密談と和解
いろいろなことがありすぎて、安心した途端、どっと疲れが押し寄せてきた。
早く部屋に戻りたいところだけど、なかなかたどり着かない。
部屋の場所は以前教えてもらっていたけど、お城が大きすぎて迷ってしまったからだ。
来た道を戻ってみようかと思っていると、突き当りから声が聞こえた。
「ほう、セオドアだけでなくあの女も無事だったとはな」
セオドアという名前を呼び捨てにできる人物、それは王族であるネレウス王と、義理の兄のリアムさんしかいない。
突き当りからこっそりと覗くと、リアムさんと黒い装束の男の人魚が話していることがわかった。
黒い装束の人魚は跪いており、リアムさんへ顔を上げてこう話した。
「セオドア王子が成人しなければ、貴方様こそがこの国の王でしたのに。あと一歩のところで…」
「そうそううまくいかないだろう。セオドアが惚れた女も、ただの女ではなかったということか。面白い…」
にやりと不敵に笑ったリアムさんを見て、背筋が凍った。
リアムさんはセオドアのことを陥れようとしている?
でも、これだけの情報だと本当のことはわからないしどうしよう…
そもそも、この話を聞いていたことがバレたら、それこそマズい気がする。
私がその場から離れようとして、数歩後ずさったところ、「あの」と声をかけられた。
びっくりして飛び上がってしまいそうな私を見て、不思議そうな顔をしていたのは何と巫女のライラさんだった。
「ら、ライラさん、どうしたんですかこんな所で…」
「部屋にいらっしゃらないから探していたのです。私、あなたに謝りたいと思っていて…」
しおらしい姿のライラさんは、まさに人魚姫のような儚さと美しさに溢れていた。
ライラさんとの関係が良くなるなら願ってもないことだけど、ちょっと場所がマズい。
「ライラさん、その申し出はすごくうれしいです。ちょっと場所を変えませんか?理由は後で話しますので…」
すると、何かを察したライラさんはすぐに「では私の部屋に案内しましょう」と言ってくれた。
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