マーメイドプリンセス
「かわいいかわいい僕のお姫様」
そう言って私に手を差し伸べるこの国の皇帝。
私は姫だった。
この男に滅ぼされた小さな海の国。
ただ私を手に入れるためだけに滅ぼされた私の大切で愛した国。
「.....」
私は人魚だった。
海の国の姫だった。
人魚姫は誰よりも強い人魚の力を受け継いでいる。
私の歌声は人を癒したり呪ったり、私の涙は人を不老不死にした。
人魚の力。
人魚の涙は不老不死と言われるが人魚の個体によって力は変わる。普通の人魚の涙はせいぜい見た目が若くなったり、シミやそばかすが消えるくらいの力だった。歌声も人の癒しとはなるが快眠効果とかにしかならない程の微々たる力だ。呪いも頭痛がする程度だ。
人間達が伝説を信じ人魚を狩るため私たちは一度絶滅しかけた。けれど昔、数百年前の初代人魚姫はとても強い力を持っていた。
そしてその人魚は人に呪いの歌を歌った。
そして帝国全土が壊滅寸前のところでその人魚は帝国と和平を結んだ。
それから人魚達は隠れて暮らし、国に平和は訪れた。
かと思った。
数百年が経った今、私たちは帝国の進化により滅ぼされた。
そして私はこの人に攫われた。
「今日も歌って。僕のお姫様」
それも私のせいで人魚の国は滅んだ。
「♩〜」
うっとりと私を見つめる皇帝。
そして、皇帝は私を人魚ではなく人にした。
魔法を使って私に足を与えた。
けっして陸では生きていけない私が生きているのもこれが理由だ。
「今日も美しい。....僕のお姫様。」
毎日毎日私に会いに来て、私に歌を強要する。
そして歌い終わると私の声を奪う。
私は皇帝の前でしか、歌う時しか声が出ない。
人魚に帝国を滅ぼされかけた人間達は人魚の研究をし、声を奪う魔法を作ったらしい。
なんとも悍ましい生き物だ。
「君が逃げ出したら....分かるね?」
私が逃げ出したら仲間たちを殺すと言う。
私たち人魚を捕らえた愚かな人間達。
私は今日も仲間に向けて歌う。
決して人間のためではないと、目を閉じて。
あの日、私がこの男を見つけなければ、こんなことは起こらなかったのかもしれない。
「あれ?.....人が落ちて来てる」
海の中を泳ぐ私の近くに人が沈んでくる。
私は近くに行く。ずたぼろの姿と、お腹から血を流していた。
私は咄嗟に癒しの歌を歌った。
するとみるみる傷が塞がれた。そして私は彼を陸に連れて行ってあげた。
そして陸において私は海へ戻った。
これが地獄の始まりとも知らずに。
一月後、私たちの海の中に大量の人が落ちて来た。
「なにごとじゃ」
ばあばが声を荒げる。
その瞬間に海に広がる眩い光。
そして海一面に魔法陣が現れた。
そして唱え終えた時、私達は異変に気づいた。
(声が.....でない....?!)
私たちの戦うための武器である声が出なくなっていた。
そんな私たちの前に彼は現れた。
(この人....!前に助けた....!)
「見つけた....僕のお姫様....」
そう言って私の手に口付けを落とした。
手の甲へのキスはプロポーズを意味していた。
そして私たちに告げた。
「この人魚を貰い受ける。承諾すれば助けてやるが、しないなら全員殺す」
そういったこの男の顔を私は忘れることはないだろう。
それでも私を救おうとする仲間達に私は首を振った。
そして私も皇帝の手の甲にキスを落とした。
これはプロポーズの承諾を意味していた。
そしてそ皇帝は私を陸へ連れて行った。
そして私に魔法で足を作り、私を籠檻の中に閉じ込めた。
私はそれから何年も籠檻に閉じ込められ、歌い続けた。
そしてことは起こった。
人間達の戦争だ。
皇帝は私の部屋に来た。息を切らし、あの日と同じように、お腹から血を流していた。
そして私に癒しの歌を歌えと言った。
歌い出すと皇帝の傷は癒えていく。
そのまま歌い続けろと皇帝言った。
私は歌い続けた。
奥から足音がした。コツコツとこちらに近づいてくる。
「歌い続けるんだ。」
皇帝は扉を見たまま、私に背を向けたまま言う。
「なんだ、ここにいたのか」
そう言って空っぽな瞳をした男が現れた。
人魚はキラキラしたものが好きだ。
彼のキラキラ光る髪に私は釘付けになる。
「お前....!こんなことしてどうなるか....!」
皇帝は叫ぶ。
それに反して男は落ち着いたようにこちらに近づく。
そした歌い続ける私を見つめる。
「籠の中に、人とはね」
そう言って男は笑う。
「こ、これは!人ではない!人魚だ!!そしてこれの歌声で僕に傷一つつけることなんてお前には出来ない!」
そういうと男は急に自分の腕を切った。
するとその切られた腕が治っていく。
「なるほど、どうりでこの部屋に入ったら傷が消えたと思った」
そう言って私に近づく。
「ばかめ!僕だけの傷を治せ!」
そう叫ばれた。人魚の歌声は聞く者全てに癒しを与える。特定の人だけなんて無理だ。
「とめろ!!」
そう皇帝が言う。だから私は歌うのをやめた。
私が歌うのをやめると男の足も止まった。
私が歌い続けていたら私を殺していたのだろうか。
「うぁぁぁああああ!」
皇帝が男に襲いかかる。
だがその刃は男には刺さらなかった。
そして皇帝は崩れ落ちた。
「ハッ.....おい!歌え!治せ!」
辛うじて息がある皇帝は掠れ声で私に言う。
早くしろと、絶え絶えで私を見ながら言う。
(歌わなきゃ....!)
息を吸うと歌う前に男が皇帝にとどめを刺した。
私は皇帝が死に、歌おうとしてたのを止める。
そして真っ直ぐ男を見つづけた。
男もこっちに歩いてくる。
「これで...帰れるか?」
そう言って男は籠の扉を壊した。
私は首を振った。
私は足があっても歩くことなんてできない。
それに...
「ゴフッ.....」
口から血が出る。
もう、時間がない。
私の命は皇帝と繋げられていた。
皇帝が死んだら私も死ぬという魔法をかけられていた。
「籠から....出たい....」
そう告げると男は私を抱き上げた。
「海が見たい」
そして男は窓枠に立ってくれた。海が見える。仲間達のいる海が。
「貴方の名前は....?」
「カイル:シルバー」
「....ありがとう...私を救ってくれて」
そう言って私は目を閉じた。




