76 アイドルお披露目
ケーンはミーちゃんを猛特訓!
「お帰りなさいませ! ご主人さまぁ~ん。
にゃんにゃん!」
「お帰りなさいませ! ご主人様。
ニャンニャン!」
ミーちゃんは、猫耳カチューシャ(しっぽももちろんアリ!)のケーンをまねて、招き猫ポーズ。
「ち、が~う! ご主人さまぁ~ん、だ!」
「ご主人さまあ~!」
「ち、が~う! いい感じに媚びる!」
「ご主人さまぁ~ん!」
「うん。そんな感じ!
にゃんにゃんは、とびっきりの笑顔で!
最初から」
「お帰りなさいませ!
ご主人さまぁ~ん。
ニャンニャン!」
「ち、が~う! それじゃ、飛び降りの笑顔だ!
にゃんにゃんは、ひらがなで発音する!」
「ひらがな?」
「あ、柔らかくのイメージね。
笑顔が硬いよ。
そうね、さっき金貨百枚見た時の笑顔?」
「あれですか! 了解です!
お帰りなさいませ!
ご主人さまぁ~ん。
にゃんにゃん!」
「いいね、いいね! いつも金貨百枚に接する気持ちで!
それがアイドルとして一番大事!」
どんな特訓だよ! 記者渾身のツッコミは置いておく。
そんな感じで、ミーちゃん改造計画は、着々と進行した。
ピンククラブのダンススペース。
突然スポットライトがあてられた。
黒のスラックスにベスト、蝶ネクタイ。ボーイさん風衣装に身を固めたケーンが浮かび上がる。
猫耳しっぽ付きという点が、やや異色。
「いらっしゃいませ、いらっしゃいませぇ~。
当ピンククラブスペシャルイベント、ピンククラブX、ミニライブ~~~!」
ケーンが持ち込んだカラオケから、アップテンポのリズムが流れる。
五人の、猫耳しっぽアキバ系メイドさんが登場。
センターは、ピンクのミニメイド服、ミーちゃんだった。
彼女だけは、本物の猫耳&しっぽ。
他の四人は?
お忘れかもしれないが、ケーン一行は、エルフ探索の途中、強盗村の連中をお縄にした。
貧乏村、村おこしの一環として、ケーンが発案したのは『Bポップ(Bはボンビー村の頭文字)』路線だった。
村の娘の中で、かわいいどころ四人を猛特訓。
各地を巡業し、どさまわりアイドルとして、そこそこの評判をとっている。
エロカワ系衣装、無節操に地球の曲パクりまくり。大音量のカラオケに合わせ、歌って踊る少女ユニット。
なにせ、この世界では斬新そのものなのだ。
そのメンバーを、転移魔法で連れてきたわけ。
おっ、との子は みんなケモナー
やさしく ハァハァ 見つ、っめてね
いや~ん ばか~ん
おさわりダメダメ~ン
ネコミミシッポは トクベツな子、だけ!
あなたはもうすぐ……モフモフ、あふ~ん!
かも、かも、 カモ~ン?
ミーちゃんが、口パクでリズミカルに体を揺する。さすがにダンスまで、手が回らなかった。
バックではメンバーが、ダンスを繰り広げる。もちろん口パク。歌はケーンの父親が作った、アンドロイドたちが吹き込んだ。
歌が入っていたら、カラオケの原義から外れるが、ケーンは細かいことを気にしない。
五人のミニスカから、白のフリフリドロワーがちらちらと。さすがにケーン謹製の、おパンツちらちらでは具合が悪い。
当初唖然として見ていた、お客やお店のおねえさんたちは、ノリノリで声援を送る。
「ハイ!
ハイ!
ハイハイハイハイ!
ミーちゃん、カワユイ!
ネコミミシッポ!
ユラユラ揺れて
ムラムラそそる!
ハイ! ハイ! ハイハイハイハイ!」
曲の間奏。ケーンはピンクのハッピとハチマキを着け、キレッキレのオタ芸で、場の空気をあおる。
女系社会に抑圧された、竜族オノコは、こういった「守ってあげたい」的な女の子に弱いはず。
ケーンの読みは、ずっぽりはまった。
特にローレンは、目がハートマークに。
さすが武芸の達人(竜族の女より弱いけど)。ローさんは、ケーンに並んで、オタ芸を打つ! 打つ! 打つ!
なんか、きっもち、いい~~~!
ローレンのストレスは、春の雪解けのごとく。
「それじゃ!
ミーちゃんとピンククラブXに、盛大な拍手を!」
三曲終わって、ケーンが締める。
「ありがとうございました!」
ミーちゃんだけが残り、他のメンバーは、拍手と声援に送られ更衣室へ。
「ご苦労様。ボンビー村へ転移!」
ケーンの依頼を受けたミレーユが、四人を送り届ける。
さすがケーン様、念願のケモミミ、ゲットしちゃった。
ちょっぴり寂しい、かな……。
ミレーユは、心の中でそうつぶやいて、夜の王宮へ転移した。
「ケーン、その子、紹介してくれ!」
元の席へ帰ったローレンは、ケーンに哀願。
「紹介? ミーちゃんだよ」
「ミーちゃん? さっきの子?」
「そうだよ。俺の嫁に決めた。
惚れても無駄だぞ」
ローレンは、うつむいて両手をプルプル震わせる。
「お前なんか、だい、きらいだぁ~~~!」
ケーンに男の友情は、やはり無理だった。
ちなみに、ボンビークローバーX(四人の正式ユニット名)は、後々竜族オノコのアイドルになったという。
そして、ハッピとハチマキは、竜族オノコの必須応援グッズになったとか……。
ボンクロ親衛隊隊長は、いうまでもなく、王宮近衛隊員、ローレンが兼任した。
猫又のオタク認識に、偏向が感じられたならお許しください。