表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の頑張り物語  作者: 谷口
プロローグ
15/107

旅の始まり

 逃げるようにルートビッヒから出てきた俺たちは、首都に比較的近い所にあった冒険者御用達の広場に来ている。

 ここは周りが開けた場所にあり、人が使った形跡のある丸太の椅子や石を積み重ねて作った簡易式の竈などがある。

 冒険者が野宿に使ったり休憩したりする場所なのだろう。


「つまり、【神】様に【魔王】の居場所を訊こうってことですか?」

「そ。私は嫌いなんだけど……背に腹は代えられないしね」


 【勇者】様は肩をワザと竦めて言う。

 【勇者】様は【神】様が嫌いなのか、まぁ分からないこともないけど。


 俺と【勇者】様は最初、【魔王】様に魔王城の場所まで案内してもらおうと思ったが、魔王城は空を飛べるらしいので特定の場所にないとのこと。

 ホバー能力とかどこの天空の城だよ。


 飛び回っている魔王城の場所を特定するのは難しく、どうせならこの世の全てのことを知っている【神】様のところに行こうという話になった。

 確かに、【神】様なら魔王城の場所がわかると思うし、これから魔王城がどこに向かって行くとかもわかるだろう。


 ……というか【神】様か、この世の食物連鎖の頂点に立つ世界で一番偉いお方なのだが、俺としても会いたくはない。

 だって、ねぇ?


 そんな俺たちの反応を不思議に思ったのか、【魔王】様は可愛らしく首を傾げて疑問を口にした。


「【神】とはどのようなお方なのじゃ?」

「「うーん……」」

「声を揃えて悩むほどなのかのう……?」


 確かに【魔王】様の疑問はもっともだ。

 生まれてこの方【神】様の素性を聞いたことがなかったのだろう、この世界を非公式ながら治めている者を知りたいというのはわかる。

 わかるけどもさ。


「えっと、“皆の言う【神】様ですけど、皆の思っている【神】様ではありません”ってしか答えようが……」

「確かにアランの言う通りだね」

「はて? 全くわからんのじゃが」


 そう言ってさらに首を傾げる【魔王】様。

 悪神ではないんだけど……善神ってわけでもないんだよなぁ。


 今はそうとしか答えようがないので、その話題はそれで終わりとなった。

 【魔王】様もそれ以上聞いては来ず、とりあえずどこに行くかを話し合うことに。


「この大陸を北に渡った所にある大陸に、勇者育成学校あるんだけど、一先ずそこを目的地としよう?」

「何故じゃ?」

「うんとね、そこには【七英雄】の一人【永炎者】がいるんだけど、その人が【神】様のところに繋がる“カギ”を持っているの。だからだよ」

「なるほど」


 【七英雄】の一人【永炎者】か……。

 剣士なら誰もが目標とする最強の剣士と名高い人だ。

 その人に会いに行くってなら俺も俄然やる気が出るというもの。


 そもそも【七英雄】ていうのは、【神】に選ばれた七人の猛者のことであり、世界を構築する力に対抗できる人と言われている。

 【七英雄】は単騎で国軍に匹敵するとか。

 それだけならまだしも【神】の祝福を受けているため、魔法対抗力や魔力なども高いとか。

 詰まる所、雲の上の存在だ。

 【七英雄】は以下の通り。


 【勇者】『ラル=ブレイド』

 【永炎者】『亥斗=エルロン』

 【天眼】『リト』

 【断刀】『政時』

 【現悪夢】『イン=ケツァーナル』

 【魔槌】『グラン=ハンニバル』

 【書】『ルナ』


 以上七名が【七英雄】である。

 つまり、ここにいる【勇者】様も【七英雄】の一人で、本当は俺が一生かかっても一緒に旅することが叶わない人なんだよ。

 そんなお方が、たかが一国の主の……って、この話は終わったんだ、ぶり返すのは止めよう。


 ちなみに、【七英雄】ではないが【神】様と直接やり取りし合う【聖王】がいるらしいが、こっちは名前が公開されてないどころか、伝説の表舞台にも出てこないため定かではない。


 ともかくも、それで一端の方針は決まった。

 あとはそれに沿って動くだけだ。


「ここから北の港までどれくらいかかりますか?」

「うーん……だいたい一日中歩き続けたとして、五日くらいかかるかなぁ?」

「五日ですか、結構早めに着きそうですね」


 ここから北の港まで五日くらいだという。

 休み休み行っても七日後には着くだろうから旅の序盤にしては短い方だ。

 馬車があればもっと早く着くだろうが、贅沢は言ってられない。

 問題は食糧だが、節約していけば今ある保存食で足りるだろう、水はどこかで確保しなくてはならないが。


「そうと決まれば行きますか? 【勇者】様、【魔王】様」

「……」

「のう、アラン?」


 こうなってはすぐに出発した方がいいと踏んだ俺は、二人に出発を提案したのだが、二人はどこか納得がいっていない様子。

 なんだろうか、もう少し休みたいとか?

 それとも、ただの一般人が【勇者】様や【魔王】様に口出しするなということだろうか?

 というかそれの線が強い件。


 そうか、そうだよな、出過ぎた真似をしたな、俺。

 俺は来る注意か罵声の言葉を覚悟する、がそんな必要はなかった。


「あのさ、アラン。私たちこれから一緒に旅する仲でしょ? 敬語とか止めようよ。それにアランの方がずっと年上なんだしさ」

「そうじゃぞ、敬語はその者との間に無意識的に壁を作る。それに、妾はもう【魔王】などではない、ただのオナゴじゃ。【魔王】と呼ぶのは止めよ」

「そう言われましても……」


 罵声や注意の代わりに敬語や敬称などで呼ぶのは止めてほしいと言ってきた。

 そんなことを言われてもぶっちゃけすぐには無理だ。

 それに、俺の中の弱者が吠えているため、二人にタメ口や名前呼びはすごく申し訳ない気分になる。

 自分が弱いと尚更だ。


 しかし、俺が嫌だと言っても二人は嫌がるだろう。

 このままでは鼬ごっこのまま頓着するだろう。

 ……俺が折れるしかないのか。


「えぇと、善処しま……するよ。……ブレイドさん、アブイーターさん」

「なんか壁を感じるなぁ……ねぇ?」

「そうじゃな、せめて諱で呼ばぬか」


 無理難題を押し付ける二人だなぁ、オイ。

 しかし、これ以上は埒が明かないので仕方なしに二人の要望に応えることに。

 俺としては今にも心臓がはち切れそうなのだが、もう少し保っておくれよ心臓。


「……ラルさん、イリシアさん。これからよろしく」

「なんだかやり投げな感じがするけど、まぁ合格」

「よろしく頼むぞ、アラン」


 こうして、俺の旅が本格的に始まったのだ。

 しかし、さっそくホームシックになりかけているのは気のせいだろうか?


 あぁ、これでまた無職、か。

一応、補足として書きます。


 アラン=レイト

 年齢:  二十七歳

 得意武器:剣・弓

 戦闘力: 五


 ラル=ブレイド

 年齢:  十八歳

 得意武器:槍・雷

 戦闘力: 五000


 イリシア=アブイーター

 年齢:  十三歳(魔物とすると二十歳)

 得意武器:杖・魔術

 戦闘力  七五00


 バハムート

 戦闘力:五七00


戦闘力はあくまでも目安です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