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5章・一年生・長期休暇編_051_軍議

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

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 5章・一年生・長期休暇編_051_軍議

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「報告を聞こう」

「はっ。敵帝国軍は壊滅。現在は周辺の敗残兵を掃討しております」

 ベリングス様が報告すると、デューク様は満足げに頷いた。


「味方の被害は?」

「死者は十名もおりません。重傷者も十名程。戦力の低下はないと言っていいでしょう」

 デリウエア様の報告に重傷者の手当を手厚くと指示を出して、デューク様が僕を見る。

 僕の役目はフウコの目を通して戦場を俯瞰すること。そこから得られる情報は、とても重要だと僕は考えている。


「アキロス砦を包囲していた敵軍は、後退してアルビヌド山に陣取りました。こちらの敗残兵がそちらに合流しようと向かっていますが、数は少なくまばらです」

 アキロス砦から八キロメートル程南にある標高二百メートルのアルビヌド山は、その北側が断崖絶壁になっている。

 僕ならこのアルビヌド山に布陣はしないね。帝国軍の指揮官は、何を考えているのかな? 背水の陣? それともこちらが仕かけたら一気に山を駆け下りて、その勢いで大打撃を与えようというのだろうか?

 皇龍隕石剣をもう一発撃たないのかと軍議前にデューク様にこっそり聞いたら、あまり帝国兵を殺しまくると帝国民から恨まれるそうだ。

 兵士の多くは平民でその家族が一致団結して敵対すると、面倒なんだとか。ただ後がなくなったらそんなことに配慮するつもりはないと言っていた。

 僕はとにかく殺しまくるものだと思っていたから、そういった考えがあるのかと勉強になった。


「先ずはアキロス砦に入る。そこで父上の到着を待つ」

 デューク様の指示通り、僕たちはアキロス砦に入った。


「ランドーのせいだからね!」

 オリビアちゃんはいいところを見せられず、お冠だ。僕はそれを宥めすかしている。


「まだ敵はいるんだから、これから活躍できると思うよ」

「でもランドーがそばにいたら、私は何もさせてもらえないでしょ」

 分かっているね。その通りだけど、はいそうですとは言えないよね。


「そんなことないよ」

 デューク様か領主様がいいと言えば、手綱を離してもいい。むしろそう言ってくれないと、僕がオリビアちゃんに恨まれてしまうよ。

 危険な目には遭わせたくないけど、僕が手綱を離さなかったら手綱を切ってでも飛んでいきそうだ。どこかでガス抜きしないと、本当に飛んでいくと思う。間違いない。


 それから二日、敵味方共に動きはない。

 帝国軍は残存兵力を糾合し、五千人くらいかな。

 こちらは予定より早く領主様がやってきた。領主様の軍が二千人。同盟者のブロガド男爵家から千人が援軍として、一緒にやって来た。

 これで戦力は互角。あのアルビヌド山に陣取った意味がよく分からないけど、領主様はどうするのかな。


「やあ、ランドー君。オリビアのお守り、苦労しているようだね」

 領主様の三男のアール様がにこやかな表情で歩いてくる。


「私は何も苦労なんてかけてないわよ」

 オリビアちゃんの頬が膨らむ。可愛いねぇ。ツンツンしちゃおうかな。


「苦労ではないですよ。アール様」

 苦労というよりは、楽しいかな。僕はMの気があるかも……。


「オリビアはランドー君を大事にしないといけないよ。彼みたいな人は滅多にいないからね」

 それは僕がMだって言っているのでしょうか?


「大事にしてるわよ。それよりも何か用なの?」

「用がなくても可愛い妹とお話したいんだけどね」

「アール兄さんに一番似合わない言葉ね」

「それはないよ、オリビア。でもこれから軍議を開くから、二人ともおいで」

「ほら、用があったじゃない」

「ふふふ」

 アール様はオリビアちゃんの嫌味もなんのその。マイペースな方だ。


 軍議の席には、領主様と援軍のブロガド男爵、その他に多くの騎士様たちがいた。

「戦力は互角。さて、帝国軍はなぜあのアルビヌド山に布陣したかだ……」

 領主様が口火を切った。


「帝国軍の思惑について、皆の意見を聞きたい」

 理解不能な敵の行動が、領主様は気になるようだ。


「あんなのはコケ脅しにすぎませぬ! 直ちに攻め滅ぼしてやりましょうぞ!」

 コケ脅しかもしれない。僕もあの意味が分からないからね。もっとも僕程度では分からない、何かの考えがあるのかもだけど。


「攻めてみれば分かりましょう」

「攻めるべし!」

「そうだ。攻めましょう!」

 騎士の多くは攻めるように進言している。


「ブロガド殿はどうですかな?」

 ブロガド男爵は六十くらいの白髪の老人で、眼光鋭い人だ。体はそこまで大きくないけど、かなりの武闘派だとアール様に聞いている。


「無意味にあの山に陣取ったとは思えぬが、さすがにその思惑までは分かりかねますな」

 そうですよねー。


「アールはどうか?」

「いくつか考えられますね」

「ほう、いくつもあるのか?」

「ええ。まず第一は帝国軍の指揮官が間抜けな人物だった場合です。何も考えてないのでしょう」

 アール様は肩をすぼめて、苦笑をうかべる。その言葉と姿に、笑いが起きる。

 アール様は皆さんの肩の力を抜こうとしたのではないだろうか。僕はそう考えた。


「他の考えは?」

 場が温まったところで、領主が先を促す。いいコンビだな。

「挟撃を狙っているかもしれません」

「挟撃だと?」

「アルビヌド山に陣取り、こちらの目を南へ向ける。その隙に後方から奇襲ですかね」

「しかし今回帝国は総兵力で八千を出してきた。これ以上の兵をここに投入できるだろうか?」

「できないこともないでしょう」

「なぜだ?」

 アール様の意味深な言葉に、領主様は顔に困惑を浮かべた。


 アール様が棒で地図の上を差す。

 そこはこのアキロス砦よりも北東にある道だった。

「む……そこは」

「はい、このアキロス砦とナルダン子爵領を繋ぐ間道です」

「あり得ぬであろう。そこはナルダン子爵が抑えている。そこを帝国軍が進軍してくるということは、ナルダン子爵が負けたことを意味するのだぞ。だがあちらに帝国軍が現れたという報告は受けてない」

「はい。帝国軍が現れても普通であればナルダン子爵軍が対処するでしょう。ですが、もう一つ考え方があります」

「もう一つ?」

「ええ、もう一つです」

「それは……?」

「ナルダン子爵が帝国側に寝返った場合です」

「「「っ!?」」」

 領主様の顔が強張り、ここにいる全員に緊張が走った。

 僕はあまり貴族のことに詳しくないけど、そのナルダン子爵が帝国に寝返っていたら大変なことになるのは分かる。

 問題はその話にどれだけの信憑性があるかだね。アール様がなんの根拠もなく、そんな話をするとは思えないんだけど……。


 

ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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