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薬草(980文字)

 男は繁華街の路地裏にある、怪しい露店に訪れた。

 これまた怪しい雰囲気の商人が、男の顔を見てニヤリと笑った。


「お待ちしておりましたよ、お客様。例のモノをご用意してあります」


 男はこくりと頷いた。ふところから、じゃらじゃらと金の入った麻袋を取り出し、商人へ押し付けるように渡す。商人はへへっと笑ってから、金をふところに納めた。それと引き換えに出てくるのは、白い包装紙に挟まれたひとかけの薬草だ。


「お客様が実際にこれを目にするのは初めてでしたね。ええ、親切心で、改めてこの薬草について少しご説明させていただきます……」


 商人はにたりと、口角の片方を吊り上げた。


「なんといってもこの薬草には、強い覚醒効果がございます。それはもう今までの自分がなんだったのかと錯誤するような感覚です。自分の中の新たな扉を開くことができるでしょう。まぁちと、服用してから三日ほど、体が慣れないためにだるくなったり、頭が冴えて眠れないこともあるでしょうが……乗り越えれば、あとはなんてことありません。長く残る副作用なんてないのです。だから、ささ、安心してお使いください……」


 男は薬草を受け取り、しげしげと眺めた。市場ではめったに出回らないこの薬草。商人が近いうち、もしかしたら入荷できるかもしれないと言ってきたから、なじみである自分に融通を利かせて、こうして安くない手数料も積んで、売ってもらったわけだ。

 男はごくりと息を吞んだ。

 男はこの薬草をキメることに、ずっと憧れがあった。これさえあれば、今まで辿り着いたことのないところへ到達できる気がした。

 男は商人の前であることなどもおかまいなく、包装紙から薬草を取り出し、一息に、生で、噛みもせず、のみこんだ。鼻の粘膜が焦げそうなほど、薬草の匂いは刺激的だった。

 それから、どくんと、男の胸が高鳴った。

 男の全身、そして頭の中に、体験したことのない熱が駆け巡った。

 その様子を見守りながら、商人は怪しい表情のまま、微笑ましそうな声をかけてやった。


「どうです。伝説の薬草『ツヨクナルソウ』の効果は。ステータスでいうと、きんりょく、たいりょく、すばやさ、かしこさのすべてが+10されるわけですから……きっと、あなたが以前涙を呑んで諦めたあのダンジョンも、今こそ攻略できるんじゃあないでしょうか……」


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