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25、黒く染まったドリーちゃん

◆◆◆◆◆


『遅いのぉー』


 アルフレッドはいつまでも帰ってこないシャーリー達を心配していた。


 少し離れた場所で食事を用意しているとはいえ、いくらなんでも遅すぎる。暇潰しで読んでいた本も全部読み終わってしまったし、さすがに呼びにいこうかと考え始めていた。


「どうしましたか、賢者殿?」

『グレアムか。何、シャーリー達を呼びにいこうと思ってな」

「確かに帰ってくるのが遅いですね。どれ、私も一緒に行きましょうか」

「ちょっと待って!」


 アルフレッドとグレアムがシャーリー達を呼びにいこうとしたその時、スレインが唐突に叫んで止めた。

 どうしたんだ、と思いアルフレッド達は止まるとスレインはこめかみを抑えてブツブツと何かを呟き始める。


『今は危険だ。一応、防御壁を張ったが近づかないほうがいい』

「そうか。わかった、気をつけなよ」

『お前達が気をつけろ。邪魔者がそっちに行ったぞ』

「ご忠告、ありがとう。頑張るよ」


 スレインは何かを探すように顔を上げる。アルフレッド達は不思議そうに見つめていると、スレインはある方向に視線を向けた。


 合わせるように視線を移動させると、そこには羽を休めている火だるまコウモリがいた。何気なく様子を見ていると、黒い影らしきものが火だるまコウモリを飲み込んだ。


「やっぱりか」

『あれは、まさか――』

「どうかしたのですか? 賢者殿」

「来るよ。みんな構えて!」


 火だるまコウモリが目を覚ます。途端に羽を休めていた集団が飛び立ち、炎をまとった。

 その光景は圧巻だ。しかし、どこかおかしい。


 赤く燃えているはずの炎が、真っ黒に染まっていた。豪快であり、美しくもある光景がどこか不気味で恐ろしいものに変わっている。

 アルフレッドはその光景に、思わず顔を強張らせていた。


『まさか、呪いか!』

「らしいですよ。アルフレッドさん、ここは僕と騎士団長殿に任せて早く行ってください!」

『すまん、頼むぞ!』


 アルフレッドが慌ててシャーリー達の元へ向かおうとしたその時だった。

 突然、行く手を塞ぐように黒い嵐が巻き起こったのだ。


『ぬおっ!? なんだこれは!』

「アルフレッドさん! うわっ、身体が――」

「スレイン殿に賢者殿! うおおっ、身体が浮いて――」


 アルフレッド達は突然起きた嵐に飲み込まれていく。そこに火だるまコウモリも飛び込み、完全にシャーリー達と分断されてしまった。


 黒い嵐が暴れる。シャーリー達の邪魔をさせないように暴れまわる。

 その中に吸い込まれたアルフレッド達は、呪持ち火だるまコウモリと戦うことになった。


◆◆◆◆◆


 圧倒的だった。


 黒く染まったドリーは、笑いながらトリガーを引く。一発、二発、と銃弾がヘブンズ・セブンに飛びかかるとその身体を砕いていった。


 その攻撃は反射されたはずだったが、起こらない。まるでねじ込むかのように銃弾はヘブンズ・セブンに突き刺さった。


『ググゥ』


 攻撃を受け続けたためか、ヘブンズ・セブンは弱々しく唸り声を上げる。もう倒すことができる状態だ。

 しかし、ドリーは簡単に殺さない。

 まずは足の爪を壊す。するとヘブンズ・セブンは大きな悲鳴を上げた。

 次に膝を撃ち抜く。ヘブンズ・セブンは声を上げることなく崩れ落ちた。


 最後に頭に銃弾を撃ち込んだ。ヘブンズ・セブンは抵抗しようとしていたが諦めたのか、途中で事切れた。


「くくっ、あははっ」


 惨劇だった。


 ドリーはその惨劇に笑い声を上げる。まるで無邪気に楽しんでいたかのように、ただただ楽しそうにしていた。

 死体となったヘブンズ・セブンを踏みつけ、その上で高笑いを上げる。その姿は、シャーリーが知るドリーではない。


「ド、ドリーちゃん……?」


 シャーリーは恐る恐る声をかけた。するとドリーはシャーリーに向けて笑顔を浮かべる。

 ゆっくりと、右腕を上げそのまま銃口を向けた。


「なぁに、シャーリー?」


 その笑顔は、その行動は明らかにドリーでなかった。だからこそシャーリーは、身体を震わせる。


 もしかしたら殺されるかもしれない。それでもシャーリーは、ドリーに近づこうとした。

 しかし、ドリーは容赦しない。遠慮なくトリガーを引き、シャーリーの太ももを傷つけさせて転ばせた。


「あぐっ」

「あら、あらあら? 無様ね、シャーリー」

「ドリーちゃんっ」

「ホント、無様。だから、遊んであげるッ」


 ドリーは笑う。黒い翼を震わせて笑う。

 それでもシャーリーは、ドリーへ近づこうと立ち上がった。

 その後に起きる惨劇と痛みのことなんて、知る由もなく。

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