た後、煙のように消えてしまった。
それも、とびっきりにムカつく笑顔で。
……ここに、【七英雄】の【勇者】がやってくる。
その【勇者】は今現在イリシア陛下と共に旅をしているのだ。
小さい頃からあまり人付き合いが得意ではなかったイリシア陛下。
そんなイリシア陛下が気を緩し、仲間と謳う【勇者】を殺すことで俺は赦されるという。
……何を馬鹿なことを。
その【勇者】と言えば先々代……つまりイリシア陛下の御父上を殺した者の娘。
何を馬鹿なことを。
そんなの、関係ないな。その娘には罪はないか。そりゃそうか。
……答えは決まった。
俺は、喜んで殺されよう。
そして、先々代と一緒にイリシア陛下を見守ろう。
あ、【勇者】にイリシア陛下のことをよろしく頼む旨を伝えるのもいいかも知れない。
そうと決まったらさっそく話すことを考えよう。
晴れやかな気分だ。
◆ 勇者 ◆
「ぅいっくしゅ!」
「ラルちゃん、風邪?」
「かも」
放課後、睡魔と闘わない珍しい日だった。
隣には当たり前のように保人くんが立っていて、その保人くんから見えない場所でファンクラブの皆さんが見ている。
最近の日常。
確かイリシアは玄関で待っているって言ってた。
だけど、職員には職員の仕事があるため、私の方が先に着いてしまうだろう。
「ラルちゃん、これから一緒に遊ばない?」
「ごめんね、これからイリシアと会う予定なんだ」
「そうなんだ……わかった。じゃあ、また明日」
手を振って保人くんと別れる。
初夏も終わりを迎えいよいよ本格的に夏になってきた太陽は、未だギラギラと輝いていた。
秋が恋しい。
「……ちぇ」
聞いた話だと、アランは一学年の生徒と二人で行ったそうだ。
それも女の子と。ロリコンめ。
下心丸出しで誘っていたなら少し軽蔑の目を向けてあげよう。
どうせなら私を誘ってほしかったな。
……今、無意識に私だけって思っちゃった。
訂正訂正、私とイリシアを誘えばいいのに。
「遅くなって済まぬ」
「あ、イリシア」
ギラギラと輝く太陽が少し傾いたころ。
ようやくイリシアが約束の場所にやってきた。
少し肩で息をしているところから急いできたようだ。
相も変わらず汗は掻いていないけど。
「ここじゃなんだから場所変えよう?」
「そうじゃな」
そう言って歩くこと数分。
少し入り組んだところにある公園にやってきた。適当に街を探検していた時に見つけた公園だ。
その公園までやってくると、イリシアの表情が一瞬固まってけど、直ぐに戻る。
ここに来たことがあったのかな?
「よいしょっと」
「親父臭いのぉ」
「えへへ、一度癖が付いちゃったらなかなか抜けなくてさ」
「よくあることじゃ」
せっかく公園に来たことなので、ブランコに腰を下ろす。
ブランコって大きくなってから漕ぐと酔っちゃうんだよね。小さい頃はそんなことなかったのに。
あれって、三半規管がまだ発達していないから……ダメだ、難しいこと考えると頭が痛くなる。
イリシアは何食わぬ顔でブランコを漕いでいる。
キーコーキーコー。
立ち乗りまでしてる。
「……あのさ」
「うむ」
無言。
「最近、アランとイリシアって仲良いよね」
「そうかの? 前々から仲良しじゃぞ」
「そうじゃなくて、なんか憑き物が落ちたみたいにさ。なんか、最低ラインの壁が無くなったっていうかさ。上手く言葉に出来ないけど」
「あぁ……」
何かを思い出したかのように息を漏らすイリシア。
きっと、心当たりがあったのだろうと私は思う。
それまでのイリシアとアランはどこか線引きしていた関係だった。
というか、イリシアが一方的に線引きしていた。しかも、悲しいことにアランはその線すら見えていなかった。
妖怪のぬりかべみたいな不可視の壁。
どこまで行っても途切れることも、どこまで登ってもたどり着けぬ壁。
そんな壁が、今の二人の間にはない。
それを、私は純粋な好奇心として知りたい。
「そうじゃのう……アランに恋慕の情を伝えたくらいかのう」
「へっ?」
「要するに、愛の告白じゃ」
「は、はぁああああああ!?」
あ、ああああ愛の告白ぅうううう!?
