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二葉邸殺人事件  作者: 髙橋朔也
出題編
12/22

誰に殺されたか

 扉を蹴破ることが出来、部屋の中を見回す。床に伏していた慶二郎を発見し、駆け寄ったが事切れていた。体温はあるから、死亡してすぐなのだろう。さっきの物音は、慶二郎が床に倒れた音だ。

「明智、窓に鍵は?」

「掛かっています」

「また密室か」俺は腕時計を確認する午前七時だ。「鑑識を呼ぼう」

 すぐに鑑識が来てから、密室内を調べ始めた。また、慶二郎も解剖がなされて死因が明らかになった。死因は毒死。しかし、毒は遅効性ではなく即効性だった。即効性の毒なら、密室外で体内に混入して密室内で死に至ることはない。自殺の可能性が高いということだ。

 また、密室内でどうやって慶二郎の体内に毒が混入したかがわかった。慶二郎が死ぬ直前まで飲んでいたペットボトルに入った天然水から即効性の毒が検出された。これによって、密室外で天然水の入ったペットボトルに毒が盛られ、それを密室内で飲んで死んだ可能性も浮上した。つまり、他殺の可能性が出てきた。

 が、慶二郎の息子の慶太によって他殺の可能性は否定された。なぜかと言うと、慶二郎はかなり用心深い性格らしい。一郎太の死因が毒死なのに不用意に栓の開いているペットボトルの水を飲むわけがない、というのが慶太の言い分だ。

 それならば、ペットボトルを開栓せずとも毒を盛るために、注射針で小さな穴が開いていないか調べられた。が、穴などは開いてなく、自殺が有力だとされた。が、それも慶太は否定した。

「慶太君。何で自殺までも否定するのかな?」

 半ばキレていた俺は、睨みながら尋ねた。

「父さんが自殺をする理由が考えられません! まさか、父さんが一郎太さんを殺して、罪の意識で自殺したとでも!?」

「他殺でも自殺でもなければ、事故死しか残らないんです」

「事故死かもしれませんよ。父さんが自殺なんてあり得ません」

「どうやったら即効性の毒がペットボトルに混入するのでしょうか?」

「それを調べるのが警察の領分ですよ!」

 このことから、俺は慶太を怪しむようになっていた。それも必然だ。慶太は自殺も他殺も否定しているのだし、慶太は実の息子なのだから慶二郎がいくら用心深くても、慶太が持ってきたペットボトルなら怪しむことはないように思う。第二の殺人(?)事件は、慶太なら実行が出来るのだ。

 こうなると、複数犯の可能性もある。第一の殺人事件は坂上が、第二の殺人事件は慶太が行っているのなら説明がつく。()にも(かく)にも、慶太はかなり怪しい。

「慶太君。一応、断定は出来ないので自殺、他殺、事故死を考慮して捜査を進めていきます」

「はい」

 慶太は怪しいが、嘘は言ってはいなかった。確かに、慶二郎は用心深い性格だ。だから、開栓されたペットボトルをむやみやたらに飲むなんてあり得ない。

 それよりもまず、他殺の場合なら外から鍵を掛ける方法さえあればペットボトルに毒を混入させることも出来る。犯人が慶二郎と部屋の中で話しながら、目を盗んでペットボトルに毒を盛れば慶二郎は死ぬ。あとは部屋の鍵を外から掛ける方法さえあれば第二の殺人事件のトリックを打破出来るが......第一の殺人事件同様に詰めが甘いわけがないか。

 明智と一緒に早速捜査を始めようとした時に、また部下から電話が掛かってきた。

「もしもし、神田だ」

「警部。毒が混入していたペットボトルから、害者以外の指紋の検出が出来ました」

「良くやった! 照合した結果は?」

「害者以外の指紋は三つ。その内、二つは次郎太と慶太、もう一つは怪老人が落としていった紙切れに付着していた指紋だとわかりました」

「また怪老人かっ! 必ず誰の指紋か調べ出せ」

「はい! 現在、鑑識が指紋のアミノ酸を調べています」

「あと、何で次郎太と慶太の指紋がペットボトルに付着していたんだ?」

「あのペットボトルは、一階の冷蔵庫に入れられていたから誰でも触れられた物だったんです。次郎太さんと慶太さんは、おそらく冷蔵庫に入っている時のペットボトルに触れたのでしょう」

「わかった」

 誰しもが怪しい。慶太の指紋が付着していたのは、もしかしたら犯人だからかもしれない。

 電話を切ると、明智と合流して事件現場に向かった。

「神田警部。ペットボトルに毒を混入する方法などを私に推理してほしいんですよね?」

「そうだ。あと、可能性としては外から鍵を掛ける方法とかも推理出来るか?」

「要するに、第二の殺人事件のトリックを見破ればいいんでしょう?」

「うん、そう......」

 現場は密室だった。自殺、他殺、事故死のどれかも見当はつかず、登場人物のほとんどが怪しすぎる。果たして、誰に殺されたか? 人間に殺されたか? 自分に殺されたか? 自然の摂理(せつり)に殺されたか?

 事故死なんて偶然はあり得ないし、自殺としても動機はない。他殺としか考えられないが、開栓されたペットボトルに入った天然水を用心深い慶二郎は飲まない。開栓して毒を混入された天然水のペットボトルのキャップ部分を接着剤で固めた跡はなかった。やっぱり、用心深い慶二郎でも息子の慶太になら油断をするはずだ。ペットボトルには次郎太と慶太の指紋が付着していたから、次郎太と慶太の二人の犯行の可能性もある。

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