ようこそマリーナミューズへ!
マリーナミューズは青い海に接して建設された街であり、海に映えるような石炭で造られた白い建物が多い。
お昼時になり、様々な屋台などが並び始めたため、いつも以上に賑やかになっている。
ハンナさんからもらった軍資金を握りしめ、私はセオドアの手をひいて屋台に駆け寄った。
「おじさん、このキャンディーを2本ちょうだい!」
「おっ、ハンナさんとこの看板娘じゃねえか。いつもあそこのパブには世話になってるし、1本おまけだよ」
「ありがとう。またお店にも来てね!」
棒付きキャンディーをもらい、セオドアにも1本渡す。
「これは…食べ物ですか?」
「そう、これは棒付きキャンディーと言うのよ。ハンナさんからおすすめされたの。これ、飴が付いている方とは逆の先端が回せるようになっているでしょ。舐めた後、少しずつ回してみて」
棒付きキャンディーは先端が四角形になっており、少し力を入れれば回せるようになっている。
セオドアは棒付きキャンディーを舐めながら、ゆっくり先端を回してみた。
予想したとおり、セオドアは目を丸くさせた。
「味が変わった!?」
「キャンディーの先端にフルーツの模様が描いてあるでしょ?好きな味にすることができるのよ。もし飽きたら、飴を舐めているうちは、違う味にすることもできるんだって」
キャンディーにしても、ただのキャンディーで終わらないところが異世界らしい。
セオドアは地上のフルーツを食べることも初めてで、苺味が特に気に入っていた。
私は食べ物だけではなく、お面屋さんも気になっていた。
セオドアに背を向けてから、商品のマスクを試着させてもらい、セオドアに顔を向けた。
「この生物は何ですか!?アカネ、体は大丈夫!?」
セオドアを驚かせる作戦が成功し、私はにやりと笑った。
ふかふかの毛並みに、真ん丸な目、口元から生える髭といえば…
「これは猫って言うんだよ。大丈夫だよ、マスクを外せば人間の体に戻るし、これは幻覚なんだって。触ると人間の皮膚のままだから変装だってすぐにばれるし、びっくりさせるだけの物みたい」
私の話を聞いて安堵したセオドアは、今度は興味津々に猫の顔を眺めた。
「人魚族以外の種族はあまり見たことがないから驚きました。こんな愛くるしい生物がいるとは…」
「ハンナさんに聞いたところだと実際に獣人族はいるみたい。でも、体の一部が動物になっている獣人が一般的なんだって。猫の獣人族は私も会ってみたいな」
「やはり、外に出ないとわからないこともあるんですね。とても勉強になりました」
セオドアは新しいことをたくさん知れてうれしそうだった。
マスクをした自分の顔を鏡で見てみた。
昔、よく可愛がっていた野良猫に似ていて、個人的にとても気に入ったため購入することにした。
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