91 合コン、やろうぜ!
ケーンは、正義を誘い、以前助けた女冒険者たちと合コンを開催します。
「セイギクンの、ちょっといいとこ見てみたい!
イッキ、イッキ、イッキ、イッキ!」
ギルド直営お食事処。ケーンは、例の女冒険者たちと合コンをしつらえた。
正義も、いやいやを装って参加。地球の日本では「アルハラ」そのもののノリで、ケーンは正義をあおる。
「正義、飲みま~~~す!」
ごく、ごく、ごく……。正義はジョッキになみなみと注がれたワインをあおる。
正義は地球年齢で三十歳のとき召喚された。
男子高出身の柔道部、体育大学で全日本選手権個人の部優勝。交番勤務を経て、所轄のマル暴担当部署に配属。つまり、ガチ体育会系のエリート?コースを歩んできた。
コンパに臨んだら、アルハラ・パワハラどんとこいの経験値を積んでいた。
ましてや、彼女いない歴三十年。海千山千の女冒険者たちでも女は女。
つまり、舞い上がって調子に乗り切っていた。
ワイン程度のアルコール度数なら、光の女神が改造した肉体だから、どうってことはない。
「きゃ~! すてき~~~!」
女冒険者たちは、嬌声をあげる。女冒険者たちからしたら、正義は、恩義のあるケーンの連れだ。
それに、最高級ポーションセットを、それぞれ一ダースわいろにもらっている。
正義はお堅すぎて面白みに欠けていたが、しだいに、いい感じにこなれてきた。
つまみ食いならいいかも、とは、女冒険者たちの感想。
「おみごと~~~!
次はポッ〇ーゲーム、やっちゃう?」
「ポ〇キーゲーム?」
女冒険者たちは、好奇心の目をケーンに注ぐ。
正義はごくりと唾を飲み込む。あの禁断のゲームじゃないか!
「じゃ、じゃ~ん!
細くこんがり焼かれたプレッツェルに、チョコを優しくコーティング!
試食してみる?」
ケーンが持つワイングラスには、某有名菓子(もう某と言えないかもしれないが)が。女冒険者たちは一本ずつ抜いて、カリ!
「おいし~~~!
これ、どうするの?」
リーダーが、ケーンに聞く。
「よし、やってみよう。
マリンちゃん、ポッキ〇、の端をくわえて」
ケーンは、一番のお気に入りマリンちゃんを指名。おっぱいは「ワリンちゃん」だけど。
「うん」
おっぱいはワリンちゃんのマリンちゃんは、指示通り端をくわえる。
「同時に食べる!」
ケーンはマリンちゃんの頭を両手で包み……。かり、かり、かり……。
ちょぴり、ちゅっ!
「きゃ~! チューされちゃった!」
マリンちゃんは、両手で頬を包み、白々しく叫ぶ。
正義は思う。ケーン、お前、日本生まれだろ! しかも、憎むべきリア充属性だ!
翌朝。
正義はケーンが取った、最高級の宿で目を覚ました。
ダブルベッドの上では、二人の女冒険者が、まだ眠っている。隣のセミダブルにも二人。
もちろん皆さん裸だ。
正義は、ぼ~っとした頭で思う。どうしてこうなった?
ご想像通り、正義は四人の女冒険者に筆おろしされた。腰が抜けるほど筆おろしされた。筆が折れるのではないかと思うほど、おろされた。
正義は、ケーンが四人のうちの誰かを、お持ち帰りすると想像していた。
正義が、四人にお持ち帰りされた。
抵抗できなかった。
よかった……。死ぬほどよかった。
正義は思う。俺の人生、あいつに変えられちゃったかな?
少なくとも、これだけは身に染みてわかった。女は決して弱い生き物じゃない。
正義は四人の女冒険者と共に、一階へ降りた。
正義が、若干落胆したのは、彼女たちが実にケロッとしていることだった。
ゆうべはあんなに燃えたのに……。
「セイギ、ゆうべは楽しかった。
またな」
リーダーが、正義のほっぺたにちゅっ!
「気が向いたら、エッチしよう」
ちゅっと、おっぱいはワリンちゃんのマリンちゃん。
「あのさ、俺を君たちのパーティに……」
正義がそう言いかけたところ、リーダーは首を振ってこう答えた。
「ケーンが教えてくれた。
あんた、勇者なんだろ?
私たちは勇者と、パーティを組める器じゃない。
じゃ!」
リーダーはメンバーを促し、宿を出て行った。
正義が呆然と見送っていると……、背後から肩を叩かれた。
「正義、ダンジョンへ行くぞ。
クオークは、まだお前には早い」
正義はうなずいた。一週間、こいつのペースに巻き込まれてみるか。
セイギクンは、バリバリの硬派でした。心ならずも。
人間は、一度固まった自分のカラーを、なかなか打ち破れないものです。
たとえば、ヤンキーカラーになじんでしまったら、優等生を装うことはできません。
逆に、優等生は優等生のカラーに行動を縛られます。
正義は、ケーンが不器用な硬派カラーを破ってくれるのでは、と直感したわけです。