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3章・学校入学編_028_自業自得

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

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 3章・学校入学編_028_自業自得

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「ねえ、オバサン。そこをどいてくれないかな」

「お、オバサンッ!?」

 オリビアちゃんは辛辣だな……ん、この光景どこかで?

 思い出せ、何を忘れているんだ……。

 この三十過ぎのオバサンは、性格が悪そうな顔をしている。体形は胸がかなり大きいな……思い出した! この人は―――。

「魔獣の肉を買い叩こうとしたせこいオバサンだ!」

「誰なの、このオバサン」

「四年前だったか、イノシシの魔獣の肉が配られた時さ、僕が持っていた肉を銀貨一枚で譲れって言ったオバサンだよ」

「……あー、あのせこいオバサンかぁ~。性格悪そうな顔はなんとなく覚えているわ。あの時のオバサンかー」

「うるさいよっ! オバサン、オバサンって連呼しやがって! あたしはオバサンじゃない! 少し年齢が高いだけなんだよ!」

「少し年齢が高い女性を、世間ではオバサンと言うんだよ。オバサン」

「オリビアちゃん。それを言ったら可哀想だよ。気にしているみたいだから、オバサン、オバサンと言わないであげようよ。ね、年をとったお姉さん」

「年をとったは余計なんだよ! このガキが!」

「うわっ!?」

 年をとったお姉さんが杖で殴りかかって来た。危なく当たるところだったよ。


「ちょっと止めてくださいよ」

「うるさいね、クソガキが」

 僕のことはクソガキって言うの? それならオブラートに包まずに、僕もオバサンって言うからね。もう言ってるけど。


 ブンブンッと振り回される杖を躱しつつ、オリビアちゃんを窺う。

 オリビアちゃんのほうは、もう一人のオバサンが剣を向けていた。


「ねぇ、貴方たちは何がしたいの? こんなことしたら、犯罪者として追われることになるよ」

「はんっ! こんな森の中でガキを二人殺したって、誰も見てなんかいないさ」

「僕たちを殺そうって言うの?」

 なんでさ。肉を売らなかったことが、そんなに気に入らないの? それともオリビアちゃんがオバサンと連呼したのがいけなかった?


「ちょこまかとすばしっこいね」

「子供ですから、お年寄りよりは素早く動けますよ」

「誰が年寄りだ!?」

 冗談でも僕たちを殺そうと言ったんだから、十倍とは言わないけど倍返しくらいの口撃くらいいいじゃないか。


「オリビアちゃん。どうする?」

「ぶっ飛ばせばいいんじゃない?」

「それじゃあ無力化ということで」

「無力化だけ? 殺さないの?」

「そそ。殺さないでね」

 オリビアちゃんは分かったと言い、剣士を見た。


「貴方、命拾いしたわね」

「ガキがほざくな!」

 剣士がオリビアちゃんに飛びかかる。オリビアちゃんはさっと避けて足を引っかけた。

 剣士は地面に顔面から突っ込んだ。痛そう……。


「死ね! ファイアボール!」

 火の球が僕に迫るけど、ひょいっと躱す。


「なんで躱すんだよ!」

「え、普通躱しますよね?」

 当たったら熱いじゃんね。


「これなら、どうだい! ロックミサイル!」

 ピシュンッと拳大の石が飛んで来る。これに当たったら痛そうだけど、これはチャンス!

 僕は避けずにロックミサイルを受けた。石は僕の革鎧―――フェンリルに触れた瞬間、崩壊して消えてなくなった。フェンリルの魔法吸収の効果がちゃんと発動したようで良かった。

 痛みはまったく感じず、ロックミサイルの魔力を少し吸収した感覚があった。これならファイアボールでも大丈夫だと思う。


「なななな、なんで!?」

「魔法攻撃した以上、情状酌量はなしね。マナボール」

 無色透明の魔力の塊が魔法使いの腹部に命中。オバサンは体をくの字にして吹き飛び、木に当たって気絶した。


「こっちは終わったけど……あー、うん。分かっていたよ」

 オリビアちゃんは、倒れている剣士の背中を踏みつけて高笑いしていた。ボコボコにしただけじゃ、気が済まなかったようだね。


「怪我はない?」

「あると思う?」

「そうか。じゃあ、まだ大丈夫だね」

「全然いけるわよ。さあ、第二戦を始めましょうか」

 オリビアちゃんの言葉に頷いた僕は、エアロスラッシュを放った。木に命中し、その直径百五十センチメートルくらいの大木がずり落ちる。

 木の向こう側に隠れていた女性が飛びのいて、木の下敷きになるのを回避した。


「ねえ、オバサンもこの二人の仲間でしょ」

「そ、そんなことないよ。私は物音がしたから見に来ただけだから!」

 必至に言いわけしているけど、革鎧のこの三十代女性ハンターが二人と一緒に行動していたのは、フウコからの念で分かっている。それにオリビアちゃんなら、気配で三人が一緒に行動していたのを掴んでいたと思うよ。


