交差
◆ ??? ◆
「ここか……懐かしいな」
アランを追ってこの街イース・ロンドまでやってきた。
僕はこの街にある北部勇者育成学校の出身で、OBとしてこの学校に顔を出すこともあった。
しかし、騎士団長となってからはてんで訪れる機会がなくなってしまった。それもそうだ、おいそれと王宮を留守にすることは出来なかったのだから。
こんな形でここを訪れることになるなんてな。
『ねぇ、見て! あそこに凄くかっこいい人いるー!』
『ホントだー! マジヤバーい!』
そしてここは目の保養になるな。
麗しい学生が見れるからついつい目があっちこっちに向いてしまう。“レディー”が居るかは別としてだけど。
しかしなんだ、今の女学生は地べたに座って化粧をするのが主流なのか?
手鏡だけでよく化粧をするもんだ。
あ、見えた。
『あ! あの人こっち見てる!』
『ホントだー! ヤバーい!』
おっと、ボーっとしている間に学校まで来てしまった。OBだと言えば入れないこともないだろうが、ここにアランがいるとも限らないし、今ここに明確な目的はない。
直ぐに街の方へ帰ろう。
それに、今の僕は亡国の騎士という立場。知り合いに会ってしまっては面倒なことこの上ないだろう。
「おや、貴方は……フェル君ではないですか! あ、いや、今はフェル様の方がよろしいですかな」
「……校長先生?」
振り向けばその姿。
光り輝く頭を持つこの北部勇者育成学校の校長。
名は……名は……忘れてしまった。G=H=ピカールでいいか。
G=H=ピカールがそこに立っていた。
その姿は数年前に会った時と何ら変わりなく、温厚そうな面立も以前と変わらない。
「……今、首都は【魔王】の手に落ちたのではないのですか? 何故貴方がここに?」
「いや、あの、それは……」
どうしよう。
全く言い訳を考えていなかった。まさか知り合いに会うとは思わなかったし、このタイミングでしかも僕の立場を知る人間に会うのはまずい。
アレクで使った言い訳が通じるか?
確かあの時は、逃げて来たうんたらかんたらだったか。
しかし、ここはアレクとは違う大規模な都市。ここで僕が逃げてきたと言えば間違いなくアランを追えなくなる。ここに僕を匿おうとするだろう。
それはならない。
もっとほかの理由を……僕がここに居て、尚且つ自由に動き回れる理由を……そうだ!
「僕は首都解放のために勇士を募るためにここに来た所存です。ここに、アラン=レイトという兵がいると聞き、その方を捜しているのです」
「首都解放……! レジスタンスというわけですな。わかりました、私どもの方で全力でバックアップします。そして僥倖か、貴女がお捜しの方は今この学校にいるのです」
「アランが……?」
校長の言うことが本当ならば、この学校にアランがいるのだそうだ。
コレは本当に僥倖。そうだ、そうだ、これは天啓か。
僕は今まで何をしていたのだろうか。
僕の心は最初からマハト王の考えに着いてはいけなかった。
主が道を違えたならば道を正すのも僕の役目。それに、あのマハト王に対抗出来うる戦力が直ぐ近くにいる。【勇者】だって、あの緋色の髪の少女だっている。
僕は近くで見てきただろう?
あの男の力を近くで見てきたんだろう?
嘘から出た真……にしては心変りが早いかもしれない。
けれど、アランなら……きっとできる。
「僕をアランの元へと案内できますか?」
「勿論ですとも。ささ、こちらへ」
僕は、決めた。
僕はストーカーを止める!