イリシアが、アランに!?
え、ちょ……これは予想外と言うか……なんというか……。
詰まる所、
「アランはロリコンだったの……?」
結論はそういうこと。
「それがそうもいかのうての」
私はあまりのことに動転と冷静を右往左往していると、諦めにも似た溜息がイリシアの口から出てきた。
おまけにやれやれと言った感じで肩も竦めて。
「アランは情事のことには疎いのか、どうも違うのじゃ」
「というと?」
「素直な心で“大好き”と申したは良いが、アランの中では“仲間として大好き”と解釈されているようじゃ」
「あー……その、ご愁傷様?」
「時々お主は心を抉ることを申すのじゃな」
苦笑。
イリシアが言うには、アランに告白したは良いけど、鈍感アランはその告白を曲がった方向に解釈してしまったと。
けれど、イリシアも吹っ切れた状況なので、壁などを建てずに接しているということなのか。
それにしてもびっくりしたなぁ。
まさかイリシアがアランに恋しているなんて。
魔物と人の間にも恋愛は成立することにもびっくりだけど、まさか……――
――まさかイリシアと恋敵になるなんて思わなかったよ。
「……ってことは、今も何かしらのアプローチはしているの?」
「うむ、しておるぞ。もう一度アランにしかと妾の恋慕を説明するのも手じゃが、やはりここは己の魅力で振り向かせたくての」
「どういうの?」
「今は朝、アランの家に行き、簡単な朝餉を拵え、溜まった洗濯物を洗い、身だしなみを整え、共に通勤している程度かの。もちろん、他のことも考えておるぞ」
「か、通い女……っ!」
健気、この娘健気だ……!
なんだろう、そこまでアプローチしているのに何とも思われていないイリシアのことを思うと涙がちょちょ切れる。
そして意外や意外、イリシアの女子力が高い。というか完全に恋する乙女。
女として負けていると思うのよ、私。
「……イリシアが頑張っているのは分かるけど……色仕掛けっていうのはどう? アランだって男なんだし、古来から神々の間でも使われてきたものだよ?」
「……妾の躯で欲情すると思うかの?」
あ、なんか地雷踏んだっぽい。
イリシアは自分の胸をペタペタと触り、チラリとこちらを一瞥して溜息を吐く。
なぜだか凄く妬みの波動を感じる。
「大丈夫だよ。イリシアのいつも着ているローブのスリットから見える太もも、アランいつも見てるよ」
「な、ななななァ!?」
気づいていなかったんだね。
私から見てもその太ももは色っぽいと思うし、私には無いからちょっと羨ましく思っていた節もある。
っていうか、イリシアって見た目幼いのにどこか色気があるんだよね、不思議。
「だから、大丈夫だよ。アランは見てるところは見てるから」
「は、初めて知ったのじゃ……」
そう言いながら顔を真っ赤にして俯く彼女見て思う。
素直っていうのがこれほどまでに魅力的なことなのだと。
私が入る隙などどこにも無いのだと。
そして、私には……そんな勇気がどこにも無いのだと
だが、
「じゃが」
彼女は暗い顔をして呟く。
「それは……叶わぬ夢じゃ」
諦めの顔。
「妾は……【魔王】の血族。妾が【魔王】に返り咲けば……必然にアランはその婿、【魔王】となる」
笑顔。
「妾は、【魔王】にならねばならぬ。じゃから……アランを巻き込むわけにはいかぬのじゃ」
とても良い笑顔。
「悲しいの。悲しいのぉ……なにゆえ、なにゆえ……」
伝う水。
「じゃから……せめて、この旅では近くにいることにしたのじゃ」
とびっきりの笑顔で私に微笑む。
肩は震え、息は乱れ、頬には涙が伝う。
それでもなお、彼女は私に微笑む。
この恋に未来は無いのだと知ってなお、彼女は彼の傍に居たいと望む。
私の思いを知らずに、彼女は諦めている。
だから、私に重なる。
「ふざけんな……」
「え……?」
「ふざけてんじゃないわよ!」
気づけば吼えていた。
自分でもわからないうちに、イリシアの肩を掴んで吼える。
私の頬には誰かの涙が伝い、口からは私の本心が出る。
「人がせっかく敵わないと気付いたのに、それをすぐに迷わせることを言うってどういうことよっ!?」
自分勝手。
