真犯人はわからずじまい
城に戻ってきた時には、セオドアや近衛兵たちを出迎える兵士たちが勢揃いしていた。
私が城に来た時より明らかに多い。
もしかすると、城にいる兵士が総動員しているのかもしれない。
「すごい数…」
「アカネ、僕は先に状況を説明してくるからここで待ってて」
セオドアを心配した兵士の隊長格たちが次々と駆け寄ってくる中、セオドアは慣れた様子で近づいた。
セオドアがいなくなって二人になった時、アンセルさんは私にこっそり耳打ちしてきた。
「ネレウス王がアカネさんを捜索する兵を整えようとしていたんですが、「そんな時間は待てない!!」って王子が飛び出してしまって…。それで急いで近衛兵を引き連れて、やっと追いついたんですよ。城の方はどうなったかなと思ってはいましたが、王子の帰還が早すぎて出陣する間も無かったようですね」
セオドアは私のことをすごく心配してくれていた。
王子としての立場もあるだろうに、まず真っ先に私を助けに行ってくれたのだ。
セオドアが想像以上に私のことを大切にしてくれるから、段々とセオドアのことを意識してしまう自分がいる。
アンセルさんなんて、そのことを察してて私の様子を見て楽しそうにしている。
セオドアが戻ってきた時には、顔が赤い私をセオドアが「どうした?熱があるのか?」と心配しておでこを触ってきたから余計熱くなってしまって収拾がつかない。
流石にかわいそうに思ったのか、アンセルさんは話題を変えてくれた。
「それにしても妙ですね。城下町で襲ってきた奴らが、また同じことをするなんて。王子に関連があるって既にわかっていながらアカネ様を誘拐するなんて」
「確かにそうだ。僕の立場を考えれば、手を出すと面倒なことになるのはわかっていただろうに」
「ひょっとして、王子と同じように位の高い人物の後ろ盾があったのかもしれませんね。まあ、そういう人物ほど、しっぽをつかませちゃくれませんがね」
いつも飄々としているアンセルさんにしては珍しく、険しい表情をしていた。
実は城に連行する間も、セオドアや近衛兵たちは、捕まったならず者たちに尋問していた。
セオドアが鬼のような形相で厳しく詰め寄り、時折アンセルさんが優しく問いかけるという飴と鞭スタイルで。
ならず者たちは震え上がり、「本当に知らないから勘弁してくれ」と土下座していた。
リーダー格の眼帯の人魚は「こんなはずでは」と繰り返すばかりで話にもならなかった。
なんとか部下たちから聞き出すと、私の情報を売った人魚がいるらしいが、素性を知らないらしく、その人魚がどこにいるか見当もつかないらしい。
思った以上に根深い問題なのかもしれない。
私が難しい顔をしていると、セオドアが「まだやることがあるから、先に部屋に戻っていてくれ」と気遣ってくれたため、部屋に戻ることにした。