4 薬草採集は冒険者の第一歩
ケーンには、受付嬢とも出会いフラグ立たず。仕方なく薬草採集に出かけますが……。
ケーンはブラックとともに、無事冒険者登録を終えた。
だが、受付嬢は超忙しそうだった。
おかしい。登録の時には、受付嬢と絶対フラグが立つはずなんだけど。
ケーンは登録の時、魔力検査を苦労してセーブした。
初心者としては、高いかな、という反応を魔力測定器ははじき出した。
魔力の高い者が、低くごまかすことはできる。特にケーンは、細かい魔力操作が得意だ。
もう少しびっくりさせた方がよかったかも……。
不器用なブラックは、頑張ったものの、ライラックギルド新規登録者の、新記録をはじき出してしまった。
一千年物の神馬だもんね。当たり前だけど。
ケーンは肩を落とし、端の方の受注カードを見た。
Fクラスに討伐クエストなんてないじゃん!
まあ、父ちゃんの世界の小説もそうだった。
地道にクラスをあげるしかない。
ケーンの、ナンパへの道のりは遠かった。
「ケーン様、ペンペンソウの採集依頼でも受けますか?
後は下働き程度の依頼しかありません」
ブラックは気の毒そうに言った。
「そうね……」
薬草採集は王道への第一歩。ケーンは力なくカードをはぎ取った。
だが、神がケーンを見離したわけではなかった。
あの子、守ってあげたい。だけど、強そうなお付きがいるし……。
どうやって近づこう?
ドストライクの女冒険者が、ケーンを熱い目で見ていた。
ケーン主従は、王都の外れにある青の森を訪れた。
冒険者ガイドブックによれば、初心者向きのお勧めポイントらしい。
貧乏な冒険初心者は、ギルド備え付けの図書室で、ひたすらガイドブックの内容を覚えるのが、最初の仕事だという。
ケーンの社会的地位はプリンス。言葉遣いは父親の好みに合わせ、いたって庶民的だが、金なんていくらでもある。
全十巻のガイドブックをあっさり購入し、その意味ではギルド職員を驚かせた。
その定価は共通大金貨五枚。日本円に換算すればおおよそ百万円。庶民の平均的年間収入約半分。
印刷や製紙技術が中世ヨーロッパ並みのこの世界で、書物はきわめて高価だ。
ギルド職員の間ではこう噂されている。
あの初心者たちは、きっとBLつながりだ。
たとえば、どこかの国の騎士と従者の駆け落ち。
もちろん騎士とは、ブラックを指し、従者はケーンを指す。
騎士が従者をご主人様扱いするのは、きっとSM趣味が入っているから。
あのムキムキボディーを、軟弱少年がいたぶりつくす……。
いや~ん、なんだか萌える!
特定腐女子職員に注目されていることは、もちろん二人とも気づいていない。
「ブラック、それはベンベンソウだ。
葉っぱをこすり合わせたら、ベンベンという音がするだろ?
これがペンペンソウの音」
ケーンは丁寧に採集した、二本の草をこすり合わせる。
かすかに音がする。心持ち、ブラックが採集した草より澄んだ音だ。
「私には区別がつかないのですが」
ブラックは申し訳なさそうに言う。
「よく見たら葉っぱの形も違うだろ?
ギザギザ感が強いのはベンベンソウ。
まあいいよ。
俺が選ぶから」
ケーンは超一流の薬師であり、超一流の錬金術師でもあるミレーユから、きっちり仕込まれている。
ペンペンソウなどという、ありふれた薬草は、採集したことはないが、簡単に見分けがつく。
「どうも申し訳ございません」
ブラックは深く頭を下げた。
『採集はいいから、後ろの方、注意してて。
相当な熟練者が、俺たちを見張っている』
ケーンは念話で注意を与える。
「なんですと!」
ブラックは驚いて振り返る。
『こらこら。
殺気はないから放っておけばいい…って、逃げちゃった』
「なんのために我々を?」
「ブラックが気になるんだろ?
若い女の気配だった。
多分シーフか狩人のスキルを持ってる。
それも超一流。
いいね、ブラックはモテモテで」
すっかりいじけモードのケーンは誤解した。
その女冒険者が見張っていたのは、ケーンだった。
そして、その女のジョブは、ニンジャと呼ばれる上位レアジョブだった。
今日はもう一本投稿します。
ブクマ・星マーク・いいね、なんかいただけたらうれしいかな……。