「言いわけはいいよ。三人が一緒に行動していたのは知っているんだから」

「くっ……」

 逃げようか戦おうか迷っているようだね。


「私は止めろと言ったんだ!」

 今度は二人を止めたアピールか。


「ふーん……信じてあげてもいいけど、それならこの二人を村に運ぶのを手伝ってよ」

「……分かった」

 ソリを創造し、その上に気絶している二人を載せてもらう。そのソリを牽くのは仲間だった女性ハンターだ。


「お姉さん、名前は?」

「く、クラリス」

「ククラリスさんね」

「クラリスだ!」

 分かって言ったんですよ。そんなにむきにならなくてもいいじゃない。


「この二人は?」

「魔法使いのほうがルーニー、戦士のほうがビシャ」

 本名かどうかは分からないけど、いつまでもオバサンと呼ぶのもあれだしね。


「はぁはぁ……少しは手伝ってくれよ」

「ハンターなのに体力ないわね」

「私は斥候なんだ。ビシャのような力も体力もないのよ」

 そういうものなのか? でも手伝わないよ。僕たちが牽いている間に逃げられそうだもん。


 村が見えてきた。小川を渡る際に、気絶している二人に水がかかって起きた。

 ギャーギャーうるさいのでもう一回寝かしつけた。


「あんた、容赦ないね……」

 杖で二人をバチコーンッとしたら、クラリスさんが引いていた。


「僕だとこれくらいで済みますけど、オリビアちゃんがやったら骨の二、三本は折れても不思議はないですからね」

「……そういうものなのかい」

 そんなわけないじゃないですか。オリビアちゃんがあの剣士を無力化した際に、骨は折れてませんからね。そのくらいの注意力がないと斥候なんてできないんじゃないですか?


 村に入ったところで、クラリスさんが叫んだ。

「助けてくれー!」

 どうした? 気でも触れたのかな?


 村人が集まってきて、さらに兵士さんたちもやって来た。

「あいつらがいきなり襲ってきたんだ! 助けてくれよ!」

 なるほど、僕たちを悪者に仕立てようという思惑なんだね。でもさ……それ、オリビアちゃん相手にやると悪手だよ。


 兵士さんがクラリスを取り押さえる。

「な、何をするんだよ!? 捕まえるのはあいつらだよ!」

「黙れ! あの方はこの村を治めておられるリーバンス子爵様の御令嬢、オリビア様であるぞ!」

 黄門様の印籠が出て来ないのが残念。今度リーバンス家の紋章入りの印籠を創って、オリビアちゃんにプレゼントしようかな。でも印籠ってお供の人が持っているんだよね? そうなると……僕!? 僕が持つの!? ひかえおろー!


 クラリス、ルーニー、ビシャの三人は領主の娘であるオリビアちゃん殺害未遂犯として取り調べられた。

 クラリスは何もしてないと主張したけど、ルーニーとビシャがクラリスの命令で襲ったと証言したから主犯格と目された。でも絶対に違うと言ったから、隷属の首輪を使うことになった。僕がラーベン子爵から回収したものではなく、領主様が元々持っていたものだ。隷属の首輪を使って正直に話せと命じるだけでいい。正直に話さなければ、電撃によって酷い目にあう。最悪は死に至るほどの電撃が流れるのだ。

 隷属の首輪は犯罪者の取り調べでは非常に役に立つ魔道具で、これによって冤罪がなくなる一面があるんだね。


 取り調べで明らかになったのは……主犯はクラリスで、ルーニーとビシャは手下のようなものだった。僕たちを襲ったのも、クラリスの命令だと判明した。オリビアちゃんの装備を見て、金になると思ったらしい。アマテラスは派手だからね……。

 あと三人は森の中で男性ハンターたちを誘って、寝首をかいて獲物を横取りしていたらしい。なかなか酷いことをしているよね。

 判決は要人暗殺未遂、他に殺人が数件で重犯罪者として戦場で使い潰されることになった。帝国との戦いで戦功を立てたら、恩赦があるかもしれない。それ以前に死ぬ可能性が高い危険な場所に投入されるみたいだけど。


 

ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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