イリシアが知る由もない心。
「ばっかじゃないの! それはアランが言ったの!? 言ってないでしょ!? だのに何で決めつけるの!?」
「それは……」
「それは、なに? きっと断るから? 拒絶されるから? 傷つくのが怖いんでしょうが!」
「……」
何も答えず無言。
「バカみたい! ほんっとバカみたい!」
こんな弱い心を持っていたなんて知らなかった。
こんな心と私は張り合っていたのか。
自分のエゴを理由に何もしないのがこんなにも、こんないも醜いなんて知らなかった。
バカみたい。
ホント、
「バカみたい……」
「……お主、泣いておるのか?」
何をしているんだろう、私は。
私も同じなのに。
「……私も、アランが好きなんだよ」
「ラル……」
いつの間にか芽生えていた恋心。
きっかけは……きっと最初に出会った時なんだと思う。
一番最初、アランは身を呈して私たちを助けてくれた。
二回目、イリシアを追ってきた身に余る強敵を自分を犠牲にする方法で助けてくれた。
三回目、“死んだ”私を抱きしめて泣いてくれた。
四回目、ほぼ無理やりにも拘らず教師になり、私たちに最大の配慮をして任されてくれた。
挙げるとキリがないけど、アランの優しさが十二分に伝わってきた。
それで、意識しない方がおかしい。
気が付けば、私はイリシアに嫉妬するようになっていた。
気が付けば、アランを無意識に目で追っていた。
私も、アランが好きなんだ。
「だけど」
だけど、
「私もさ、【勇者】なんだ。アランと結ばれたらさ、その肩書きがアランの重荷になるって……思ってたんだ」
【勇者】。
それは世界でも【神】に認められたものでしかなれない、いわば最高の名誉の一つ。
世界には私の他にも【勇者】は居るが、そのどれもが独身だ。
理由は決まって一つ、伴侶の肩書きに耐えられないから。
稀に、私のお母さんやリトのお母さんみたいに何も気にしないっていう人もいたけど、それは極少数だ。
物語みたいに、相手がどんな身分であろうと関係無い……なんて話はどこにも無い。
世界で暮らすには、夫婦だけでは生きていけないのだ。
だから、
「無理なんだって思ってた。私も、この思いは墓場まで持って行って、ただアランの傍に居れれば良いんだって、思ってた」
「……」
「ごめんね、イリシア……私、イリシアを怒る資格なんてなかった……!」
「ラル……」
あぁ、バカだ私。
イリシアに私が重なったからって、まるで私を見ているかのようだって、そう思った瞬間怒りが込み上げてきた。
自分のエゴを理由になにもしないで……諦める。今の私とイリシアだ。
私も、バカなんだ。
「……ラル」
「な、なに……?」
ふと、頬に涙が伝う以外の感触。
見て見れば、イリシアが私の涙を人差し指で掬い上げていた。
イリシアも泣いているというのに。
何で笑顔なんだろうか
「妾は、妾はアランに求婚してみようと思うぞ」
「えっ」
「お主のおかげで身が覚めた。そうじゃ、そうじゃな。何もしないで諦めるのは愚か者じゃな。礼を言う」
目の前の輝く笑顔が言う。
目が覚めたと。
希望に満ち、諦めが払拭された笑顔が言う。
ありがとうと。
「じゃが……求婚は、この旅が終わってからにしようとおもうのじゃ。すべてが、終わってから」
「そう……」
すべてが終わってから。
それは、イリシアが【魔王】となった時、そして、そして私が――
――イリシアと世界を賭けて戦う時。
だけど、それはまだまだ先の話。
先の話を今からどうこう思ったって仕様のない話。
だから今は、イリシアは大事な大事な仲間だ。
「のうラルよ、今しがた悟ったばかりじゃが、塩を送ることにしようと思うぞ」
「塩?」
「うむ、大事なのは、“今誰が好きで、誰に思うのか”じゃ」
「???」
今誰が好きで、誰に思うのか……?
よくわからないけど、イリシアの言うことだ。覚えておいて損は無いだろう。
「うん、わかったよ」
そう言って微笑みかけると、同じようにイリシアは微笑んだ。
なぜだか、今目の前に恋敵がいるのに、何の嫉妬も浮かんでこない。
むしろ、すっきりした気分だと自分で納得している。
絶対に、負けないから。




