第37.5話 黒の青年
~サイドアウト~
ここは深い森の奥地。
一人の青年が、めんどくさそうにため息をついている。
「油断した。まさか、探知されるなんてな……」
青年は呟いた。
そして、ゆっくりと手を伸ばす……。
と、ある二本の木の間で、手が弾かれる。
侵入を拒まれた青年はもう一度ため息をつく。
そして、呟いた。
「………いっそのこと、『領域』ごと消し飛ばしてやろうか………」
切れだった漆黒の瞳が鋭く光り、青年の体が黒く光る……いや、黒い光に包まれる。
それとほぼ同時に、辺りから色彩が失われ始めた………。
巨大な魔力を解き放とうとした、その時、青年はあることに気づき、魔力を霧散させた。
「この生気……ちっ、人がいるのかよ。となると、どうするかな……」
めんどくさそうにそう言い、またため息をつく。
そして、あごに手を当てて考え始める。
「認識阻害、時間操作、空間操作、遠距離射撃、弾かれるのは俺だけだから、使い魔に任せるのもありか……」
たっぷり1秒間、この状況を打開する策を考え、そして青年は結論を出した。
「めんどくせぇからやめよ。
中にいる奴は『あれ』を作った奴だろうからな。
完成して出てくるまで待ってやるか」
めんどくせぇ、そう呟き、青年は森から立ち去った………。