表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者二世嫁探しの旅  作者: 猫又にゃん
48/116

48 弟子入り希望の兄妹

クオークで出会った兄妹が、ケーンを訪ねてきました。

「あ~! やっと見つけた! ケーン殿、われら兄妹を弟子にしてください!」

 サマンサの薬屋から出てきたケーンとユリは、例の兄妹に見つかってしまった。


「クオークから来ちゃったの? ムサシは?」

 ケーンはびっくりして聞いた。


「そのムサシ殿の推薦です。

ケーン殿は新人の育成に長け、面倒見も最高とうかがっております」

 兄はケーンに、すがりつかんばかりの勢いで迫る。


「チッ……。ムサシめ~」

 ケーンは舌打ちする。きっとめんどくさくなって、自分に押し付けようとしたのだ。


「あのさ、君たち冒険者登録してる?」

 ケーンは一応聞いてみる。


「もちろんです! 

登録してたった二年。Dランクに届きました!」

 兄は胸を張って答える。


「私はまだEランクですが、回復魔法が使えます!」

 妹はすがるような目でケーンを見る。この世界では珍しい丸顔で、目がありえないほどでかい。

美人系というより、あきらかにカワイイ系。


体はまだ発展途上段階だが、コスプレが超似合いそう。


ケーンの心は大いに揺らいだ。


「どうして強くなりたいの?」

 ケーンが聞く。


「田舎騎士領主の五男。

その立場、わかりますか? 

俺は強くなければダメなんです。

メイをゲンナー男爵の、妾になどできない!」

 ケーンは、このシスコン兄の立場が、はっきり見えてきた。


妹をスケベ男爵に奪われるのがいやで、家から飛び出したのだ。


フェミニストのケーンは、妹に同情した。

「金、そんなに持ってないだろ? 宿代も厳しいんじゃない?」

 兄は薄汚れた革鎧。妹はぼろい魔導服。


兄妹の家は、ある程度裕福なのだろう。元はまずまずの装備だったと思われるが、旅の苦労をしのばせる。


「お恥ずかしいですが、そうなんです。

実はムサシ様に融通していただいた路銀、底をついています。

だからケーンさんに見捨てられたら……。

うっく…超困るんですぅ~!」

 メイと呼ばれた少女の目から、ぼろぼろと涙がこぼれた。


「わかった。

俺がクエストを出す。

仕事は薬草採集時のレミと、この店の用心棒。

三食付きの住みこみで頼んでやる。

空いた時間に稽古をつける。

それでどう?」


 女の涙に、超弱いケーンだった。



 一週間後のこと。


ケーン、キキョウ、ジャンヌのヒカリちゃんは、総子と模擬戦で戦う兄妹を見ていた。


『どう思う?』

 ケーンが念話で聞く。


『思い切り装備で固めても、Aランクに届かないと思います』

 キキョウが念話で応える。


『器の問題ですね。

気持ちだけが空回りして、一番危険なタイプです』

 ヒカリちゃんも念話で応える。


『俺もそう思う。どうしよう?』

 ケーンは途方に暮れる。


総子に付けてレベルアップさせようという心づもりだったが、めちゃくちゃ足を引っ張りそうだ。


『エリックは、救いようがないほどのシスコンですね。

メイをケーン様の嫁にするには、問題大ありです』

 キキョウが苦笑して念話で言う。ちなみに、エリックは兄の名だ。


『メイもエリックほどではないにしろ、重度のブラコン。

割って入ろうとしたら、険悪な雰囲気になります。

ケーン、頑張ってください。じゃ!』

 ヒカリちゃんはそう言い残し、ジャンヌの体から逃げていった。


三人は目を見合わせ、大きくため息をついた。



「そこまで! 総子、お疲れ」

 ケーンは模擬戦を止めた。「お疲れ」と言ったものの、総子は汗もかいていない。兄妹は息も絶え絶えといった感じ。


総子は幼いころから剣道を習っているし、部活にも入っていた。弱い者の指導はお手の物である。


「エリック、メイ、今晩付き合え」

 ケーンは引導を渡すべきだと思った。


「俺、男は……」


「兄者と二人で? それはちょっと……」

 なんだかひどく誤解しているらしい兄妹だった。


ケーンが二人にコスプレさせているのが、誤解を与える要因だろう。二人はコスプレモデルとして、最高の素材だ。


照れがりながらも、兄、妹の艶姿に、お互い萌え萌えであること、ケーンは見抜いている。


「じゃね~よ! 

君たち二人の将来、じっくり語りあおう」


「もしや、俺に婿入りしろと? レミさんに」


「私はケーンさんの側室?」

 どうしてそういう発想? ケーンはとことん問い詰めたくなった。


ムサシはなかなかのワルでした。

兄妹の扱いに手を焼いて厄介払いです。

このシスコン&ブラコン兄妹、どうなるのでしょう?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