その5
恭平の彼女である葉月奈美は香澄真奈の双子の妹で、彼にとってはもう一人の従姉だ。
二卵性の姉妹だが容姿はソックリだった。
周囲は真奈のメガネと奈美のあごのホクロ、あとは髪の長さの違いで見分けている。
他に真奈は中慶学園本校のセーラー服、奈美は系列の女子校でブレザーの制服という違いもある。
双子姉妹は両親を交通事故で亡くした後、真奈は香澄家に、奈美は葉月家にそれぞれ引き取られていた。
「真奈が羨ましい」
ラージのポテトを二人でつついていると、奈美がぽつりと呟いた。
「学校だけじゃなくて家でも恭ちゃんと一緒にいられるんだもん」
「家族だからね。僕だって奈美と出来るだけ一緒にいたいと思ってるよ」
恥ずかしそうに言う恭平を見て奈美も頬を赤くする。
「まあ、いいわ。私は恭ちゃんのお義姉さんにならなかった代わりに彼女になれたんだもんね」
五年前。
世間的に裕福な香澄家では、恭平の父親が両親を亡くした姪達を二人共養女に迎えようとした。
しかし、他の親族も養子縁組を希望して双子は別々の家庭で養女になった。
(もともと僕らは仲が良かった。真奈と姉弟になった時はすごく嬉しかった。奈美とは恋人同士になって僕は幸せの絶頂にいる)