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冒険者ライフ!  作者: 作者X
~幕間3~
41/71

番外編 ある館の日常風景

本編で少し出てきた、アザの『家族』の話です。

本編とはほとんど関係ありません。

~サイドアウト~



「ハァ……ハァ……」


ここは港町ヨーグルトから数十km離れた場所にある大きな森、名を『四季の森』といった。

その森の入口で、一人の少年が肩で息をしていた。

彼の名はアザ・シーラー、クリーム色の髪と、中性的な顔立ちが特徴の少年だ。


「ふぅ……やっぱりこの距離を走るのは疲れるなぁ。

 でもま、これも修業の一環だしね」


あとお金の節約にもなるし、と小さく笑う。

そう、この男、そのために数十km離れた仕事場まで、走って行っているのだ。


「少し遅くなっちゃった……。みんな心配してるかな」


ぼそっと呟き、森の中に入って行く。

そして、いつも通っている道を通り、20分程歩くと、大きな館が見えてきた。

それは、一瞬ここが森の中だということを忘れてしまう程の、大きく、立派な館。

入口の横にあるボタンを押してチャイムを鳴らすと、ほぼ同時に、ドタドタと走る音が聞こえてくる。

そして勢いよく扉が開き、10代半ばの茶髪の少女が出てきた。


「アザさん!!おかえりなさい!!」

「ただいま、キャティさん」


決まって一番に出迎えてくれる少女に微笑むと、少女も可愛らしい笑顔で返してくれる。

少女の名はキャティ・ブロンドアイズ、名前通り、薄い金色の瞳が特徴の可愛い女の子だ。


「あ、アザさんおかえりなさーい!遅かったね」

「ただいまピユくん。ちょっと今日はいろいろあってさ」


続いて、奥から金髪の少年が顔を見せた。

年は10代前半のこの少年の名は、ピユ・グローブといった。


「そういえば、今日は知り合いの護衛をするって言ってたっけ。それ関係?」

「んー、まぁね」

「ア、アザさん!大丈夫でした!?ケガとかしてませんか!?」

「大丈夫だよ、ありがとうキャティさん」


そう言ってアザが笑顔を向けると、キャティは顔を紅潮させ、アザから顔を背ける。


「キャティさん?」

「わぁっ!!」

「大丈夫?なんだか顔が赤いけど……」

「だ、だだだ大丈夫です!!何でもありませんっ!!」


アザが顔を近づけると、キャティはさらに顔を赤くして、館の奥へと走って行ってしまった。

アザが首をかしげていると、奥から高い声が聞こえた。


「ダメだよアザくん、キャティさんをいじめちゃ!」

「そんなつもりはなかったんだけど……あ、ただいま、ひつじさん」

「おかえり、アザくん」


ひつじと呼ばれた人物は、光を思わせる白髪を携え、アザににっこりと笑いかけた。


「キャティさんはアザさんが好きなんだから!いい加減返事してあげたら?」

「そんなこと言われても、キャティさんは妹みたいなものだし……」

「ピユくん、こういうのは当人同士の問題だから」

「それもそっか。あ、ひつじさん、僕夕食運んでおきますね!」

「うん、お願い」


ピユは夕食の準備のために奥へと下がり、その場にアザとひつじが残った。


「それで?今日は遅かったけど、どうしたの?」

「それが、海釣りツアーを定期的にやろうって話が出てさ、その護衛にまた協力してくれないかって言われちゃって、その打ち合わせとかで時間がかかっちゃったんだ」

「なるほどね……、まぁ君なら大丈夫だろうけど、あんまり無理はしないようにね?

 ただでさえ、いつも2時間以上走って仕事に行ってるんだから」

「大丈夫だって、僕はひつじさんの一番弟子なんだから!」

「でも、最近は僕の修業受けてないよね?」

「うっ……ごめんなさい」

「まぁ、仕事が忙しいのは分かってるけど、このままじゃ、そのうちピユくんに抜かれちゃうよ?

 あの子の魔力、もう魔導師(ウィザード)(クラス)までいってるからね」

「え、もうそこまで!?」

「うん、元々魔力は高かったけど、それ以上に成長速度が異常だよ。

 このままいくと、後1年もしたら、君とまともに戦えるレベルになるんじゃないかな」


その言葉を聞き、アザは一抹の危機感を覚えた。

弟弟子に追いつかれるかもしれない、と。


「っていっても、今は君の方が断然上だから、そんなに焦る必要はないよ?」

「う……見透かされてた」

「分かるよ、それぐらい」

「『家族』だから?」

「これぐらいなら、『家族』じゃなくても分かるけどね」


言って、互いに笑い合う。

おふざけのように言っているが、当人達は、『家族』という言葉を本気で言っている。

例え、本来の意味とは、少し違っていたとしても……。


「さて、ちょうどこれから夕食なんだ。間に合って良かったよ」

「それじゃ、手洗いうがいをしてからすぐ行くね」

「うん、それじゃ後で」


ひつじと別れ、洗面所へ向かう途中、アザは今日のことを思い出していた。

一緒に仕事をした、2人のギルドの新入りと、3人の旅の冒険者。


「今日は、話の種には困らないかな」


アザは笑ってそう呟くと、『家族』が待つ夕食の席へと急ぐのだった。






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