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5章・一年生・長期休暇編_052_アルビヌド山攻め

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

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 5章・一年生・長期休暇編_052_アルビヌド山攻め

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「ナルダン子爵が寝返っているという証拠はあるのかね?」

 ブロガド男爵が元々深かったシワをさらに深くし、厳しい表情で聞く。

「確証や証拠はありません。ですが、帝国の密偵がナルダン子爵領に頻繁に出入りしているのは、確認しています」

 それ凄く問題じゃないの?

 密偵の出入りが激しいってことは、帝国とナルダン子爵が繋がっている可能性が高いんじゃないかと、愚考するわけです。


「なるほど。怪しくはあるが、確証はない。そういうことか……」

「もしナルダン子爵が寝返っていた場合、その戦力は子爵軍だけでおよそ四千。四千で後方を突かれたら、こちらは厳しいでしょう。さらに帝国軍が合流していれば万に届く可能性もあります。とはいえ、これはあくまでも想像の範疇。確証があるわけではありません」

 皆さん黙りこくっていますね。中には考えているフリの人もいるのかな?

 寝返りがあったらかなり問題だけど、致命傷ではないと思うのは僕だけかな?


「皆の意見を聞きたい」

 領主様が発言を求めたが、誰も口を開く人はいない。唸っている人もいる。

 判断できず、進言できない。そんな感じかな。


「もし北から敵がくるなら、今すぐにもアルビヌド山の帝国軍を叩かないと、どちらにしても挟まれるわ。今すぐ出陣しましょう!」

 皆が黙りこくる中、発言したのは我らがアイドルのオリビアちゃんだ。


「僕もオリビアに賛成かな。時間をかければかけるだけ、敵に有利になるからね」

 アール様が賛成すると、領主様が小さく頷いた。


「他の者はどうか?」

「時間をかけずにアルビヌド山の帝国軍を叩くのに賛成でございます」

「直ちに出陣を!」

 騎士の誰かが賛成すると、それが伝播したかのように皆が出陣と口にした。

 ブロガド男爵も異議はないようで、頷いていた。


「それであれば僕に一つ作戦があります」

「申せ」

 アール様の作戦は、僕でも引くようなものだった。でも有効だと思う。


 僕たちは出陣に備えて武具の再点検を行っている。

「ランドー。今回は(手綱を離すの)分かってるわよね」

「うん。(今回もしっかり握るから)大丈夫だよ」

 ふふふと笑い合う僕たち。絶対に離さないからな!


「アベル兄さん。オリビアちゃんのそばを離れたらダメだからね」

 何度でも言うけど、本当に離れるんじゃないよ!


「任せとけって!」

「そんなこと言って、前回はオリビアちゃんからドンドン離れていったよね」

「そ、そんなことないぞ……」

 目を逸らさないの!


「今度やったらお仕置きね」

「な、なんだよ、お仕置きとか……お前、俺を脅すのか」

「脅しでもなんでもいいから、お仕置きにならないようにオリビアちゃんを守るんだよ。いいね」

「お、おう……」

 今度も一人で突撃したら、母さんに言いつけてやるんだから。

 僕たちが一番怖いのは、なんと言っても母さんだ。男はいくつになっても母親には勝てないのさ。


 軍議で決まったけど、オリビアちゃんは領主様のそばに配置された。不満顔のオリビアちゃんをよそに、進軍してアルビヌド山に陣取る帝国軍を包囲。

 敵が山を下りてくればそのまま迎撃し、下りてこなければ作戦開始だ。


「下りてこないね」

 時間稼ぎの可能性が高くなってきた。やっぱりナルダン子爵は帝国側に寝返っているのか? 


「ちっ」

 敵が攻めてきたらオリビアちゃんも活躍の場ができるんだけど、攻めてこないと領主様の監視下。それがとーっても不満なオリビアちゃんは舌打ちした。

 女の子が舌打ちなんてしてはいけません! いいところのお嬢様なんだから、少しは考えましょうね。


「攻めろ!」

 領主様の命令が発せられて、先陣が山に迫る。

 帝国軍は矢と魔法を放ち、こちらを迎え撃つ構えだ。

 これだけでも帝国軍は消極的な防衛戦に見えるんだよな~。


 こちらも最初からガンガンいかない。様子見。

 アール様の作戦の準備のため、敵の目を引きつけているだけなんだけどね。


「そろそろかしら?」

「そうだね」

 そこに伝令がやってきて、領主様に準備が整ったと報告した。

「うむ。直ちにかかれ!」

「はっ!」

 伝令が走り去っていく。


 ほどなくして、作戦が開始された。それが分かるように本陣から見て左右からもくもくと煙が上がっている。

 あれはアール様の作戦。簡単にいうと、火攻めだね。

 アルビヌド山の北側は断崖絶壁で木は生えてないけど、それ以外はちゃんと木の生えた山だ。

 アール様たち別動隊は、アルビヌド山の東と西から火を放った。火の勢いを増すために油も持ち出している。

 風のない日は、火は下から上へと向かう。敵はこのままでは火に包まれて焼け死ぬだろう。それを回避するには断崖絶壁を下りるか、火がない南側に逃げるしかない。でも南側は領主様の軍が手ぐすねを引いて待っているわけで、まさに飛んで火にいる夏の虫状態だね。


 敵は水系の魔法を使うだろうから、そういう時はフウコが上空から油の入った壺を落とすことになっている。

 火のついた油に水が撒かれても、火は勢いを増すことになる。彼らはそういった初歩的なことを知っているだろうか?

 アール様もえげつないことするよね。僕なら焼け死ぬのは嫌だから、投降するかな。


「敵兵が中央(南)へ押し寄せております!」

「よし、囲い込め! 一人たりとも逃がすな!」

 領主様は容赦がない。捕縛ができないなら殺せと言う。

 あまり殺し過ぎると、恨まれるとデューク様が言っていたのを思い出す。

 でも今回は後ろから帝国に寝返ったナルダン子爵軍がやってくる可能性がある。だから時間はかけられない。そういうことだろう。


 

ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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