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勇者二世嫁探しの旅  作者: 猫又にゃん
85/116

85 妊婦はいたわろう!

※投稿、少し遅くなりました。付き合ってくださっている読者様、ごめんなさい!


ケーン、動きます! お腹が大きくなってきたレミとメイのため。

 午後の自由時間。ケーンは、レミのポーションづくりを見学することにした。


 メイも助手として、きびきびと働いている。二人ともかなりお腹は目立ってきているけど。


 そして、新しく嫁に加わったミーちゃんは、レミの説明を受けながら、乾燥させた薬草を、乳鉢でごりごりとすりつぶしている。

 しっぽをフリフリしながら、一生懸命な様子が微笑ましい。


「ケーンさん、ウチのポーション、評判が広がって。

貴族の方までが、買いに来られるんです。

生産が追い付かないというか……。

どうしましょ?」

 レミが困ったような表情で、相談を投げかけた。


「販売しているのは、中級までだろ?」

 ケーンは、極端に高品質なポーションを、売らないように指示している。そして安売りはせず、市場が混乱しないよう配慮するようにも言っている。


「それはそうなんですが……。

他の薬師のポーションは、品質にばらつきがあるというか……。

要するに、ウチの店なら安心、ということみたいです」

 レミの説明で、なるほど、とケーンは納得する。


 ミレーユに仕込まれたレミは、精密に計測できる機器を使っている。普通の薬師は、「経験と勘」で、分量や精製時間を決めている。

もちろん、人間の「経験と勘」はバカにできないが、それは十分な「経験と勘」が、養われていることが前提だ。

薬品の成分のバランスは、きわめてデリケート。バランスが崩れたら、それこそ薬が毒になってしまう。

それは極端な例だとしても、薬効にむらが生じてしまうのは、この世界で仕方ないことだとされている。


「予約販売、という形をとるか。

金に困ってるわけじゃないし、ギルドに相談してみようか?」


「そうお願いできたら……。長い立ち仕事、ちょっと辛くなってるし」

 レミのお腹のふくれ具合を見たら、さもありなん。


「いっそ販売、ギルドに押し付けちゃう?

レミやメイの出産と育児もある。

うん。そうしよう」

 レミは伯母が老け込まないよう、店を存続させている。


子供が生まれたら、おばちゃんにも張りが生まれるだろう。


店での販売はやめ。ケーンはそう決めた。



 ケーンは再びギルドへ。巨乳受付嬢のカウンターに。


うふ……。谷間にあるほくろがエロっぽい。


「あのさ、レミの店の代理できたんだけど。

ギルドの責任ある立場の人と、話させてもらえる?

レミはお腹が大きくなって、仕事が厳しくなってる。

店での販売は、やめようかと思ってるんだ」


「ちょっとお待ちください!

ギルド長に相談してみます」

 受付嬢は、慌てて二階へ駆けあがった。レミさんの店が閉められたら、冒険者が困っちゃう!



 ギルド二階応接室。ケーンは、頭が真っ白になったおじいちゃんと対面。


「レミさんが店を閉められるというのは、本当ですか?」

 ギルド長のしわは深い。


「本当だよ。

俺の稼ぎで生活は十分賄える。

俺的には、嫁の体が一番。

レミは人がいいから、お客が店に押し寄せたら断れない」


「それは、ドラゴンを、討伐できる方の奥方なら、そうでしょうが……。

なんとかなりませんかな?」

 キルド長のしわは、いっそう深まる。


「無理なく働けるうちは、ポーションづくりを続ける。

でも、出産間近になったら、作れなくなる。

子育てが始まったらとても無理。

だから店売りはやめる。

そこで、だ。

作った分、ギルドで販売してほしい」


「ギルドも、なかなか忙しいですから……」

 ギルド長はしぶる。


「予約販売の形を採ったら?

