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勇者二世嫁探しの旅  作者: 猫又にゃん
84/116

84 黄の森でクエスト見学

ジャスミンが加わったアリスのパーティ。ケーンはクエストの状況を見学します。

アリスをリーダーとするパーティは、彼女の他、槍使いのミントとダン、それに弓使いのナーラで構成されている。


中衛と後衛に偏った、ややいびつなメンバー構成だ。もちろん、高ランクのクエスト以外なら、大きな問題はない。


だが、ヘイトを稼いで、弓使いに余裕を与える、前衛がいた方が望ましい。

戦士のジャスミンが加わることは、その意味でも大きな意義がある。



 一行は黄の森に到着。


「ジャスミンさん、隊列はどうしますか?」

 アリスがそう聞いた。


「あんたがリーダーだろ?

指示に従う」

 ジャスミンはそう答えた。


「でも……」

 アリスは若干とまどう。


「しっかりしろ! ケーンの嫁になれないぞ!」

 ジャスミンは、半笑いで檄を飛ばす。ケーンの女に関する趣味は、実に幅広い。私のようなオバサンや、平凡そのもののイモ娘まで……。


 もっとも、筋は通っている。他の嫁を阻害するような、性悪の女は一人もいない。

 

「はい!

ジャスミンさんが慣れるまで、いつものようにいくよ。

ダンが先頭、次いでミント。

ナーラは私の後で。

ジャスミンさんは、しんがりをお願いします。

慣れてきたら、前衛をお願いすることになると思います」

 アリスは、現状ベストだと思われる指示を与えた。


ジャスミンは、メンバーの特色を知らないし、メンバーも同じ。

 

 見守るケーンは、内心合格点を与えた。


「了解!」

 メンバー全員、力強く答えた。



 黄の森へ突入。アリスのパーティーは、きわめて用心深く進んでいる。

ベテランのジャスミンが、先頭に立つようになったら、もっと効率的に狩りができるだろうが、仕方がないことだとケーンは思う。


長く冒険者をしていたら、自然と魔物の気配に敏感となる。それは教えようとしても、教えられない能力だ。

 冒険者には、戦闘力以外にも経験が、大きくものをいう。


 おっと、少しでかめの気配を、ケーンは感知。ジャスミンもまだ気づいていないようだ。


 ケーンは、教えたいという衝動をぐっと我慢。


メンバーは木々で覆われたけもの道をたどり続けた。


「あっ……」

 ジャスミンが気づいたようだ。さすがベテラン。


「ジャスミン、どうかした?」

 ケーンはとぼけて聞く。振り向いたジャスミンに、パチンとウインク。

 その心は、もちろん何事も経験、ということ。いよいよ危ないとなったら、今日は自分がいる。


ケーン、きびし~……。ジャスミンは、苦笑を浮かべて、かすかにうなずいた。


フー、フー、フー……。あの息遣いはイノシシのたぐいだ。足音から推定して、多分大牙イノシシ。


そろそろ気づけよ!


ケーンは少しいらつく。大牙イノシシが突進してきたら、やばいでしょうが!

 ジャスミンが、心配顔でケーンに顔を向ける。


辛抱堪らん! ケーンは、こくんとうなずいた。


「もうすぐ接敵する。各自武器を準備」

 ジャスミンが指示を飛ばした。


 メンバーに緊張が走る。槍士二人は、腰を落として身構え、弓士二人は矢をつがえる。


 ザッ、ザッ、イノシシは下草を踏み分け、ドドドドド!


 人間の匂いを感じたか、突進してくる気配。


見えた! 体長三メートルはありそう。


大丈夫? ケーンは、嫁たちの気分が痛いほどわかった。


ダンとミントが、突進をさっとよけ、槍を突き刺す。腰が十分入っていない!


イノシシは構わず猪突猛進。


すかさずアリスとナーラが矢を放ち、突進をかわす。


イノシシは、がくんと膝を屈する。


「ふんっ!」

 ジャスミンが、ドラゴンバスターを一閃。イノシシの首がふっとんだ。


「お見事です!」

 メンバーが、称賛の目でジャスミンを讃える。


「見事なのは、この剣だよ。

すげ~~~!」

 ジャスミンは、ドラゴンバスターを、うっとりと見つめる。


カ・イ・カ・ン……。


「ダンとミント、解体の間見張って。

ナーラ、大物だよ!」

 興奮気味に目を輝かせたアリスは、そう命じて解体にとりかかった。


 うん……。まだまだだね。戦闘も解体も。ジャスミンを加えてよかった!


 暖かい目で見守るケーンだった。



 なんとか解体を終え、アリスは肉の高く売れる部位と、牙をポチバッグにしまう。


うん。あのバッグ、大いに役立っているようだ。


普通大物を狩ったとき、換金部位をどう持ち帰るかが、大きな問題となる。

ポチバッグの容量は少ないが、彼女たちの獲物を収納するには十分だろう。今のところは。


だけど、甘やかしすぎてはならない。


『ジャスミン、そのバッグ、当分は秘密で』

 ケーンはジャスミンに、そう耳打ちした。


『あの子に優しいんだか、厳しいんだか、わかんないよ。

あの子が使ってるバッグも、魔法のバッグだね?』

 ジャスミンが小声で返した。


『あれは俺が修行のとき作った三級品だ。

そんなに入らない』

 ケーンの返事に、苦笑して肩をすくめるジャスミンだった。


 三級品? ケーン、魔法のバッグのお値段知ってる? 


あれだけ収納できるなら、金貨五十枚はするよ?


 ケーンの金銭感覚に、物申したいジャスミンだった。


アリスのパーティーは、着々と実績を上げつつあります。ベテラン冒険者ジャスミンが加わったらますます安泰!

そういえば、ジャイアンのパーティはどうなったのでしょうか?

知らんけど……。

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