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5章・一年生・長期休暇編_046_帝国の影

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

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 5章・一年生・長期休暇編_046_帝国の影

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 皇龍火炎剣は領主様、皇龍暴風剣はマーカス様、皇龍地獄剣はアール様、皇龍隕石剣はデューク様が受け取った。デューク様は最後まで受け取るか悩んでいたらしく、その前に皆さんが選んでしまったので残り物の皇龍隕石剣になったらしい。

 でもね、僕から言わせてもらうと、皇龍隕石剣が一番インパクトがあると思うんだ。


「くっ……オリビアを不幸にしたら許さんからな……」

 顔を逸らしてそう言うデューク様が可愛い。でもデューク様はゴリマッチョの強面だから、容姿は可愛くない。なんでスキンヘッドにしているのか、理解不能。毛が伸びてきたら剃っていると、オリビアちゃんが言っていた。絶対に夜に遭いたくない人だ。


「ランドー君はデューク兄さんを手懐けたから、これでリーバンス家の一員だね(笑)」

 アール様は飄々とした雰囲気の人だけど、参謀としてえげつない作戦を立てたりもするらしい。容姿は領主夫人によく似ていて、優しげなんだけどね……。


「いつも悪いね。こういったものをもらわなくても婚約破棄なんかしないから、安心してくれていいんだがな。ははは」

 僕の思惑なんかお見通しですか! さすがは領主様ですね。


「鉄と銅の補充もしてもらったし、本当にランドー君には頭が上がらないよ」

 領主様似のマーカス様の要望通り、鉄八割、銅二割で創造した。鉄は十キロの鉄の棒を四千本だから、重量にして四十トンになる。さすがに疲れたよ、昨日は。


 一晩休んで、オリビアちゃんを迎えに来た僕は、領主様一家の謝辞を頂いたあと、さっそく二人で出かける。

「リベナ村もかなり発展したわよね」

「そうだね。僕たちが出会った頃は人がまばらだったけど、今じゃ結構な人出があるね」

 もう村じゃなくて町といってよいレベルの人が住んでいる。自分の生まれ育った場所が発展するのは悪いことじゃないけど、以前の静かな村が少し懐かしい。


 二人で村を見て回る。知らない店がいくつもあって、それらに入ってウインドウショッピングをした。楽しい時間だ。

 雑貨店を出たところで、僕たちの目の前を早馬が駆け抜けた。赤い鉢巻をしていたから、貴族用の伝令だ。

「何かあったようね」

「そのようだね」

 オリビアちゃんが駆け出した。僕もそれを追って駆ける。オリビアちゃん、速すぎるんだよね。パンツが見えそうなくらいスカートが翻っている。後ろを走るのも悪くないものだね。へへへ。


 ちっ、もうお屋敷か。お屋敷に入ると、荒い息をして興奮した先ほどの馬がいた。馬を落ちつかせるために、馬丁さんが手綱を持って歩かせている。どこから走って来たのか知らないけど、ゆっくり休んでね。


「パパ!」

「オリビアか」

 廊下を歩いていた領主様を発見。


「帝国軍が攻めてきたのですか」

 他の貴族という線もあると思うよ。領主様の敵は多いみたいだし。でも帝国という外敵があるのに、内戦するバカはいないか。……いや、いそうなんだよな、これが。


「ああ、アキロス砦に帝国軍が迫っている」

「準備します!」

 バビューンッとオリビアちゃんは走っていった……。え、戦場に行くってこと? 領主様は呆然としているんですが? 残された僕はどういう顔をすればいいのかな?


「私の許可を取らないのか、あのバカ娘は……」

 呆れを通り越していますね、領主様。

「心労、お察しします」

「……ランドー君。オリビアの手綱をしっかり握っていてほしい。よろしく頼むよ」

 それはまさか……丸投げ!? ねえ、丸投げなの、領主様!? オリビアちゃんの手綱なんか握ったら、ロデオなんて目じゃないくらいの暴れ具合に振り落とされてしまうよ! とはいえ、僕のお嫁さんになる人だもんな……。これから少しずつ調教したほうがいいのかな?


「私ではダメなのだよ! あの子をどうしても甘やかしてしまう。だからランドー君が厳しくしてくれ!」

 本気で丸投げされちゃったよ……。


「……微力を尽くします」

「おお! しっかり頼んだぞ、ランドー君!」

 領主様がオリビアちゃんに甘いのは気づいていた。でも領主様の育て方がどうこう言うつもりはない。だってオリビアちゃんは前世の記憶持ちだから。

 多分だけど、オリビアちゃんは『私Tueee』を地でいっているんだと思う。ただ力を制御してないわけでも、調子に乗っているわけでもないんだよね。ちゃんと努力し、そして計算高く動いているところがあるんだよ。ああ見えて。

 どこが計算高いと聞かれると、困るんだけどね。


 すぐに領主一家と士族たちが集められた。

「帝国軍七千がアキロス砦に迫っている。デュークに二千を預け、すぐにも出立してもらう。私も残りの二千が準備出来次第アキロス砦へ向かう。皆はすぐに準備に取りかかるように」

 領主様の言葉に、皆が気合の入った返事をする。その気迫に、僕は気圧されてしまう。これが戦に臨む人たちの気合か。


 今回のような大規模な侵攻はここ数年なかったものだ。おそらく他の地域にも帝国軍が押し寄せているのではと、アール様が言っていた。その情報はすでに早馬を出して確認させているらしい。


 アキロス砦にはリーバンス子爵軍五百人が詰めている。防衛力はあるが、さすがに十四倍もの戦力差では防衛にも限界があるだろう。

 そこで領主様はリーバンス子爵軍のほぼ全軍である四千人を動員し、総動員体制で臨むと宣言した。


 総動員体制だから、士族の一員である僕も戦場に向かう。学徒動員とか関係ない。総力戦だ。

 ただし僕は士族でも兵を指揮した経験がないから、デューク様つきの幕僚ということになった。オリビアちゃんも同じように、デューク様の幕僚だ。


 軍議が終わり、僕はオリビアちゃんの部屋で二人っきりになった。

 ラーベン子爵の時は百人だったけど、今回は規模が違う。兵力は七千対四千五百。かなり不利だ。

 皇龍シリーズやオリビアちゃんの天神雷光、火竜剣などの攻撃をすると、アキロス砦周辺の魔力は減るだろう。そうなるといずれ使えなくなる。さすがにヤバい状況だよね。

「そんな辛気臭い顔をしないの。勝利の女神様が逃げていくわよ」

「オリビアちゃんは怖くないの?」

「怖いわよ」

 え、そうなの? オリビアちゃんは怖くないと思っていたよ。


「怖くないわけないじゃん。私、か弱い女の子だよ」

「か弱いは置いておいて、オリビアちゃんなら怖くないと言うと思っていたよ」

 僕は箱を横に置くジェスチャーをした。


「なんで置いておくの?」

 オリビアちゃんが箱を戻すジェスチャーをする。


「いや、置いておかないと話が進まないから」

「ちょっとムカつくんだけど~」

 そう言って僕の頬を両手で挟む。


「ねえ、ランドー」

「ひゃひ(何?)」

「私たち死ぬかもしれないよね」

「ひょうひゃへ(そうだね)」

「キス。しようか」

「………」

 ま、マジっすか!?

 オリビアちゃんの顔が近づいて来る。オリビアちゃんが目を閉じた。

 前世を含めたファーストキスは、とても柔らかかった。こんなに気持ちいいものだとは思ってもいなかったよ。

 これは死ねないな。勝って勝利のキスをしてもらうんだ。


 

ご愛読ありがとうございます。

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