表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険者ライフ!  作者: 作者X
第一章 愉快な三人組
7/71

第5話 虎穴に入らずんば虎児を得ず、間違って入っちゃうこともあるだろうけど

ワイルドウルフの埋葬が終わった後、俺達は川を少し上った所で、昼食の準備に取り掛かる。


……ちなみに、料理はグリーとメリスが作る。

俺も作れないことないけど、この二人の方が上手いからな。


「今日のお昼ご飯は野菜と魔物の肉のスープだよー!」

「……たまに思うんだけど、

 『魔物の肉』って何の肉なんだろうな?」


俺はメリスが煮込んでいるスープを見ながら言う。

もちろん狩った魔物の肉ではない、野菜も肉も、今日の朝ビスケット町を出る前に買った物だ。


「え?『魔物』の肉でしょ?」

「いや、それは知ってるって。

 『何の魔物』の肉なのかって言ってんだよ」


普通、店とかに売ってる肉には、『魔物の肉』としか書いてないことが多いんだよな……。


「一般的に詳しく書いてない場合は、ピンクピッグとかマイルドカウ、あとはチキチキンの肉が多いみたいだよ?」


近くの石に腰を下ろしているグリーが言う。


ちなみにピンクピッグは豚、

マイルドカウは牛、チキチキンは鶏の姿をした魔物だ。

温厚で、よっぽど怒らせない限り人を襲うことはないため、

牧場で飼われてることが多い。


「おいしい魔物だったら、隠さずに書いておくだろうしね、宣伝のために」

「……そういや、ツノセンボンの肉はでっかく名前が書いてあったな」


ツノセンボン。

無数に分かれた二本の角が特徴の、牛の魔物だ。

上位魔獣で、危険度はB。

しかし、体長5m、高さ3mを超えることもある大型の魔物だから、一匹で肉が大量に手に入る上にめちゃくちゃうまい。


ビスケット町で売ってたのは、

肉一切れ800(ゴールド)だったな。


……ちなみに今煮込んでる肉は、

一切れ150(ゴールド)だ……。


「まぁ、牛の肉に比べたら安いんだけどね」

「いや、比べる対象がおかしいだろ……」


牛の肉なんて、一切れ2000(ゴールド)近くするぞ……。

それ以前に魔物の肉と動物の肉を比べることがおかしいって。


……でも、ツノセンボンも肉一切れ800(ゴールド)だもんな……。



「………ツノセンボン一匹狩ったら、どれぐらい金が手に入るんだろうな……」

「う~ん、処理を冒険者ギルド(向こう)に任せても、相場で二万(ゴールド)だよ、確か」

「二万!?」


魔物一匹で!?


「……俺達の今のところの稼ぎって……」

「合計4600~4800(ゴールド)って所かな……」


……俺達が狩った魔物、合計20匹超えてるんだけど……。


なんか悲しくなってきた………。





「ほら!しょんぼりしてないで!スープできたよ!!」

「あ、おう」


メリスが出来たてのスープを皿に盛ってくれる。


いただきます、と手を合わせて言い、一口………。



「ん~、うまい!!」

「ね?別に高級なお肉じゃなくてもおいしいでしょ?」

「いや、別にメシに文句言ってた訳じゃないんだが……」


でも、うまいメシを食ってると気分が明るくなるよな。


「いや~、本当にメリスは料理が上手いね!

 これなら、いつでもお嫁に出せるよ!」

「え、本当?兄さ…」

「嘘!!嘘だよ!!お前は嫁になんて出さない!!」




……やっぱアホだなこいつ……。


俺はメリスにすがりつくグリーを見ながらそう思った……。
















「ごちそう様ー!!」

「……ごちそう様」


笑顔でそう言うメリスと、それを呆れた目で見る俺。


「ん?どうかしたのかい?ハディくん」

「……いや、どうかしたのかじゃなくて……」


俺は空っぽになった鍋を見る。


この鍋一杯に作ったスープの内、実に三分の二がメリスの腹の中におさまったのだ。



「……あの体のどこに入るんだろうな……」

「な!?ハディくん!!メリスをいやらしい目で見て……」

「見てねぇ!!銃を出そうとするな!!」


なんでとっさに銃に手が行くんだよこいつは!?




「それじゃ二人とも、魔物狩りの続き!」


鍋や皿の片づけを終えたメリスがこっちに来る。


「そうだな、まだ二時だし、もう少し稼いどくか!」

「無理はしないようにね?」

「分かってるって」


グリーにそう返し、森に向かおうとした。

そのとき、











「っっ!!?」


森の中から、太いつるが襲いかかってきた。

間一髪右へ跳んでかわし、体勢を整える。


「なんだ!?」


警戒する俺達。

と、森の中から出てきたのは……。




「………ウツボ?」


出てきたのは、高さ3mはある、巨大なウツボカズラだった。

赤い円筒形の袋のような体、上にある口の周りには、八枚の黄色い花びらがついていて、体の下からは十数本の、緑色の太いつるが出てきている。


「なんだこいつ……」

「バ、バトルプラント!?」


向こうから、グリーの驚いた声が聞こえる。


ちょっと待て!バトルプラントって……!!


