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二葉邸殺人事件  作者: 髙橋朔也
解答編
20/22

推理 伍

 執行猶予とか何か話しているが、明智と冬真の話しがわからないから尋ねてみることにした。

「どういうことだよ、明智」

「失礼。事細かに説明をしましょう。冬真さんの反応を見ると、本に隠されていた宝石は脱税等々の不正なお金で購入したものでしょう。貴金属に換えて隠し持つのが手ですから。

 宝石を扱う時は手袋をはめているのが普通。宝石を隠していた本のページで、中央部分がくり抜かれていないページもあり、無地です。この無地のページに冬真さんは日記を書いています。そして一郎太さんが殺された日付の日記は、切り取られてありますよ」

 一郎太が殺された日付に書かれた日記の一部分が切り取られている。

 つまり冬真は、宝石を触るために手袋をはめてあの本を開き、ついでに日記を書いていたから冬真の指紋は付着していなかったのか。明智はこれすらも見抜いていたことになる。

 犯人はこれを利用して、東郷の指紋を付けて怪老人に落とさせたんだ。筆跡からも指紋からも犯人には結びつかず、冬真の筆跡ではあったが冬真は脱税を隠すために自分の日記から切り取られたとは言えない。完璧にミスリードされていたわけだ。

「これで怪老人については謎が解けましたね。では、東郷さんのことを話します。怪老人の落とした紙切れに付着していた指紋は、東郷さんのものです。東郷さんは殺されて右手を切断されていて、切断された右手で指紋が付けられていました」

 冬真の部屋の隅へと、皆は集まっていった。さすがに恐怖を覚えるようだ。

「では、次に慶二郎さんが殺された事件の推理を始めますが、これが難しいんです。これが殺人事件か自殺か、どう見極めるか。自殺とも考えられる事件です。最後の事件でもあるので、罪の意識に苛まれての自殺という可能性も否定できません。それに、用心深い慶二郎さんは開栓されているペットボトルは飲まないので、自殺と考えた方が可能性は高いのです」

 慶太は怒鳴った。「父さんが人を殺すわけがありません!」

「慶太さんの言いたいことはわかります。自殺の方が可能性が高いので、そう結論づけるしかないのです」

「父さんは人を(あや)めたりはしません! 動機がないはずです!」

「動機はまったくありません。それはそうです。しかしですね、可能性が高い道に進んで推理するので、仕方がないことです」

「なら、父さんが人を殺した動機を教えてください!」

「まあ、まずは推理を進めてみましょう。慶二郎さんが自殺したのなら、その動機を考えてみるのです。慶太さん。慶二郎さんが自殺をする動機などはありますか?」

「最近、事業が成功していないと肩を落としている記憶がありますが、二葉家でわざわざ死ぬ動機にはなりません」

「そうですね。慶太さんの言うとおりです。ということは、慶二郎さんが二人を殺して自殺をしたのが一番自然ですね」

「父さんは人を殺すわけがないです」

「どうなんでしょう。本人にしかわかりませんから、それがたとえ慶太さんでもわからないことがあるのではないですか?」

「確かに、僕でも知らない父さんの一面があるかもしれませんが、まさか僕の知らない一面が『殺人者』ということでしょうか?」

「まだわかりませんよ。慶太さんが慶二郎さんを殺した可能性も否定出来ないのですから」

「僕が父さんを!?」

「はい。慶二郎さんが用心深くても、実の息子にならそこまで用心深くもならないものですよ」

「いえ、父さんは用心深いです。それは僕にでも同じことでした」

「それを証明可能ですか?」

「難しいでしょうね。父さんは人付き合いが苦手なので、知り合いがいたとしても自分が用心深い性格とは話していないはずです」

「では、冬真さん」急に明智に名前を呼ばれた冬真は、目を大きく見開いた。「あなたは慶二郎さんと仲が良かったですよね?」

「ああ、俺と慶二郎は大の仲良しだった」

「慶二郎さんは用心深い性格でしたか?」

「用心深い奴だ、慶二郎は」

「その用心深い性格の慶二郎さんは、実の息子にも心を開かないほどですか?」

「緊急時や困ったときには頼るが、慶二郎は基本的に実の息子にも用心深く接する」

「なるほど」

 何の話しが始まっているのか。明智の推理はいつもこうだ。無駄な部分に時間を(つい)やし、やっとのことで犯人を名指しする。推理部分が長い方が犯人は緊張するらしく、明智はそれが難事件を解決する際の最後の楽しみとのこと。明智にとって、推理はデザートと一緒の位置付けなのだ。

 ここまでの推理を総合すると、慶二郎の死は自殺か他殺かはわかっていない。それの原因の一つとして、慶二郎の用心深い性格が挙げられる。用心深い性格が、自殺か他殺か見極めるのを邪魔している。ということはやはり、ペットボトルをすり抜けて毒を混入させるトリックか何かがあるということだ。それとも、本当に自殺なのか? ペットボトルにすり抜けるトリックなんてあるわけがないし、殺人事件の犯人は田沼慶二郎!?

「これからは、考え方を変えて推理します。ペットボトルをすり抜けることが可能か否か?」

 明後日には完結です! 完結した翌日には、本シリーズの二作品目を投稿します。短編ですので、そちらもよろしくお願いします!

 このシリーズは人が必ず死ぬので、そういうのが好きな方は二作品目も何卒(なにとぞ)っ!

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