77 ネコミミテイクアウト
ケーンはミーちゃんを連れて、竜王国王宮へ帰ります。
ケーンは超ご機嫌で竜王国王宮へ帰還。
もちろんミーちゃんはお持ち帰り!
「ケーン、その子、誰や?」
ユリが顰蹙の目で言う。
「ミーちゃん!
どうだ! 猫耳としっぽ、超かわいいだろ!」
「そのかわいい猫耳娘、どうするつもりや?」
ユリは冷たい声で問いただす。
「嫁にするよ。戦闘には全然役立たないだろうけど、みんなでかわいがって」
ケーンは少年の目で言う。
「どうする?」
ユリは他の嫁たちに振る。
「しょうがないでしょ?
それがケーン様なのだから」
正妻キキョウが、あきらめ顔で言う。
他の嫁たちは、ため息をついてうなずいた。
「ローレン、絶対お仕置きしてやる!」
メイサは、行き場のない憤りをローレンに向けた。
全く! ケーンをどんな店に連れて行ったんだ!
「ローレンは悪くないよ。
俺が獣人のいる店に、連れてけって頼んだ。
メイサが言ったじゃん。
獣人族が出稼ぎに来てるって。
ミーちゃんを見た瞬間、最後のピースが、はまったって感じなんだよね!」
「あ~、そういうことか……。
ケモミミゲットは、ケーンの悲願やったな?」
ユリは、これまでのケーンの、嫁さがしを思い起こす。
まず、聖神女と魔王の娘を狙い、その努力は空振りした。
ケーンのあずかり知らぬ要素で、結果的に両方嫁になったが。
もっとも、夜の女王が、魔王の娘サーシャを嫁に取り込んだこと、ケーンだけはいまだに知らない。
次にケーンが狙ったのはエルフ。結果は微妙だが、エルフのエミリーはメイサに付き従い、仲間になっている。
そして、「学校で青春したい!」の願望は、挫折したような、アリスという含みが残ったような……。
要するに、ケーンはたくさんの嫁を得たが、自らの主体的活動で、すっきりゲットできた、ためしがないのだ。
そう考えたら、このどや顔も納得できる。
「ケーン、よう頑張った。
ミーちゃん、仲ようしよか。
私は落ちこぼれ勇者の子孫で、一応嫁のまとめ役や。
Sランクの冒険者やっとる。
こちらが、トリプルSの冒険者、キキョウさんや。
ケーンの正妻で最初の嫁。
こちらがメイサさん。竜王の御息女や……」
ユリはあきらめて、嫁たちを次々と紹介していく。
王宮へ連れてこられ、場違いにビビりまくっていたミーちゃんは、蒼白になった。
トリプルSの冒険者? 竜王様の御息女? 元聖神女? 元勇者? 極めつけは、光の女神様?
ムリ! ムリ! ムリ!
「まあ、庶民派の嫁もおる。
全然気遅れすることないで。
みな、楽しゅう暮らしとる。
メイサさん、新入りと一発決めたって」
嫁のまとめ役、ユリはメイサに振る。
ミーちゃんは、嫁の超豪華ラインナップに、ビビりまくっている。
竜王国の王女と3Pしたら、コンプレックスも少しは解消されるだろう。
ユリは、まことにできた嫁だった。
「あ~ん、ミーちゃん、いいよ! いい!
ホントかわいいんだから!」
「メイサ様、うれしいです!
もっとご奉仕させていただきます!」
「あの~……俺は?」
「ケーンは、黙って見てればいいの!
あ~ん、ミーちゃん、そこよ、そこ!」
メイサのお仕置きは、おいてけぼりケーンにとって地獄だった。
二人が散々盛り上がったところで、きっちり決めさせていただいたが……。
ミーちゃんのふるさと、獣人族のワイルド村は竜王国内の外れにあった。
それというのも、人間形体に近い獣人族は前述のように弱い。竜王国なら治安はばっちり。
安心して生活できる。
ケーンとミーちゃんは、ブラックに二人乗り。空を飛んだ方が早いが、ミーちゃんは、高所恐怖症だという。
それに、ペガサスに乗って、故郷に錦を飾るのもいいと思うが、やっかまれても困る。
夜の女王様と、元勇者ケンイチ様のご子息。これ以上は考えられない玉の輿だ。
「ケーン様、このじーんずっていうズボン、はきやすいですね」
会話に困ったミーちゃんが、体を包み込むようなケーンに言った。ミーちゃんは、なるべく質素な服を注文した。村の娘たちにねたまれるという心配があったから。
ケーンから与えられたのは、ジーンズに白Tだった。
ケーン的には、アキバ系メイドファッションが希望だったのだが、仕方がなかった。
「もともとは作業着なんだ。
丈夫さだけが取り柄?
だけど、とうちゃんが暮らしてた世界では、ポピュラーなんだ」
「ちきゅう、ですね……。
行ったことあるんですか?」
「情報は得られるけど、行ったことないよ。
ヒカリちゃんの言うことには、無理なんだって」
「そうなんですか?
ちきゅうって、どんな世界ですか?」
「どんな世界と言われてもね……。
魔力が極端に薄くて、魔法が使えないらしいよ。
そのため、科学技術と呼ばれる、魔法みたいな技が発展した」
「ふ~ん……。魔法がなければ、ないなりに、なんとかできるものなんですね?」
ケーンは、ミーちゃんの素朴な感想に、少し笑った。
ケーンは、母親に能力を下げられ、魔法を十分に使えなくなった。
少ない力をどう生かすか。それをテーマに魔物や魔族と戦ってきた。
すると、以前より研ぎすまされる自分を感じた。
まさに「なんとかできる」ものだった。
「そうかもしれないね。ミーちゃんは魔法使える?」
「生活魔法ならちょっぴり?
戦闘には全然役立ちませんけど。
ワイルド村で暮らしてる獣人族は、みんな中途半端なんですよね。
身体能力は人種よりちょっぴり高いけど、魔力は全然かなわない。
すぐに老けちゃうし。
ほんとに私で、いいんですか?」
ミーちゃんは視線を落として聞く。
「だから! 何度も言ってるだろ?
君は超個性的でかわいい!」
ケーンは、左手の手綱を離し、ミーちゃんの腰をぐっと抱きしめた。
「ありがとうございます。
嬉しいです、ご主人さまぁ~ん、にゃんにゃん!」
少しはにかみながら、招き猫ポーズをとるミーちゃんだった。
山の裾にあるワイルド村が見えてきた。
まずい! ヘルコンドルだ!
遠視が利くケーンの目には、村の上で旋回するヘルコンドルが見えた。
ヘルコンドルはCクラスの魔物だが、村人に高い対空戦闘能力があるとは思えない。
「ミーちゃん、魔物が村を狙ってる!
空を飛ぶよ!
ブラック!」
「承知!」
ブラックは羽根をはやし、ふわりと飛び上がった。
「あわわわわ……」
ふっ、カクン。
高所恐怖症のミーちゃんは、ブラックの飛行速度も相まって気絶した。
ケーンはめでたく猫娘を嫁としてゲットできました!
以下ノーコメントで。
ケーンと猫又だからと、あきらめてください。