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ロンボス村(3)

 火山の危険はまだ続いている。翌日もウィリア達は足止めされていた。

 また火山灰が降るかもしれないので、ウィリアは部屋の中で剣の素振りをした。

 ジェンは出かけて、午前中に帰ってきた。昼食の時、話を聞く。

「午前中はどこへ行ったんですか?」

「村の戦士団のところに、薬を売りに」

「売れましたか?」

「それがね、前回来たときと隊長が替わっていて、『なんだおまえは』みたいな感じで、すぐには買ってもらえなかった。前回の隊長が副長になっていたのでとりなしてもらったんだけど、出納係が来てないから午後に来いと言われた」

「隊長が副長に? そんなことがあるんですか?」

「なんでも新しい隊長は、軍事学校を出てるらしい。辺境ではそういう人は貴重だから前隊長が譲ったそうだ」

「ふうん……。何人ぐらいいましたか?」

「いたのは十人ちょっとかな」

 ウィリアは、ベンチに座っていたお爺さんの話を思い出した。

「ドラゴンは倒せそうですか?」

「ドラゴン? うーん……。どうかなあ……」

 ジェンは苦笑していた。無理そうなんだろう。

 ロンボス村の戦士団は、封印されたドラゴンが蘇ったとき撃退する使命を持っているそうだ。もっとも、はるか昔から蘇っていないというから、その気概を持っているだけで十分なのだろう。

 食器を片付ける。

「ごちそうさまでした」

「お客さん、長く留めて悪いね。噴火はたいてい二三日で終わるから、明後日あたりには進めると思いますよ」

 ジェンはまた戦士団のところへ出かけていった。

 ウィリアも部屋に戻る。




 ウィリアが部屋の中にいると、地鳴りがあった。

「ん……?」

 地鳴りは前日も感じたが、今回のは何かが違った。不吉な感覚があった。

 ウィリアは窓から火山を見た。

 前日の噴火と比べて、火口から噴煙は上がっていない。しかし、中腹から煙のような何かが放出されていた。

 同時に、ある感覚を覚えた。

「これは……魔素!」

 地下の魔素が、噴火に伴って放出されたのだろうか。

 そして、煙が上がっている中腹から、何かが蠢いてくるのが見えた。

 遠くからでもわかる大きさ。巨大な生物。

「ドラゴン!」

 封印されたドラゴンが、魔素の大量放出により、復活したのだろうか。

 ウィリアは急いで鎧を着込んだ。




「では、お薬の代金です」

「はい。ありがとう」

 ジェンは戦士団の詰所で、薬の取引を終えた。

「毎度あり。それじゃ……」

 そう言って出ようとすると、地鳴りがした。

「ん?」

 戦士団の人たちもとまどっている。

「なんだ? 今の」

「いつもと、ちょっと違うような……」

 隊長が声を出した。

「おまえら。騒ぐな。火山なんだから地鳴りもあるだろう。それより、訓練だ」

 隊員達が訓練を再開しようとした。

 すると、詰所の扉を開けて、村人が入ってきた。

「た、大変です!」

「なんだ」

「ドラゴンです! 封印されたドラゴンが、復活しました! 村の方に向かってきます!」

 隊員たちの顔が青くなった。

「ド、ドラゴン? まさか、本当に!?」

「本当です! すぐに来そうです!」

 隊長は腕を組んで考え込んだ。副長が言った。

「考えている場合ではありません! とにかく、行ってみないと!」

「うーん……。しかし、ドラゴンとなると、その力を見極めた上で、対処法を検討しないと……」

「そんなこと言っているうちに被害が出ます! ロンボス村戦士団は、ドラゴンと戦うのが役目。今こそ、行かないと!」

「そうです! 隊長!」

 副長と若い隊員たちが詰め寄った。

「うむ……。しかたがない……。では、出発する……」

 隊員たちが準備をする。

 ジェンが副長に言った。

「あの、僕は薬屋です。救護班の役ができると思うので、ご一緒します」

「来てくれるか。ありがとう」

 ジェンは戦士団を見回した。

 このメンバーでは、どんな小さなドラゴンでも、撃退できるかどうかは疑わしい。ジェンが行けばとにかく治癒はできる。




 戦士団とジェンは、村の入口を出た。

 ドラゴンは火山から下りて、まっすぐ村に向かってきていた。

 道の遠くに見える。

 三体いた。

 いずれも巨大なドラゴンだ。家より大きいくらいだった。

 戦士団の先頭にいた隊長は、足を止めた。

「どうしました? 隊長?」

「……」

 しばらく留まって、振り返った。

「全員、解散!」

 副長は驚いた。

「隊長! 解散してどうするんですか! ドラゴンを止めないと!」

「うるせえ! あんなもの、止められるわけないだろう!」

「しかし、止めなければ、村に向かってきます!」

「だったらお前が止めてみろよ! 俺は抜ける! あとはやれ!」

 隊長は去って行った。

 副長は団員を見た。

 怖じ気づいた隊員たちが去って行った。十人ほどいたのが五人ぐらいになった。

 副長が残った隊員たちに言った。

「見ての通り、隊長はもういない。ドラゴンを止めなければならないが、正直、この戦力では難しい。命が惜しければ帰っても止めはしない」

 五人の団員は帰らなかった。

「やってくれるか……」

「やります!」

「勿論です!」

 副長は、やりますと言った男を見た。

「ラトル、お前はこの村の者ではない。逃げてもいいんだぞ」

「いいえ! 戦士団に入ったからには、村を守ります!」

「そうか。では、行くぞ!」

 残りのメンバーは前に進んだ。

 ドラゴンは赤い色、青い色、黒い色の三体がいた。

「まず、一体を倒さなければだめだ。赤い色のやつを狙う!」



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