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4章・一年生・前編_031_実技選択

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

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 4章・一年生・前編_031_実技選択

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 イベントが拗れなくて良かったと思う僕がいる反面、ちょっと拗れてほしかったと思う僕がいる。天使と悪魔、僕は絶対に天使寄りだよね。

 赤毛のルーク君と気弱そうなリンさん。僕は学食のテーブルで二人と向かい合って座っている。


「俺は元々魔法学校に入る気なんてなかったから、行儀のいい喋り方はできない。それでいいと思うなら、俺の話をちょっとだけ聞いてくれ」

 なんというか、面白いことを言う生徒だね。


「僕は元々平民だから喋り方は気にしないけど、何かな?」

「そうか! そりゃー助かるぜ! 実はよ、俺のオヤジがリーバンス子爵家の奴と縁故を作れっつーんだ。こっちのリンも同じだ」

 思いっきりぶっちゃけているけど、いいの? 下心を隠して近づかれるよりは、断然いいんだけどさ。


「ルーク君、ぶっちゃけすぎ……」

 気弱そうなリンさんが呆れてる。どうやらリンさんとルーク君は、気兼ねのない仲のようだ。


「隠しておくのは気分が悪りーじゃねぇか。これでダメなら、俺がオヤジに殴られればいいんだからよー」

 ルーク君は父親に叱られたりし慣れているようだね。士族の子供にしては粗野な感じがするから、その関係で慣れたっぽいかな。

 リンさんは僕の動向を窺いつつ、オドオドしている。父親に叱られ慣れてない感じか。


 多分リンさんが大人しいから僕と縁故を作れないと考えて、ルーク君も魔法学校に入れと言われたんじゃないかな。

 僕が身分のことを気にするなら、この人選は完全にアウト。でも僕はそこまで言葉遣いを気にしないから、セーフ。それを大人が分かってやっているのかどうかだね。


「僕はリーバンス子爵家の家臣だけど、それでいいのですか?」

「リーバンス子爵家の娘の許嫁なんだろ? 十分じゃないかよ」

 それもそうか。オリビアちゃんと結婚したら、リーバンス子爵家の一門衆に名を連ねることになるもんね。


「そんでだ、てきとーに友達つき合いをたのむわ。俺はどーでもいいが、リンは親に怒られ慣れてねーからよ」

「ルーク君は面白い人ですね。普通はそういう裏事情をぶっちゃけないと思いますよ」

「裏でぐちゃぐちゃするのがきれーなんだよ、俺は」

 このような裏表がない人は嫌いじゃない。粗野なのはマイナス要素だけど、拒絶するほどのものじゃないしね。


「僕でよければ友達としてこれからお付き合いをお願いします」

「そうか。良かったな、リン」

「はい。こちらの都合を一方的に押しつけてしまい、ごめんなさい」

 リンさんが頭を下げる。男爵令嬢に頭を下げられるのは生きた心地がしないから、慌てて頭を上げてもらった。


「お二人は実技の選択科目を決めているの?」

「俺は製作、刻印、魔術だな」

 へー、もう決めているんだ。意外だな。


「私は魔法薬学、魔術、魔法にするつもりです」

 リンさんは恥ずかしそうにはにかんだ。オリビアちゃんにリンさんの十分の一でも恥じらいがあるといいかもしれないね。


「ランドーは何にするんだ?」

「僕は製作は決めているんだけど、あと二つを迷っているかな」

 製作は自由選択教科だから、あと二つは刻印、魔法薬学、魔術から選ばなければいけない。

 刻印と魔術は今さら感があるけど、もっと深堀してもいいと思っている。

 魔法薬学はこれまで一度も試したことはないから、どうしようか迷う。


 創造神の加護を使えるようになってからは、他の神々の加護も使えるようになった。あくまでも使えるようになったという程度で、一流になるには努力をしないといけないから、それなりの時間がかかるんだ。

 このようにあれもこれもというわけにはいかないという事情がある。それでも魔法薬学はちょっと興味がある。


「三日あるんだ。それまでに決めればいいさ」

「うん。後悔しないようによく考えて決めたほうがいいわ」

「そうだね」

 三人で教科について情報交換していると、ルークが話を変えた。


「サークルはどーすんだ? 入るのか?」

「興味はあるかな? 二人はどうするの?」

「俺は鍛冶サークルに入ろうと思っているぜ」

「私はポーションサークルに入ろうかと……」

「二人はしっかり事前調査してるんだね。僕はどんなサークルがあるかさえ知らないから、これからだよ」

「サークルは入らなくてもいいからな、それにいつでも入れるぜ」

「ですから今すぐ決めなければいけないということはないです」

 二人は三日前に寄宿舎に入ったらしい。その間に色々な情報を集めたんだとか。そういう考えはなかったから、感心した。

 特にヤンキーのようなルーク君に、そういった細やかなことができるとは思ってもいなかったよ。失礼しました。


 校内ではサークルの勧誘が行われていた。以前ニュースなどで見た、入学式後の大学のような熱気だよ。

 いくつか気になるサークルのチラシをもらい、夕方近くまで校内を見て回ったからかなり疲れた。


 夕方の寄宿舎でもルーク君は一緒だ。そこでロビンと合流して、二人を引き合わせた。

「俺はこんなんだから、丁寧な言葉遣いはできねー。先に謝っておくぜ」

「僕は平民ですから、気にしないでください」

 初対面の挨拶も終わったので、魔法使い科について聞いてみた。


「僕のクラスも魔道具科とあまり変わらない感じですね」

 僕のクラスには上級貴族が二人、下級貴族が五人、士族が九人、平民が十四人の合計三十人が在籍している。

 魔法使い科のほうもたいして変わらない感じだと、ロビンが言う。


 レベル三の加護を持っている生徒がいるかはまだ分からないけど、レベル二の加護持ちはいるだろう。それが貴族だと面倒だから、平民や士族あたりだといいなーっと思っている。


「実技は何にするんだ?」

「魔法と戦略戦術、あとは体術にするつもりです」

 ルークの質問にロビンは丁寧に答える。

 魔法使い科の筆記は魔道具科と同じだけど、実技は僕たちと違っていた。共通しているのは魔法くらいで、基本的には戦闘に関する教科ばかりだ。

 ロビンはその中から魔法、戦略戦術、体術の三つを選択したことから、将来は子爵家の魔法士として部隊指揮官の座を狙っているようだね。

 魔法士は騎士と同列の士族として扱われ、兵士たちを指揮する立場になる。そのためには戦略戦術という教科は役に立つし、戦場に出るなら体術も役にたつだろう。


 二人との夕食後は、自室で実技について考えた。

 もっと強力な魔剣を創ろうと思うと、やっぱり刻印と魔術の知識と練度を高めるべきだ。

 それに対して魔法薬学で作るポーションは、人々の命を繋ぐ切り札になる。


「よく考えろ、ランドー……」

 ベッドに横になりながらどうするか考えたけど、ループのように考えが巡ってなかなか考えがまとまらない。

 こういう時、オリビアちゃんならなんて言うかな? ランドーがやりたいことをすればいいのよ! そんな声が聞こえて来た。

 そのやりたいことがありすぎるから、困っているんだけどね。


 

ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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