「森に入る時言ってた、危険度Dの奴かよ!?」

「えぇ!?」


戸惑う俺達に、バトルプラントのつるが襲いかかってくる。


「ちっ!!」


剣を引き抜き、その勢いで向かってきたつるを切り裂く。


グリーとメリスは……。





 ドンッ!ドンッ!




銃声がした、と思ったら、メリス達の方へ向かって行ったつるが吹き飛んだ。




「ハディくん!時間を稼いで!援護するから!!」


見ると、銃を構えたグリーの後ろで、メリスが『集中』をしていた。



「おう!!」


返事をしながら、バトルプラントに向かって走り、一閃――――!



「ギシャアアアァァァ!!」


切りつけられたバトルプラントが悲鳴を上げる。


……こいつ、声とか出せるんだな……。



当然、バトルプラントが反撃してくる。

振り回されるつるをギリギリかわし、間合いをとる。


「うおおおぉぉ!!」


向かってくるつるを切り裂いていく……が、くそ、数が多い!!



 ドォンッ!!



俺がさばき切れなかったつるが、吹き飛ぶ。


「援護するって言ったでしょ?」


バトルプラントの向こうにいるグリーが、銃に弾を装填しながら、そう言った。


……相変わらず良い腕だな……。


「あんまり撃つなよ?弾高いんだからな!」

「最低限度しか撃たないからご心配なく!」



なおも向かってくるつるを、俺が剣で切り裂き、グリーが銃で吹き飛ばす。


……よし!これでもう、つるはねぇ!!



「危険度Dって言っても、大したことな……」



俺がそう言いかけた時、バトルプラントの体が曲がり、上にあった口が俺の方を向いた。


……何だ?俺を飲み込む気か?



いつでも動けるよう、気を引き締める……。






「シャアアアアァァァァ!!」


 ビュビュビュビュッ!!


「いっ!?」


バトルプラントの口から、無数の白い弾が俺に向かって放たれる。


俺は慌ててその場から逃げ出した。




 ドドドドォォォン!!




凄まじい音と共に、俺がさっきまでいた場所が、吹き飛んでいるのが見えた。


なんだよあれ!?エネルギー弾!?



「そんなのありかよ!?」


逃げる俺に、続けてエネルギー弾が降り注ぐ。


……いや、竜とかは炎吐くらしいし、ありかなしか、って言ったらありなんだろうけど……!!


俺はそんな文句を心の中で言いながら、必死にエネルギー弾をよけ続けた……。






~グリーサイド~




「……まずいね……」




エネルギー弾をかわし続けるハディくんを見て、呟く。


バトルプラントがこんな攻撃法を持ってたなんて……。

まぁ、つるだけなんて、危険度Dにしちゃ弱いと思ってたけど……。


いくらハディくんでも、ずっとかわし続けることなんてできない。

そのうち体力が尽きてしまうだろう。

銃で相殺することも考えたけど、向こうの弾が多すぎる……。


後ろで魔法の準備をしているメリスを見る。


「……まだ、『集中』か……」


さすがに今回の魔法は時間がかかるな……。


そう思っていると……。






「……大気より、炎の集いを呼ぶ……」


「!!」


メリスがそう紡ぐと、両手の間に、大きな炎が現れる。


『詠唱』が始まった!


ハディくんもそれに気付いたらしく、バトルプラントから少し離れつつ、交戦を続ける。


「……我は炎を束ねる者なり……」


メリスが手を頭の上まで上げ、さらに『詠唱』を続ける。


手の、いや、両手の間にある炎の周りに四つの炎が現れ、旋回しながらメリスの手に集束する。

次の瞬間、それは1mを超えるほどの巨大な炎の塊と化した。


「ハディくん!離れて!」


交戦を続けていたハディくんに、合図を送る。


「燃え盛れ ブレイアム!!」


メリスが大きな声で『呪文』を唱えると、巨大な炎は凄まじい勢いでバトルプラントへ向かっていった。






ドッガアアアァァァァァァン!!!






