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これからのことは

 私を狙った黒幕はだれなのかはっきりしないまま、ひとまずハンナさんが待つマリーナミューズへ戻ることにした。

 半日過ごしたら戻る予定だったけど、私が拐われてしまうなどのトラブルのせいですっかり長居してしまった。

 ハンナさんも心配していることだろう。

 もう帰らなきゃと焦っていたら、セオドアが陸まで送ってくれるということだった。

 帰りも行きと同じように近衛兵達と大勢で向かうと思っていたけど、セオドアが先導し、少し距離をとって近衛兵達が続くようにするらしい。

 なぜなのかわからず首を傾げていると、アンセルさんが「多分、なるべく二人になりたいんじゃないんですかね」と耳打ちしてきたため、私は顔が赤くなってしまった。



 二人乗りのソリをセオドアが選んだため、行きよりもセオドアとの距離が近くてドキドキしてしまう。

 セオドア愛用のシャチがソリをひいてくれることになったが、シャチが一際大きくてびっくりしてしまった。

 セオドアは手綱さばきが上手いため、またしても近衛兵達が置いていかれないようにするのに必死だ。

 結局まだ、セオドアには何も話せていない。

 人と人魚は、寿命、文化、姿など、あらゆる点で違う。

 私はセオドアに好感を持っているけど、夫婦になるというほどの覚悟はまだない。

 私が悩んでいると、セオドアは「どうした?何か悩んでいるのか?」と優しく話しかけてきた。


「セオドア…あなたがこんなに尽くしてくれているのに、私、まだ自分の気持ちがわかってなくて…」


「僕に気を遣わなくていい。アカネの本当の気持ちがわかるまで、僕は会いに行く」


「セオドア、それって…」


 私が話そうとした時は、もう地上に近づいていた時で、話せる状況ではなかった。

 次第に海面に近づいていき、そりをひいていたシャチが海面から飛びだして大きな水しぶきを上げた。

 久しぶりに吸った外の空気は、とても新鮮だった。

 海から出たばかりだというのに服もすぐに乾いて、人魚の尾も人間の足に変わっていた。

 セオドアも一見すると人間にしか見えなくなった。

 あっという間にマリーナミューズの港にたどり着いてしまったため、状況の理解が追いつかない。

 私が話すよりも早く、セオドアは私の手の甲にキスをした。


「僕はもとより、長期戦のつもりだ。覚悟しておいてくれ」


 言葉とは裏腹に、セオドアはにこっと清らかな笑みを浮かべた。

 一途な人魚に好かれると厄介なのかもしれない。

 私はドキドキと高鳴る胸を何とか抑えようとしたけど、なかなかできなかった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。もしよろしければ、励みになりますので感想やブックマークをお願いします。

ひとまずこれで終わりとなりますが、折を見て続編を書く予定です。

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