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4章・一年生・前編_038_悪だくみ

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

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 4章・一年生・前編_038_悪だくみ

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 試験まで二週間の闇曜日。僕はオリビアちゃんと久しぶりにデートした。

 試験が終わると、約一カ月の休みに入る。その打合せとも言う……。


 ちょっと見ないうちにオリビアちゃんは、益々綺麗になった。

「試験後はリベナ村に帰るでしょ?」

「そうだね……」

「何よ、気のない返事ね。帰るのが嫌なの?」

 帰る時間が惜しい。そんなことを思っている自分がいる。家族に会いたい気持ちもある。どっちもというのは無理な話だ。こんな時に転移が使えればと思うのだけど、あれは滅茶苦茶難しい。そして転移を訓練する時間もない。今は魔法学校の授業をこなすだけでも時間が足りない状況なんだ。


「その顔は時間が惜しいと思っているようね」

「そ、そんなことは……」

「ランドーはすぐに顔に出るから、分かりやすいわね」

 オリビアちゃんには隠し事できないというか、僕が顔に出過ぎるんだろうね。


「気分転換は大事よ。根を詰め過ぎたら病気になるわ」

「そうだね」

「だからちゃんと帰りましょう。皆が待っているわ」

「うん。分ったよ」

 彼女には敵わないな。前世で社会人をしていたからだろうか、メリハリの調整能力が素晴らしい。社会人は関係ないかもだけど。


「そんなわけで、今日は思いっきり羽を伸ばしましょう。気晴らしよ!おーっ!」

 高らかに右手を突き上げるオリビアちゃん。

「ちょっと、なんでランドーはしないのよ。私がバカみたいじゃない」

「あ、うん。ごめん……。おー」

 バンッと背中を叩かれた。

「痛いんだけど」

「気合が入ってない! 遊ぶときも学ぶときも全力よ! ほら、全力よ」

 僕の気合が入るまで何度も「おー」をさせられた。こういう体育会のノリは苦手なんだけど、これもオリビアちゃんの気遣いなんだと思う。おかげでなんだか肩の力が抜けた気がするんだ。


 露店を食べ歩きした僕たちは、次にリューベニックの名所を訪れた。小高い丘からリューベニックを見下ろせる場所に、二人で座って景色を眺める。

 思えば遠くに来たものだ。異世界だもんね。あの飛行機事故がなかったら、僕は今も退屈な人生を送っていたのかな。


 風が吹き抜け、オリビアちゃんの桜色の髪が揺れる。柔らかそうな髪だね。

「何よ?」

「綺麗だと思ってね」

「……そういうことを真面目な顔をして言わないの!」

 恥ずかしがって顔を真っ赤にするオリビアちゃんもまた愛おしい。


「あ、そうだ。ランドーに一つ頼みがあるのよ」

 オリビアちゃんは照れを隠すように、話を振って来た。

「何?」

「訓練用の刀を創ってほしいの」

 オリビアちゃんが訓練用の刀を創ってほしい理由は、騎士学校にある訓練用の剣が剣しかないから。剣が剣しかないのは当然だけど、この国で一般的に使われているのは両刃の剣。大小の差はあっても、両刃が普通なんだ。

 そんでもって訓練用の剣は、刀を使うオリビアちゃんには合わないものばかりってことだね。


「いいよ。刃を潰した刀だね」

「そそ。とーっても丈夫なやつをお願いするわね。鎧の上からでも骨の五、六本くらい折れるやつをね」

 オリビアちゃんの目が怖いくらい鋭くなった。


「……怖いこと言うね。何かあった?」

 オリビアちゃんの口角が上る。

「超ーーーっムカつく奴がいるのよ。大した実力もないのに、家の力でデカい顔する奴がね」

「へ、へー……。それって上級貴族だよね?」

「うん。バルガンテス侯爵家の五男ね。人のお尻とか触ってくるし」

「え!? オリビアちゃんのお尻を!?」

「私は触られる前にヒラーッて躱すけどさ、他の女の子たちが何人も被害に遭ってるわけよー」

「そ、そうか……」

 オリビアちゃんのお尻は僕だって触ったことないんだから、それを触ろうだなんてなんて悪党だ!


「そんなわけで、ちょっと痛い目に遭ってもらおうかなーなんて思ったの」

「そんなわけって……そんなことして大丈夫なの? 相手はこのリューベニックを治めているバルガンテス侯爵のご子息なんでしょ?」

 いくら領主様の発言力が大きくても相手は侯爵家。地力が違い過ぎると思うんだけど。


「構わないわよ。訓練で怪我するのは普通だもん。骨の十本くらい折れたって文句言われる筋合いないわ。それで文句言って来るなら、名門バルガンテス侯爵家もその程度ってことね」

 骨の本数が増えてますよ、オリビアちゃん。それに十本も折ったら訓練の怪我の範疇を越えていると思うわけです。個人的には殺してやりたい思いだけど。


「多少痛い目に遭わすのはいいけど、殺したらダメだよ」

 こうは言ったけど、僕もこれは止めるべきと思わないではない。でもこうなったオリビアちゃんを止めるのは至難の業なんだよね。

 止めるべきだけど、止めたくもない。僕も怒っているから心が揺れている。無理に止めようとは思えない。はぁ……。僕も困ったものだ。


「そんなヘマはしないわ。二度と騎士になろうなんて思わない程度に痛めつけるだけだから」

 怒っているんだね。その目を見たら、凄く怒っているのが分かるよ。

 オリビアちゃんって相手の神経を逆なでするところがあるからちょっと心配だよ。できれば遺恨が残らないことを願うばかりだね。


 帰りの馬車の中で黄銀合金で刃を潰した刀を創った。刻印も何もないものだけど、それ以外はオリビアちゃんが持つ天神雷光とまったく同じものだ。


 

ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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