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2章・七歳編_013_領主の依頼

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

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 2章・七歳編_013_領主の依頼

 ■■■■■■■■■■


 オリビアちゃんが刀を振り回している。僕は椅子に座って頭を悩ませている。

「創造―――剣!」


 僕は領主様の命令で剣を創っているんだ。一応お願いらしいけど、領主様のお願いイコール命令だよね。

 拒否なんてできないですよ、僕小市民ですから。


 森から帰った翌日に領主様がやって来て、その翌日には軟禁解除。領主様のご威光には、さすがの母さんでも逆らえないようですね。

 それから三日。僕は領主様の剣の創造を試行錯誤している。

 ちなみに領主様からの謝礼は、母さんが僕の将来のためにとっておくと言っていた。お年玉を取られた気分だ。前世では僕のお年玉が、親戚の子供のお年玉になっていた。この世界でも同じことが起きる気がヒシヒシとする。

 父さんの酒の量が増えたら要注意だと思う。さすがに酒になったと言われたら怒るからね。


 領主様の依頼は家宝になるような剣を創れというもの。そんなの七歳の僕に創れるわけないと思いつつ剣を創造するけど、駄剣しかできない。


 鉄くずを入れる樽の中に、駄剣を放り込む。この樽、いっぱいになる前に空になるんだ。この二年数カ月、それが続いている。

 最近気づいたけど、鉄くずは父さんが鍛冶工房に売りに行っていた。その日は父さんが酒を買って来るんだ。無関係ではないと思う。


 僕にとってはただの鉄屑でしかないから、それを父さんが有効利用しているだけ。特に咎める必要性を感じないから、お酒に変わっても文句はない。だって僕が何もしなくてもゴミがなくなるんだから、ありがたいよね。鉄くずがいっぱい入った樽は、結構重いんだよね~。


 さて刀の時もかなり苦労したけど、それはコンセプトとイメージが明確になっていないのがいけないと思うんだ。

 つまり剣のコンセプトが決まれば、あとはそれを目指してイメージを固めるだけなんだ。

 分かっているならやれと思うかもだけど、まずコンセプトが決まらないんだよね。


「家宝にするくらいだから、やっぱり魔剣だよな……」

「魔剣!? カッコイイね、魔剣! 私も妖刀がほしいわ!」

「いや、妖刀って。呪われるよ、それ」

「うひひひ。妖刀村雨」

 僕の話を聞いてないんですけど、この美少女。


 それよりも魔剣のコンセプトを決めよう。

 剣は刀のように斬るというより、圧し切る感じなんだとか。それだけ丈夫なものじゃなければいけないし、切れなければいけない。

 剣も刀と同じく鍛造なのだろうか? 丈夫で切れるとなれば鍛造をイメージしなければいけないけど、焼き入れとかどうすればいいのだろうか?

 刀はある程度の製作工程を知っていたけど、剣の造り方は知らないんだよね。


「ねえ、オリビアちゃん」

「何?」

 オリビアちゃんは刀を振りつつ返事をした。


「剣を造る行程を見たいんだけど、鍛冶師に知り合いいない?」

「知り合いはいないわ。それに知り合いがいても、作業風景は見せてもらえないと思うよ。鍛冶師は気難しい人が多いらしいから」

「やっぱそうだよねー」

「パパの剣は、別に刀でもいいんじゃないの? 私の刀を太く長くしてやれば創れないかな?」

「そういう考え方もあるか。一度やってみるかな」

 オリビアちゃんの刀の大型化だけなら、サイズを明確にすれば創造できると思う。


「ランドー。広場で魔獣の肉が配られるらしいから、もらいに行っておくれー」

「はーい」

 母さんの命令は絶対なのです。僕は椅子から立ち上がって右手を額の横に当て、敬礼しながら元気よく返事した。この敬礼はこの世界では使われてないんだけどね。


 オリビアちゃんが倒したイノシシの魔獣の肉をもらいに、広場へ向かう。

 広場の一角に列ができている。肉を受け取る人の列っぽい。


 広場の反対側に馬車が入ってきて停まる。中から武装した人が下りて来て、大荷物を下している。

「今年もハンターの季節になったんだね」

 オリビアちゃんの言葉に僕は頷く。


 ハンターというのは魔獣狩りを職業にする人たちのことなんだ。彼ら彼女らは渡り鳥のように毎年この時期に北からやって来る。

 これから北国は雪で閉ざされるから、雪が降っても積もることが珍しいこの地域へと移動して来て魔獣を狩るんだ。


 この村は魔獣が住む森に近いから拠点にするには丁度いいわけだね。それなら常日頃からこの村を拠点に活動すればいいと思うかもしれないけど、北国のほうが魔獣が多くて買い取り額も高いらしいんだ。


