表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者二世嫁探しの旅  作者: 猫又にゃん
67/116

67 チームポチ、始動

ケーンは、ポチという偽名を使い、冒険者寺子屋生として活動を始めます。

 メアリーが治癒魔法を施した後、十人はケーンとジャイアンを中心に、パーティ分けをした。


ケーンが槍使いの男女二人、弓使いの女子二人を引き受けた。


バランス的にもまずまずだろう。


メアリーとリンダが引率し、さっそくチュートリアルダンジョンに向かう。


その指示を聞いたとき、生徒たちは苦笑するしかなかった。バトルロイヤルの入寺子屋式といい、必要最小限の注意しか与えないことといい、超スパルタ方針だ。


つまり、甘えは一切許されないということだ。


それは望むところ。生徒たちは身が引き締まる思いがした。



「ダンジョン突入はポチ班から。

ジャイアン班はその三十分後。

行動開始」

 リンダがそう告げた。



「ポチ、行こう!」

 アリスが張り切って言う。


「バカじゃないの? 今何時?」

 ケーンは、後のフレーズにリズムをつける。


「そうね、だいたいねぇ~……。

あれ?」

 アリスは、無意識に乗せられてしまったことに気づく。


どういうふうに乗せられたか、気づかない読者は無視する。


「そういうことか……。

おい、食える物をさがすぞ!」

 ジャイアンは自分の班員に指示する。


ちなみに、ジャイアンは、ケーンがつけたニックネームに満足している。


「体がでかく、力持ちでリーダーシップがとれる。

もう一つのパーティリーダーは、ジャイアンしかありえない。

ただし、歌は歌うな」


ケーンのよいしょは、彼をしっかりその気にさせた。


どうして歌ってはいけないのか、不明だったが。


以降、ケントという彼の本名は、寺小屋内で二度と使われないだろう。



 アリスは自分の浅慮を恥じた。


時刻は昼前。


このまま突入したら、ダンジョン内で昼食をとるか、空腹を抱えて魔物と闘わなければならない。


いきなり冒険者失格だ。


「メシにしようぜ。

今日だけは俺のおごりだ」

 ケーンはポチバッグから、用意のおにぎりと水筒を五人分取り出した。


ちなみに、ポチバッグとは、内容量がミカン段ボール十個分程度。


中クラスまでの、冒険者用魔道具としては、最もスタンダードな仕様となっている。

もちろん、初心者以前の貧乏メンバーには高根の花だが。



「ポチ、最初からただ者じゃないと思ってたけど……。

私、一生ついていきたい」

 アリスは恋する乙女の目でケーンを見る。


「ふっ……。弱い女はいらない」

 ケーンは渋く決めてみました。


あ~、青春だね~!



「それでさ、ジョブってあるじゃん。

だいたいわかるんだけど、どういうことなの? 

ポチなら知ってるでしょ?」

 昼食を摂り終えたアリスが聞く。


「あ~、それな。

冒険者ギルドに登録するとき、自己申告するんだ。

自分の得意分野が何か、アピールする意味で。

パーティ組むとき便利だろ? 

代表的なのは戦士や剣士、狩人、シーフ。

盾防御が得意なら盾士。

魔法が得意なら、たとえば、火属性魔法使い、防御魔法使い、エトセトラ。

ただし、特殊なジョブもある。

今は全然関係ないけど聞きたい?」

 アリスをはじめ、他のメンバーはコクコクとうなずく。


みんなド田舎の出身だ。冒険者に憧れるものの、詳しい情報は持ってないし、得ようがなかったというのが実態だ。


「冒険者ランクがBランク以上になったら、つまり、一人前になったら、名乗ることができるジョブだ。

成功報酬が上積みされる代わり、金がかかるし、もちろんそのジョブにふさわしい実力が必要だ。

金がかかるというのは、ギルドが認める、特殊ジョブ認定審査官を雇う必要があるからだ。

審査官はAクラス以上の冒険者が絶対条件。

高ランク冒険者のアルバイトか、もしくは引退した元冒険者だ。

交渉次第だけど、安くないことはわかるだろ?」

 メンバーはコクコクとうなずく。


「審査官のランクが高いほど、信用度は増す。

審査官は、ギルドカードに名前が明記されるから、当然合格基準は高く設定する。

もちろん、自分の名誉と信用を落としめないためだ。

その特殊ジョブは、たとえば、剣豪とかニンジャとか魔導師とか。

好きに名乗っていいんだけど、なんのスペシャリストかわかりやすいのが望ましいから、ほとんどは先例に乗っかってる。

例外は勇者と聖神女。

その二つは資格がないとね」


「魔法使いと魔導師、どう違うの?」

 魔法にちょっぴり自信があるアリスが聞く。


「魔法使いは、魔法がそこそこ使えますよ~というアピール。

魔導師は魔法が、自由自在に使えるというアピール。

とりあえずは、Bランクに昇格することを目指そうか?」

 ケーンはアリスの頭をぽんぽんと叩いて応える。


この子、磨けば光る可能性は、なきにしもあらず、かもしれない、と思いながら。


今のところ、ド田舎の娘っ子にしか見えないけど。


だが、ケーンの勘は教える。力の伸び代は十分だ。



 その後、ケーンは、前衛・中衛・後衛の役割分担と、サインの打ち合わせを行った。

パーティメンバーは、その的確な指示で、ケーンに全幅の信頼をおくようになった。


ふと思ったのですが、犬に「ポチ」という名前が付けられるのはなぜでしょう?

後に登場しますが、猫獣人に、猫又は「ミー」という名前を付けました。

猫又が想像するに、子犬の小さくて愛くるしい感じは「ぽち」というイメージ?

子猫は「ミーミー」鳴くから?

多分、子供がつけると思うんですよ。ポチとか、ミーとか。

ペットが大人になってからの違和感まで想像が及んでない?

ならば、親が子供に「キラキラネーム」をつけてしまうのは、子供並みの軽薄さの表れ?

お~! 鋭い社会批判だ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