99 引っ張ったわりに、あっけなすぎる伏線回収
二頭のドラゴンがお気の毒なことに
少し時間をさかのぼる。
北の城塞、客間。
不良ドラゴン、サーブとフィリップは、レイサの歓待を受け、大満足。
歓待の具体的内容は、15R指定に著しく抵触するので、残念ながら省略。
サキュバスにふさわしい「おもてなし」だったとだけ記しておく。
性的能力が退化した、ドラゴンのオスではあるが、さすがにね……。
「ねえ、お二方。久しく暴れてないんでしょ?
こっちの方は、私が責任を持って解消させて差し上げます。
人族で少しストレスを、発散なさったらいかがです?
ブレスをクオークあたりで二三発放って、すぐ魔王領へお帰りになったら、人族は手出しできません」
レイサは、二人のかわいい「こっち」をからかいながら、そう提案した。
「フィリップ、魔族側には、俺たちがドラゴンだということ、もうバレバレだ。
一丁やるか?」
サーブは、ニヤリと笑って言う。
「魔族は俺たちに手を出さない。
そう誓えるか?」
フィリップは、サーブより用心深い性格だ。レイサにそう念を押した。
「そんなの誓えませんよ。
手を出さないで歓待、できないでしょ?
もちろん、魔族があなた方を、傷つけることはありません」
レイサはかわいい二人の坊やを、本格的にいたぶり始めた。
超刺激的な展開に、もうひと頑張りする気になれたドラゴンたちだった。
総子は腰に佩いた、愛刀の束に手をかける。
「フレア斬!」
日輪刀が鞘走り、逆袈裟斬りの軌道に合わせ、細い光の刃が伸びる。
パチン。総子は日輪刀を納める。
「グヘッ?」
オーガキングの巨体が斜めにずれ、遅れて血がほとばしる。
「お見事!」
ケーンと仲間が拍手。
「いや~、総子のフレア斬、もう完成と言っていいんじゃない?
前は炎の刃だったけど、完全に光だ」
ケーンがそう感想を述べる。炎の刃は、敵を焼き尽くしたが、今はレーザーメスのようだ。攻撃範囲も、倍ほど伸びている。
もはや近接攻撃と言えない。
「えへっ……、ほめられちった」
総子はかわいくはにかむ。
ユリは思う。うざいけど、かわいい!
「キングは片づけたから、帰りましょうか?
後は一般冒険者の仕事です」
キキョウがそう提案する。キキョウとジャンヌの魔法で、ジェネラル二頭は、先に倒している。
雑魚オーガは、泡を食って四散した。
このパーティが本気で狩ったら、いくら魔物の宝庫クオーク近辺でも、冒険者たちの獲物が少なくなる。
「少しお待ちください!」
ブラックが慌てて引き留める。肉は食えたものではないが、オーガの角は金になる。ましてやキングとジェネラル二頭!
いつものように、せっせとブラックは戦利品回収。
「ケーン様!」
キキョウが叫んだ。
「翼竜だな。超強そうな魔族が乗ってる。
総子、卒業試験にうってつけだ。
あの魔族、やっちゃって」
「諾!」
ケーンの言葉に、力強く応えた総子だった。
「ケーン様!」
またキキョウが叫ぶ。
「ドラゴン?
キキョウ、ホワイトに。
一匹は任せた。
ブラック!」
「御意!」
ブラックとホワイトは、ペガサスに変身。ケーンとキキョウは、すかさず騎乗。
「ジャンヌ、あの魔族は、クオークに向かうと思う。
クオークに転移して」
「承知しました」
ジャンヌの返事を聞き、二頭のペガサスは空へ舞い上がった。
不良ドラゴン、サーブとフィリップは、のんびりクオークを目指し飛んでいた。
『フィリップ、思うんだけどさ、女も悪くないよな?』
サーブは、百メートルほど離れた悪友に念話で語りかける。
『竜族の女はおっかない。
人族の女はすぐ壊れちゃう。
女は魔族に限る!』
フィリップは、サーブより、はるかにスケベだ。竜族の女にはとても手は出せなかったが、人族の女は何人も誘拐し、おいしくいただいた。
つい夢中になって、みんな殺しちゃったけど。物理的に。
その点、魔族の女は頑丈にできている。クライマックスで興奮して抱きしめても、つぶしてしまうことはない。
『サキュバス、最高だよな?』
『性欲は底知れないけどな。
頑張ろうぜ!』
『ハハハ、あれ以上の濃いサービスって、どんなだろう?
ちょっぴりおっかなかったりして』
それはサーブの、半ば本音発言だった。サキュバスのレイサは、二頭のドラゴンを、完全にたらしこんでいた。
『おい……。なんだか寒気がするんだけど』
サーブがそうもらした。サーブはフィリップより感知能力に長けている。
『そう言われれば……』
次の瞬間、サーブの首は胴と切り離され、フリップは魔法の光で頭を飛ばされていた。
「キキョウ、魔法の腕、上がったね」
「まだまだです。
素材を回収しましょう」
あっけなく不良ドラゴン討伐は完了した。
ドラゴンを本格的に暴れさせたらケーンとキキョウといえど厄介です。
そこで、空の上だからと油断している二頭に隠形の術で接近し……。
というわけで……。手抜きではありませんよ。
ほんとうですよ。