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3章・学校入学編_024_リューベニックにて

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

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 3章・学校入学編_024_リューベニックにて

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 十一月になると、僕とオリビアちゃんはリューベニックへと向かった。

 オリビアちゃんは騎士学校、僕は魔法学校の入学試験を受けるためだね。

 試験は筆記と実技があり、筆記は国語、算術、魔法史、王国史の四教科になる。僕は順調に筆記試験を終えて、午後から実技試験を受けた。

「まあ、不合格はないかな……」

 そんな手応えを感じる入試は無事に終わった。


 オリビアちゃんと合流するため、リューベニックの町中を歩く。リベナ村と違って人通りが多い。

 試験に合格したら、一月からこのリューベニックで暮らすことになる。そう考えるとついキョロキョロと街中を歩いてしまう。完全におのぼりさんだね。


 待ち合わせ場所の、お洒落―――と思われるカフェに入る。カフェというよりは映えを意識した派手な流行りものを売る店で、コーヒーを頼んだ。

 メニューを見て驚いたけど、このコーヒーは一杯銀貨二十枚もするんだよ。目が飛び出るかと思ったよ。

 銀貨一枚を日本円に換算すると、二千円くらい。つまり、このコーヒーは四万円もすることになる。

 どうりで店員が変な目で僕を見ていたわけだ。これだけの高級店に入るのは貴族か豪商の子弟くらいなもので、僕のような農民に毛が生えたような服装の子供が入るような店じゃないんだと思う。

 実際、他の客は皆高そうな服を着ている。


「なんだ、なんだ。臭いぞ?」

 僕がコーヒーの香りを楽しんでいたら、横を通った僕と同じくらいの年齢の少年が臭いと言い出した。別に臭いものはないと思う。コーヒーの香りが苦手な子供もいるから、この子もそういうものだと思って再びコーヒーの香りを楽しむ。

 僕は前世でもコーヒー好きだったから、コーラを創造できるならコーヒーもと思ってやってみたらできた。おかげで最近は毎日コーヒーを飲んでいる。

 この店のコーヒーは前世の記憶を持つ僕としては今イチだけど、コーヒーがあることが嬉しく思える出会いだね。


「なんでこんなところに農民がいるんだ!?」

 農民というと僕のことだね。その声の主は先ほどの少年だった。

 まさか先程の臭いという言葉は、僕に向けられたものなのかな? これが異世界あるあるの絡みというやつなのかな?


「僕の―――」

「ランドー」

 僕のことかなと聞こうとしたら、名前が呼ばれた。

 振り返るとオリビアちゃんとシャナン姉さんが店の中に入って来た。


「あ、オリビアちゃん。姉さん」

 僕は二人の姿を見て笑みを浮かべた。


「待った?」

「ちょっと前に来たところで、先にコーヒーをいただいていたよ」

「そうなんだ。店員さん、コーヒー二つ追加ね」

 オリビアちゃんは僕の向かい側の席にサッと座った。姉さんは僕の横。

 何か忘れている気がするけど、僕も席に座り直した。


「しかし待ち合わせをここにして正解だったわね。派手な外観だから絶対に間違えないわ、ここ」

 それで待ち合わせをこの店にしたんだね。落ちつけそうにない店だから、趣味悪いなぁなんて思っていたんだよ。派手さで決めたなら、納得だ。


「おい、お前!」

「ん?」

 僕の肩が掴まれた。

 振り返ると、そこに先ほどの少年が立っていた。茶髪茶目のちょっとぽっちゃりした少年だ。そういえば、彼に絡まれていたんだった。


「なんですか?」

「なんですかじゃないんだよ! お前のような農民がいると目障りだ。さっさと店から出ていけ」

「あ……なるほど……」

 店の人はオドオドし、他の客は少年の意見に賛同するという目で僕たちを見ていた。

 僕のような農民がいるべき場所ではない。そうかもしれない。ここはさっさと出て行くのが吉だね。


「ちょっと、あんた何? ここはあんたの店なの?」

「なんだお前は!?」

「なんだじゃないわよ。このバカ。この店の入り口に農民や平民は入るなって書いてないじゃない。だから彼が入っても文句を言われる筋合いはないわ。それよりも人が楽しくコーヒーを飲んでいるのに、バカのせいで気分が悪いじゃない。出て行くのはあんたよ、このバカ!」

 見事にバカを連呼したオリビアちゃんに、少年は最初ポカーン、そして怒りがこみ上げて来て顔が真っ赤に、次は爆発!


