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2章・七歳編_017_奴隷

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

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 2章・七歳編_017_奴隷

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「さて、そっちのアベルだったか? 斧を捨てな。さもないと、村人たちを皆殺しにするぜ」

 アベル兄さんは迷ったようだけど、斧を捨てた。


「子供相手に随分なマネをしますね」

「お前たち、レベル二の加護を持っているだろ。ガキでもレベル二は危険だ。だから搦め手を使わせてもらったぜ」

 加護のことをよく分かっているようだ。やっぱり厄介な人だったか。


「兄さん、逃げるよ」

 僕はアベル兄さんにだけ聞こえるような小声で逃げると言った。

「逃げるのかよ……」

 苦々しい表情をするアベル兄さんも、状況が悪いと理解している。


「おいおい、何を喋っているんだ? まさか逃げようなんて思ってないだろうな?」

「「………」」

 僕たちが考えることなんてお見通しだというような表情がムカつく。


「言っておくが、逃げたら人質を殺すからな。反抗しても殺す。要はお前たちは俺に捕まるしかないわけだ」

「僕たちには選択肢がないのですか?」

「ないぞ」

 子供だと思って舐めてくれないんですね。困ったな……。


「おい、これを首につけろ。そっちのランドーとかいうガキのほうだ」

 何かが放り投げられ、僕の前に落ちた。

 首輪のようなもの……。まさかこれは奴隷の首輪? ラノベでよく出てきた異世界のマストアイテムなのかな?


「魔法使いは厄介だからな。その隷属の首輪をしてもらうぜ。それをつけたら、俺の命令に逆らえなくなるからな。ははは」

 ラーベン子爵の高笑いが耳に刺さるように、かなり不快だ。しかも殴り飛ばしてやりたいくらいムカつく顔をしている。

 しかしやっぱり奴隷にするんだね。奴隷の首輪ではなく隷属の首輪だったけど、その差はこの際どうでもいい。


「子供を奴隷にするなんて、正気ですか?」

「俺は子供でも油断しないんだよ。さあ、早くつけろよ。なんなら村人を何人か殺してもいいんだぜ」

「ランドー。つけるな。つけたらいけないことくらい、バカな俺でも分かる」

「早くつけろよ! 本当に村人を殺すぞ!」

 あの目は本気なんだろう。村人の一人や二人を殺すなんてなんでもないことなんだと言っている目だ。嫌だなー、ああいう目をする人。僕は嫌いだ。


 僕は隷属の首輪を拾い上げた。鈍い色の金属性の首輪で、内側に隷属の魔術紋が刻印されている。

「おいランドー」

「アベルは黙っていろよ」

「うっせーんだよ、オッサン」

「元気なガキは嫌いだ。強いガキもな」

「ちっ」


 隷属の首輪を見つめる。

 村人を見る。

 ……シャナン姉さん。捕まっていたんだね。


「はぁ……。これも運命か」

 僕は隷属の首輪を首にはめた。


「あーっははははははははは! はめたな! そこに跪け!」

 跪く。

「おい、ランドー!? なんでつけるんだよ!?」

「アベル兄さん。あれを……」

 僕はシャナン姉さんを指差した。

「なっ!? ……くっ」

 悔しそうに唇を噛み、ラーベン子爵を睨むアベル兄さん。


「おい、そのアベルっていうガキを押さえつけろ」

「「「はっ」」」

 三人でアベル兄さんを押さえつける。シャナン姉さんを人質にされているから、兄さんも抵抗はしなかった。


「しかし、よくもまぁやってくれたよな」

 ラーベン子爵はゆっくりと近づいて来る。僕たちが反撃できない余裕を出している。


「ガキ二人に好き勝手されたら、俺の立場はないじゃないか」

 僕の前に立ち止まって、僕を蹴り上げた。

 小さな体の僕は、それによって吹き飛んで地面を転がった。痛い……多分痛いんだと思うけど、四桁の補正値が僕を守ってくれている。


「てめぇ、ランドーに何しやがる!」

「黙れよ、クソガキが!」

「ぐあっ」

 三人がかりで地面に押さえつけられているアベル兄さんにも、ラーベン子爵は蹴りを入れている。

 これが軍人のやることか。これが大人のやることか。こいつらは人間の顔を被った悪魔だ。


 ひとしきりアベル兄さんを蹴ったラーベン子爵は、今度は僕を蹴りまくった。

 攻撃できないのをいいことに、やりたい放題なラーベン子爵に殺意を覚える。


「あーっはははは、あーっはははは。お前を一生使い続けてやるからな。ご主人様にご挨拶しろよ、ランドー」

「ご主人様……これからよろしくお願いします……」

 屈辱的だ。こんな屈辱を味わうなんて、前世を通じて初めてだ。


「それでいいんだよ、ランドー。あははは」

 ラーベン子爵は僕の頭を踏みつけながら高笑いを続けた。




 僕とアベル兄さんは檻の馬車の中に閉じ込められた。兄さんは金属製の拘束具をつけられている。

 隷属の首輪はかなり高額なアイテムのようで、僕以外でつけている人はいない。

 村人たちは歩かされるようだ。皆が縄で数珠繋されている。

 シャナン姉さんも繋がれている。でも子供は見当たらない。子供たちはどうなったのだろうか……。嫌な考えが頭をよぎる。


 僕たちはどこかへ移送されるようだ。

 西に向かっているから、帝国方面なのは間違いない。

 なんとかシャナン姉さんを助け出さないと……。


 

ご愛読ありがとうございます。

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[一言] 先まで読んで、まぁ作戦だと言うのはわかった。というか次話で回収してるから良心的。 でも今話はいきなり知能が無くなったように見えるから、読者騙す方向でドキドキさせるよりも作戦がある事を仄めかす…
[気になる点] 流石にこの流れはないなー まぁ読んでる途中なのでなんか作戦なのだろうと思う事にして続き読むけど、連載リアルタイムで読んでる場合切るきっかけになる話の作りだよ。 わたしゃてっきり創造神の…
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