05 ドア1枚を隔てた"恐怖"
時計は、夜の2時を回った
ゲスティとやらは来なかった
やはりアレは、
ただのイタズラだったようだ
ダクヤ
「ま、わかりきっていたことだがな…
あ~あ、
すっかり一杯食わされちまったなあ!
今だから言うが…
正直、おれはビビりまくっていた
あのゲスティとかいう女…
今ごろ、ビビりまくっているおれを想像して
ほくそ笑んでるんだろうなァ
あ~、やられたよ!
完敗だ!
でもいい教訓にはなったな
やはり遊び心とはいえ、妙なサイトに
手を出すべきではない
俺は一歩成長できた
それでいいとしよう」
こうして、おれの単調ながらも
楽しい日常はこれからも続いていく
今までも、これからも、
ずっと、ずっと…
ピンポーン
ピンポンが鳴っている
ダクヤ
「何…?もう夜中の2時だぞ…」
ゲスティ
「こんばんは~♪
斉藤さ~ん、来ましたよ~、
ゲスティです~♪
ちょっと遅くなっちゃって申し訳ないんですけど~、
でも今夜中には
来たんだからいいですよね~♪」
!!!!!!!!
ダクヤ
「な…!!?
ば、馬鹿な…!!!
これは『現実』か…!!!?」
ゲスティ
「フ~ッ
さ、ドアを開けてくださいよ~
いるんでしょ?
ほら早くぅ~」
コンコン…
ダクヤ
「そうか…
おれはいつの間にか眠ってしまったんだな
早く目を覚まさなくては…」
コンコン…
ゲスティ
「何してんの?早く開けてよ~
あ、もしかして居留守でも使ってる?」
ダクヤ
「くそッ!覚めろ!!
早く覚めろよ、おれ!!」
ゲスティ
「ムダですよ?
ちゃ~んといるのはわかってますからね~
ほら、このドアのすぐ向こうに…」
!!
ゾッとして思わず後ずさりしてしまう
ゲスティ
「あ♪今、後ずさりしたでしょ?
そんなに怖がんなくても
大丈夫ですってばあ~」
ハ、ハッタリだ…!!
ハッタリがたまたま当たっただけ…!
部屋の中が見えるハズがない!!
手足が震える
かつてない恐怖が、
おれの心臓を絞り上げてくる
ネットも、電話も、生身のおれとは
関係ない、遠い世界の話に過ぎなかった
しかし、今は違う…!!
得体の知れない存在が、ドア一枚隔てた
向こうに、確かにいる…!!!
ダクヤ
「ひッ…」
だッ、ダメだ…!!
悲鳴を上げるな…!!
音を立ててはいけない…!!!
落ち着け…!!
落ち着いて考えるんだ…!!
今、どう動くべきか…!!!
おれは、どんな状況でも的確な判断が
できる男であるハズだ…!!
▶居留守を貫く
ドアを開ける