 北国の魔獣は人が住む場所に現れるらしく、その地域の貴族は被害を抑えるために買い取り額を上げているんだとか。

 ここら辺ではそこまで魔獣の被害があるわけじゃないから、常識の範囲の買取額なんだとか。常識というのがよく分からないけど、この辺りの買い取り額は少ないということだね。


 兵士の奥さんたちが肉を配っているので、僕とオリビアちゃんはその列に並んだ。

 僕の番になって、ドーンと大きな肉の塊が出て来た。他の人よりも大きくないですか?


「ランドー君のおかげで肉を食べられるのを、皆が感謝しているわ。これはランドー君の家の分だから、落とさずに持って帰ってね」

 僕が村人に分けてほしいと、領主様に言ったことが知られているみたい。断っても無駄だと思うから、ありがたくいただいておこう。


「ありがとうございます。いただいていきますね」

 子供らしい爽やかな笑みで返事。可愛いわねと頭を撫でられてしまった。えへへへ。


「あらボク、いいものを持ってるわね。それ、お姉さんに売ってもらえないかな?」

 僕の前に現れたのは、オッパイだった。じゃなくて、大きな胸の三十前くらいの女性ハンターだ。オッパイはともかく女性は美人の部類なんだと思うけど、性格がキツいというか悪そうな顔をしている。


 女性は僕に視線を合わせるためにかがんでいるんだけど、胸が零れ落ちそうな服を着ている。僕が十代の少年ならオッパイをガン見するところだけど、さすがに七歳では欲情しないかな。だって僕の母親くらいの年齢だよ? ちょっと無理かな。もっとも母さんはもう少し年とっているけどね。

 鎧ではなく胸元を強調する服の上にローブを羽織っているところを見ると、彼女は魔法使い系の加護持ちのハンターのようだ。


「いえ、これは家に持って帰るので」

 持ち帰らないと母さんに怒られるし。


「まあ、お使い? 偉いわねぇ~。お利口な君には、特別に銀貨一枚で買ってあげるわ」

 この人、グイグイ来るね。


 この国の通貨は銅貨、銀貨、金貨、大金貨の四種類があって、銅貨百枚で銀貨一枚、銀貨百枚で金貨一枚、金貨三十枚で大金貨一枚の価値がある。

 銅貨十枚で僕の顔くらいのパンが買えるから、銀貨一枚はパン十個分になるね。

 僕は買い物をしたことないけど、大きなパンが二百円くらいだと仮定すると、銅貨一枚は二十円くらいの価値かな。銀貨一枚だと二千円くらいになる計算。

 僕は約一キロの肉を持っているから、彼女は百グラムを二百円くらいで買うと言っていることになる。


「銀貨一枚よ。欲しいでしょ?」

「要りません」

 母さんに殺されちゃうし。


「しょうがないわね。それじゃあ、銀貨二枚ね。これ以上は無理よ」

「オバサンしつこいわよ。売らないと言っているんだから諦めなさいよ」

「お、オバサン! ちょっとお子ちゃまは黙ってらっしゃいよ!」

 オリビアちゃんにオバサンと言われて女性はご立腹のようだ。でもお姉さんというには微妙な年齢かな。

 この国の成人は十五歳で、十代で結婚は普通。二十歳を超えると子持ちの人が多いから、三十前のこの女性をオバサンと呼ぶのは一般的のはずなんだ。


「おい、そこ。何をしているんだ」

 兵士が登場。オリビアちゃんを見て、眉をピクリとさせた。


「何もしてないわよ」

「このオバサンが魔獣の肉をたった銀貨二枚で売れって言うのよ。この肉なら銀貨五十枚はするのに、常識ないオバサンよね」

「それは本当か? それは八メートル級の魔獣の肉だ。それだけの量なら銀貨五十枚でも安いというのに、子供を騙して銀貨二枚で手に入れようとしていたのか」

「そそそそんなことないわ! それが魔獣の肉だなんて知らなかったんだから!」

 へー、あの魔獣の肉は一キロくらいで銀貨五十枚もするのか。魔獣の肉は高いと言うけど、本当に高いんだね。


「今日は未遂だし見逃してやる。今後そのようなことをしていたら、容赦なく逮捕するからな」

「分かったわよ!」

 女性ハンターは離れていった。その際に大きな舌打ちをしていた。やっぱり性格悪そうだね。


 

ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


また、『ブックマーク』と『いいね』をよろしくです。


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