本数も制限して」

 ケーンは押してみる。


「はあ……。しかし……」

 ギルド長はしぶる。たしかに余計な仕事は増える。


だが、ケーンにとって大切なのは嫁と子供。


「わかった。一週間後、ポーションの製造もやめさせる。

じゃ」

 ケーンは席を立った。


「ちょっとお待ちください!

急にやめられたら、困るのは冒険者たちです!」


「それはわかるよ。

だけどさ、ギルドは冒険者が体を張ってるおかげで、成り立ってる。

その冒険者を守る手立て、全部人任せで済ませるのは、筋が違うと思うよ。

薬師の育成とポーションの品質管理、ギルド側も考えたら?

レミは、あくまで民間人だ」

 ケーンは、この件に関し、一切妥協するつもりはない。


「製造できる範囲で、ギルドに卸してください!

販売はギルドで責任を持ちます!」

 ギルド長は妥協した。


「了解。価格はほどほどにね。

ヨロシク!」

 ケーンは、そう言い残し、ギルドを後にした。



 ケーンは、その足で夜の王宮へ転移。父親との面会を乞う。


 父親のケンイチは、快くケーンを迎えてくれた。


「ずいぶん嫁が増えたそうだな?」

 さっそくからかってくる。


「俺は父ちゃんより甲斐性があるから」

 ケーンは軽く流す。


「まあ、俺はパーティの三人で手いっぱいだったから。

我が息子ながら尊敬してやるよ。

ところで、何か用か?」

 ケーンが用もなく、自分に面会を求めるとは思えない。


「どうせひまなんだろ?

ポーションの製造機作って。

誰でも扱えるような」


「ポーションの製造機?

ああ、妊婦をいたわりたいと?

たしかに、生まれてからも育児は大変だ。

俺に任せろ!」


「さすが父ちゃん!

掟は守るから」

 ケーンの言う「掟」とは、下界に干渉し過ぎないということだ。

母親の夜の女王は、人族にも魔族にも肩入れできない。監視者として、中立を保つ義務がある。

 例外として許されるのは身内のみ。ケーンが身内に対し、思い切りえこひいきしていることを、母親はとがめない。


「あんまり高品質でもまずいな。

見本、持ってきてくれ」


「了解!」

 さてと、工場を準備しなくちゃ。レミの家ではまずい。


レミやメイは、日ごろかまってやれる時間が少ない。夫として、父親として、できるだけのことはしてやりたい。


 ケーンは、母親に会うこともなく下界へ転移した。



「あら? もう帰っちゃったの?

せっかく来たから、サーシャと引き合わせようと思ったんだけど。

この前は、ちょうどバイオレットとガーネットに拉致られてたから」

 夜の女王が、ケーンの帰宅を聞きつけ、夫の部屋へ入ってきた。


 後には、魔王の娘であるサーシャが続いている。サーシャは夜の女王の魔法で、婚姻可能な肉体年齢に変化させられている。


 体内時計を操る夜の女王にとって、朝飯前だ。

 

 ちなみに、バイオレットとガーネットが、サーシャを拉致った目的は、もちろん戦闘訓練のためだ。

 その訓練場は、ケーンが修行を積んだ場所であり、希少部位を確保するためにも重要な場所だ。


「俺にポーション製造機作れってさ。

あいつも大人になったな」

 ケンイチは、感慨深げに言う。世間知らずで、我が道を行くことしか知らなかった息子が、嫁と生まれてくる子供に、心配りができるようになった。


「ああ、レミの出産が近いからか……。

サーシャ、聞いた通りよ。

あなたの夫になるケーンは、超優しいの。

嫁だけには」


「はい! お義母様。

ケーンさんにお会いできる日、本当に楽しみです!」

 超性悪幼女だったサーシャは、夜の女王によって、すっかり洗脳されていた。


 ただし、夜の女王の子宮に監禁されている、彼女の魂の半分は、「ちっ」っと舌打ちしていた。


 弱虫ケンイチの魂と、同居していること自体は、結構気に入っていた。少なくとも、魔王城で暮らしていたころよりずっと。


 どこまでも素直になれない、サーシャの性悪魂だった。


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