凄まじい爆発音と共に、バトルプラントの体が炎に包まれる。


炎属性、基礎魔法レベル3『ブレイアム』……。

人の力だけで(・・・・・・)使える基礎魔法の中では、最強の魔法だ。



バトルプラントは、断末魔の叫びを上げることなく、崩れ落ち、灰と化した……。





~ハディサイド~




「やった……」


俺は崩れ落ちたバトルプラントを見て、そうつぶやいた。


さすが危険度D、今回はきつかったな……。


そう思っていると……。






「………っ!?」



俺は目を疑った……。


なんと、灰の中にバトルプラントの黄色い花びらが残っていたのだ。


「ウソだろ!?ブレイアムが直撃したのに……!!」

「いや、大丈夫だよ」


慌てて剣を構えようとしたとき、グリーの声が聞こえた。


「バトルプラントの花びらは熱や炎に強いんだ。

 でも、本体は普通の魔草と同じく炎に弱いよ」


グリーが花びらを手に持って、言う。


なるほど、確かに花びら以外の部分は全部灰になってるな。

その花びらも、なんとか燃え残ったって感じでボロボロだ。




「……しかし、まさかこんな奴に襲われるなんてな……」


全員大したケガはしてないけど、正直、疲れた……。


「あ~……うん、ちょっと、疲れちゃった……」


見ると、メリスが少しフラフラしている。


ただでさえ、この森に入ってから魔法を使いまくってたんだ。

しかも今回使ったのは、メリスの最強の魔法だからな……。


「魔法は魔力だけじゃなく、集中力も使うからね。

 メリス、少し座って休んでた方がいいよ」


グリーにそう言われ、メリスは木陰の岩に座り込む。


……そういや魔法って、多用しすぎると失神したり、最悪、寿命を削ることすらありえるんだっけ……?


あんまり無茶させないようにしないとな……。




「確かに、危なかったね……。

 ……でも、これは嬉しい誤算だよ」


グリーが、灰を袋に入れながら言う。


「あ、それも肥料の材料になるのか?」

「うん、それも、水のカズラよりも良質な、ね」


それなら、高く買い取ってくれるかもな……。


「それに、この花びら」


グリーが、ボロボロの花びらを手に持つ。


「これはすり潰すと解熱剤の材料になるんだよ」

「……ボッロボロだけど、大丈夫なのか?」

「表面が焦げただけだからね、これぐらいなら大丈夫だよ。

 ……まぁ、やっぱり価値は下がっちゃうけど」


そりゃそうだろ、表面だけとはいえ、焦げてるものと焦げてないものなら、普通は焦げてない方が価値が高い。



「それでもバトルプラントだけで、4200……、いや4500(ゴールド)はいくかな」

「マジで!?」


そんなに!?さすが危険度D……!!


「これで合計9000ちょい、ってとこか……」

「だね。……ハディくん」


グリーが少し真剣な顔になる。


「魔物狩りはこれぐらいにしない?

 ……そろそろ疲れが出てきてるし……」

「ん……」


岩に座っているメリスを見る。


……確かにな……。


「森を抜けても、まだ三時間歩かなきゃいけないんだ。

 ……それも考えると、ね……」

「………だな」


メリスはそんなに体力がある方ではない。

それに、俺達の戦い方は、メリスが(かなめ)だ。

メリスがダウンすると、かなりきつくなる。


「よし。おーい、メリス!」

「ん…」


メリスを呼ぶ、……やっぱ、少し疲れてるな……。


「一応金はたまったし、魔物狩りはこれぐらいにするぞ」

「え、本当?」

「あぁ、もう少し休んだら出発するぞ。

 ここから森を抜けるのに二時間ぐらい、

 遅くても八時までには着くだろ……」


時計で時間を確認して言う。


現在時刻、二時半だ。

少しゆっくりめに歩けば、それぐらいだろ……。


「大丈夫だよメリス、疲れたら僕がおんぶするから!」

「あ、うん!ありがとう兄さん!」


……子供か、お前は……。


思わずそう思う俺。

……あれ?こいつ確か来年成人だよな……?











「……んじゃ、行くか!」

「そうだね」


数分後、休憩を終了し、歩きだそうとする……。


「………」

「ん?どうかしたのかい?」

「いや、グリー、それ……」


俺はグリーの背中で、ぐっすり眠っているメリスを見て言う。


「む、代わらないからね!!」

「いや、んなこと言ってないだろ……」


まぁ、メリスは疲れてたし、グリーも別にいいみたいだし、

……いいか。


「疲れたら言えよ?」

「大丈夫!僕は背負うのがメリスなら、何十時間でも背負えるよ!!」


……何だろう。

何故か冗談に聞こえない……。


「……分かった分かった」

「それじゃあゆっくり行こう。

 メリスが起きないように!」


……それは『起こさないように』気をつかってるのか、それとも『起きてほしくない』のか、

………どっちだ?



「……まぁ、どっちでもいいか。」



そう思い直し、『小人の遊び場』の出口へと歩きだした……。







やっぱりザコ戦よりボス戦の方が書いてて楽しいですね!

……ただ、なんだかグリーのシスコ……妹好きが、

想像よりひどくなってます……。


ネタがやりやすいので、つい……。



本編で出ましたが、

この世界の魔法は、強力な代わりにリスクが大きいです。

詳しくはその内、

魔法や冒険者についてまとめたものを書こうと思ってます。


まぁ、この章が終わってからですが……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