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4章・一年生・前編_036_鍛冶

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

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 4章・一年生・前編_036_鍛冶

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「ホーウホーウ」

「分かっているんだ……」

 フウコの胸に顔を埋めて寝ると、起きられない。あと五分、もう少しと言ってしまう。

「ホーウホーウ」

 フウコが翼をばたつかせる。

「うぅぅぅ……分かったよ、起きるよ……ふわ~」

 フウコの胸が、気持ち良すぎるのがいけないのだ。春眠暁を覚えずというけど、フウコの胸は暁を覚えずだね。


 世の中は三月、木々が少しずつ緑を増やす季節になった。梅や桜があれば目を楽しませてくれると思うけど、この地域にはない。

 寄宿舎生活にも慣れてきたし、リューベニックにも少し慣れた。魔法学校にも慣れつつあるけど、オリビアちゃんに毎日会えないのが辛い。共に忙しいことから、入学して一回しか会えてないんだ。


 僕にオリビアちゃんエキスをください!


 朝食はサバの塩焼きとみそ汁。うん、故郷の味だ。

「ホーウ!」

「そうか、フウコも美味いか」

 サバなんて食べたことないと思うけど、フウコはサバが好き。海の魚全般が好きっぽい。


 体長はさらに大きくなって百七十センチメートルに成長している。一カ月に五から十センチメートルのペースで成長するとか、ヤバすぎる。このままではすぐに二メートルを超えるかもだね。

 いつか僕を乗せて空を飛んでくれないかな。


 ロビーでロビン君と合流して、登校する。

「ロビン君。最近痩せた?」

「結構ハードで、苦労しているから少し痩せたようです」

「あまり無理したらダメだよ」

「はい。ご心配いただき、感謝いたします」

 ロビン君は相変わらず口調が堅い。それが彼の性格からくるものだと、最近は理解している。


「そういえば、聞いているよ。魔法の授業でいい成績らしいね」

 なんでも魔法の授業では、頭一つ抜けているとか。


「ランドーさんの耳に入っていましたか。恥ずかしい限りです」

 ロビン君はどうやら魔法系の加護レベル二っぽい。あくまでも僕の予想だけどさ、それほど魔法の授業で活躍しているということだね。

 基本的に加護のことは生徒同士で話したり聞くのは禁止されている。加護のことを公表していいことはない。幼い子の加護を公表すれば攫われるし、大人でも攫われないとは限らない。それに邪魔だからと暗殺の対象になったりする。昔はそういうことが結構あったらしい。

 といっても願書には記載しないけど、推薦状には加護のことが書かれるから先生は知っているけどね。そうじゃないと推薦理由が分からないからしょうがない。情報管理なんて完全じゃないだろうし、流れるものは流れてしまうのが情報だ。


 授業が進めば加護レベル一と加護レベル二の差は開いていき、レベル二やレベル三の生徒は頭角を現していく。これまでに多くの努力をした人は、すでに差をつけていることもある。


 今日は鍛冶の授業を受ける。製作の授業は、分野ごとに教えてくれる先生が違う。彫金はリック先生だったけど、鍛冶はディーバー先生が担当している。

 ディーバー先生は筋肉質だけど、背はそんなに高くない。それでも百七十くらいはあるかな。筋肉質だから背以上に大きく見えるよ。


「鍛冶はな、火との調和だ。火を操り、金属を思うように成長させるんだ」

 (ふいご)を何度も上下させ、炉の中の炎を操る。鉄が次第に赤くなっていく。

 もういいか、もういいか、お前たちはどう見ると生徒たちに聞きながら、鉄を熱している。

 皆がそれぞれここだと言うけど、ディーバー先生は首を振る。


「ここだと思います」

 誰かが言うと、ディーバー先生は口元を少しだけ緩めて、鉄を炉から取り出した。

 トンカンと熱せられた鉄をハンマーで打つ。火花が飛び散る。熱気が凄い。


「いいか、鉄は熱いうちに打てと言う。つまり冷めた鉄を打つなということだ」

 今も十分に熱そうな鉄だけど、ディーバー先生に言わせるともう冷めているらしい。さっぱり分からない。


 ディーバー先生は僕たちに何度も鉄の温度を確認しては打った。

 次第に鉄は長く伸びていく。剣の形になるまでにはまだまだ時間がかかるようだ。


「鍛冶には体力と我慢強さが必要だ」

 体力はハンマーを打ち続けるため、我慢強さは炉からの熱気に耐えるためにだろう。


「剣でも鎧でも、形にするには数日かかる。だが剣の形が出来ても、まだそれは剣ではない。ただ剣の形をした鉄の棒でしかない」

 多くの行程を経て剣になるのだと、ディーバー先生は言う。

 僕は刀鍛冶の行程をある程度知っているけど、多くの行程を分業で行っていた。


 僕もやってみるが、刀を創造するのと違って上手くいかない。最初の鉄を熱する温度が違うようだ。

 まったく鉄が伸びる気配がない。


 製作では鍛冶と彫金を学ぶ。女子生徒は裁縫に集まっているが、男子生徒は鍛冶が多いようだ。試験の対象はどれか一つだから、裁縫でも鍛冶でも彫金でも好きなものを選べばいい。


 僕は彫金で製作は乗り切ろうと思う。鍛冶は剣を創造するために行程が分かればいい。彫金は刻印と共通する技術が身につくからね。創造でもできそうだけど、刻印は魔術紋に魔力を込めながらしないといけないからね。そこがミソなわけよ。刻印を創造でするのは、かなり難しい。皇龍火炎剣の劣化版でしかない火竜剣でも、刻印は創造で刻めなかったんだよね。多分、そこはきっちり分けてやれということなんだと思う。


 

ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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