「貴様! よくも僕に向かってバカ、バカと何度も言ってくれたな!?」

「バカにバカと言うのは当たり前じゃない、このバカ」

「またバカと言った! バカと言った奴がバカなんだぞ!」

 うん、子供の喧嘩だ。


「どーでもいいから、さっさと消えろ、バカ」

「僕をアイベック男爵家四男、バラス=アイベックと知って言っているんだろうな!」

「知るわけないでしょ、バカは休み休み言いなさいよ。バーカ」

 オリビアちゃんは完全に煽っているよ。これ、どうやって収拾つけるのかな……? 彼、かなり頭に来てるよ、これ。


「この野郎!」

 え、なんで僕の胸倉を掴むの!?

 絡まれたのは僕だけど、僕は何も煽ってないよ?


「手を出したわね! せいっ!」

「うぎゃー……」

 刹那の速度で、オリビアちゃんの拳がバラス様の顔面をとらえた……。マジかー……流血沙汰だよ、これ。


「「バラス様!」」

 後ろに控えていた護衛の一人がバラス様を抱き起こし、もう一人が剣をオリビアちゃんに向けた。


「おやめなさい! こんなところで剣を抜くとは何事ですか!?」

 シャナン姉さんの一喝。メイド服のシャナン姉さんでは迫力に欠けるようで、護衛はなおも剣を向ける。


「こちらの方はリーバンス子爵家のオリビア=リーバンス様です。貴方たちはリーバンス家を敵に回すつもりですか」

 シャナン姉さん! 話を大きくしてはいけません!


「なっ、リーバンス子爵……」

「そちらの少年はオリビア様の婚約者。いわばリーバンス子爵家の一門衆ですよ。その少年を侮辱し、さらには手を出しました。殴られても文句は言えませんよ。その上で、貴方たちはオリビア様に剣を向けた。これがどういうことか分かっているのでしょうね」

 先程の一喝より、無表情で低い声のシャナン姉さんの理路整然とした言葉のほうが怖いんですけど。


 護衛の人の剣先がガタガタと震えだす。

「剣を収めなさい。そして詫びて立ち去るのです」

「………」

 主人を殴られたのに詫びろとか、貴族の世界は理不尽だな……。

 改めて思うと、僕はそんな貴族の子弟が集まる魔法学校でやっていけるのだろうか……?


 バラス様を介抱していたほうの護衛が剣を収めるように言い、その人が深々と頭を下げてバラス様を抱きかかえて出て行った。

 今のこの国は隣国の帝国と数十年に渡って戦争をしていることから爵位より戦力が重要視される。戦力がある家は、それこそ男爵でも伯爵や侯爵に頭を下げさせることができる。

 貴族の権威というものはあっても、それは力を背景にしたものでなければいけない。力のある貴族が下剋上のようなことをしても、文句を言われることは少ない。あくまでも少ないだけらしいけど……。

 領主様は先の戦いで王国中に力を知らしめた。そのおかげでかなり恐れられている。それを否応なく思い知らされた気がした。


 その後のコーヒーはとても不味く感じた。店のせいではないと思うけど、後味が悪い。


「ランドーもいい加減、服装には気をつけなさい。容姿一つで絡まれるんだからね」

「そうだね。気をつけるよ」


 合格発表は五日後。

 その間にリューベニックに住んでいるマルファ姉さんとアベル兄さんと会った。

 マルファ姉さんは旦那さんが小さな商店を開いていて、従業員も少し使っているんだって。幸せそうで良かった。

 アベル兄さんは元々大きかったけど、もっと大きくなっていた。十二歳なのにもう百七十センチメートルはあると思う。僕なんかまだオリビアちゃんに勝てないのに……。

 何はともあれ、二人とも元気そうで安心だ。


 余った時間でオリビアちゃんの装備を創るための素材探しをした。婚約するんだから、装備をプレゼントしてほしいと言うのだ。

 普通はドレスや宝石を贈るような……うん、考えるのはよそう。不毛だ。

 リューベニックにある鍛冶工房や鉱石を扱う商店などを回って、いくつか面白そうなものを手に入れた。村に帰ったら、早速試してみようと思う。


 オリビアちゃんは騎士学校に無事合格した。子爵家のご息女で剣神の加護レベル三を持っているオリビアちゃんを不合格にすることはさすがにないと思っていたけど、その通りになった。

 僕も魔法学校に合格し、リベナ村への帰途についた。


 

ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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