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第5話 愛の爆弾-2

「1、2の3で、ボカァーン! 愛の爆弾チャンネルの〜シャクレですっ!」


「メガネですっ」


「今日はウルパーのクリスマス名物……巨大ツリーの前に来ています!」


「良い子にしてたから、シャクレサンタが来てくれるかなぁ」


「ほうほーう、シャクレサンタだよーってなにやらしてんねーん!」


「あはは……」


「……」


 俺たちはクリスマス期間に入ったパークへと動画撮影にやってきていた。結局あの日から3人での話し合いはまともにできていない。このままでは埒が開かないと思ったシャクレが、俺たちを強引にパークへと引っ張り出した。俺とリュウとは未だ気まずいままだ。


「……。今日は撮影やめるか?」


「え?」


「よし! 撮影はやめて普通にパークを楽しもう! 気分転換だ!」


 どうにもならない雰囲気を察してか、シャクレはそう言って俺とリュウと肩を組んできた。


「ツリーの前で写真でも撮るか? な? あ、すいませーん! 写真いいですかー?」


 シャクレが手を振ってスタッフさんを呼ぶ。俺はちらりとリュウの方を見てみるが、少しも目を合わせてくれなかった。


「はい、写真って……。げっ、シャクレじゃないの」


「げっ、は酷いぜ、ビッグボス〜! 元同僚のよしみだろ〜?」


 ビッグボスという女性のスタッフがやって来て、シャクレと親しげに話し始める。笑顔が素敵な綺麗な人だ。


「今日は何しにきたのよ……。げげっ、リュウもいるじゃない……」


「あっ……」


「こいつももう反省してるから、何もしやしねーよ。バックヤードにも入らないよ、な?」


「は、はい……!」


——バックヤード?!


 バックヤードに入らないって何だ。一体何があったんだ。また俺の知らない間にリュウは何かやらかしていたのか?


「あれ、そっちの人は?」


 俺が疑問を抱いているとビッグボスが話しかけてくる。俺はすかさず自己紹介をする。


「あぁ、俺シャクレと“愛の爆弾”って名前で活動してるメガネと言います。初めまして」


「ふーん、シャクレのツレにしてはしっかりしてそうね」


「はい! こいつらがフラフラしてる分しっかりしなきゃって思ってます」


「おい、メガネ! 誰がフラフラしてるって!」


「お前だよ、シャクレ」


「ふふふ、変なことしないように見張ってて頂戴ね」


 ビッグボスはにこやかに笑っていた。素敵な女性だな。働く人はかっこいい、魅力的だ。シャクレのやつこんな人と知り合いだったのか。おい、ちゃんと紹介しておけよ。


「で、写真撮ればいいのね?」


「おう、かっこよく頼むぜ!」


「はい、スリーツーワン!」


カシャリ


◆◆◆


「おい、シャクレ」


「あ?」


「さっきの人と親しいのか?」


「さっき?」


「ほら、ビッグボスとかいう……」


「あぁ……。まぁ親しいというか……。顔馴染みではあるかな」


 シャクレは顎髭をポリポリとかきながら、そう答えた。いや、どう考えても親しげな様子に見えたけど……。


「あいつは……10年くらい前かな。パークで働き始めて、入って来た当初からバリバリ働いてて……目立ってたんだよ」


「へぇ、素敵だな……」


「……。メガネまさかビッグボスのこと……」


「素敵な人だなとは思ったよ」


「やめとけよ! 尻に敷かれるのが目に見えてるぞ!」


 シャクレは何もわかってないな。ああいう女性は意外と家では甘えて来たりするものだ。その内と外のギャップが可愛かったりするんじゃないか。


「ギャップねぇ。俺はあいつは元来ああいうやつなんだと思うけどな」


 シャクレはそう話しながら、懐かしそうに遠くを見る。俺の知らないパークで働いている時のシャクレはどんな感じだったのだろう。そこでパークの人とどんな関係を築いていたのか。そういえば、あまり聞いたことがないな。


「うーん、俺があいつを認識したのはやっぱり“ツリー点灯式事件”の時かなぁ」


「“ツリー点灯式事件”?」


「あ、お……俺もそれ見てました……」


 リュウが久しぶりに口を開く。良かった、今日はずっとダンマリのままなのかと思っていた。シャクレが驚いた様子で答える。


「リュウもいたの?!」


「はい、その時の動画も撮ってますよ」


 そう言ってリュウはスマホを取り出して、動画を再生し始める。クリスマスツリーの点灯式の様子を写した動画だ。しばらくすると、突然ツリーの眼前に女性のスタッフが現れて大きな声で叫び始めた。


『危ないので一旦下がってください!』


 昔の動画で画質が悪いため顔はよくわからないが、恐らくこの叫んだのが先ほどのビッグボスなのだろう。雰囲気が似ている気がする。


 ビッグボスの注意を聞いて、点灯式に集まっていた人間がツリーから遠ざかって避難した。しかし、子どもが1人逃げずにツリーを見上げていた。


『危ない!』


 ビッグボスはそう叫ぶと子どもを抱えてツリーから離れる。その直後、ガシャァアンという音が鳴り響いた。どうやら、ツリーの飾りが落下したようだった。


「あ、危ないところだったんだな」


「そうなんだよ。当時新人だったビッグボスが飾りが落ちそうなことに気づいてことなきを得たんだ。この時点灯式ダンサーとして俺もこの場にいたんだ」


 シャクレはそう言うと、動画を少し戻して指さして見せる。あ、確かによく見ると端の方にシャクレが映っている。


「リュウもよくこんな動画撮ってたな」


「当時パークに通い始めた頃で……、とにかくいろんなものを撮影してたんです……」


「それがまだスマホに残ってるのがすごいよな」


「……。ちょっと前にパソコンの動画整理した時に見つけて、事故映像みたいなので投稿したらバズるかなと思いまして……」


「……なるほど。結局投稿はしてないんだな?」


「そうですね、タイミングがなくて……」


 タイミングがあったら投稿したのかよ、と思ったが口には出さなかった。それにしても、リュウと久しぶりに会話が交わせたな。シャクレは俺たちが話している間ずっと黙って動画を見ていた。


「ビッグボスはすごいよ。俺も危ないと思って動きかけたんだけど、それよりもずっと早く動いてたんだよな」


「へぇ、素敵だな」


「なんだよ、メガネ! 今日は素敵だなモードか?」


 俺が心の底から発した言葉を茶化すシャクレ。すかさず俺はツッコんだ。


「俺にそんなモードはねぇよ!」


「くいっ。素敵だな……」


「あっはっは! リュウ、めちゃ似てる!」


 なぜか俺の真似をし始めるリュウ。口で「くいっ」って言うな! 俺そんなことしてないだろ!


「似てねーよ! やめろ、メガネくいっとしてなかっただろ!」


「くいっ。素敵だな……」


「あはは! シャクレさん、それやばいです!」


「2人ともやめろ!」


 いつの間にか俺のモノマネ大会になってしまった。やめてくれ、俺はそんなんじゃない。


「次の動画の企画は、“メガネの素敵だな判定企画”だな!」


「いいですねー! メガネさんに色んなものを素敵か素敵じゃないか判定してもらいましょう!」


「やめろ! 誰がそんなのに興味あるんだよ!」


 突然のイジリに苛立つ反面、俺をいじることで3人がいつもの調子に戻ったことへの嬉しさもあった。やっぱりこんな感じでずっと楽しく話してたいよな。

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