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二葉邸殺人事件  作者: 髙橋朔也
出題編
1/22

二葉邸へ

 五万文字くらいで完結します。

 とある県のとある村、二葉(ふたば)村には名家・二葉(ふたば)家があった。二葉家が二葉村を治め、村人は二葉家に税を納めた。

 平成某年、二葉家現当主・二葉冬真(とうま)は隠居することを宣言した。それにより、冬真の長男である二葉一郎太(いちろうた)が二葉家を継ぐこととなった。

 辺境の村の大地主の当主が変わることは、首都の名家にも影響を与えた。東京の名家・田沼(たぬま)家現当主の田沼慶二郎(けいじろう)は、冬真の隠居パーティーに呼ばれた。

 慶二郎はそれに応じ、一人息子の田沼慶太(けいた)とともに二葉村に出向いた。

 東京から二葉村までの道のりは、大変長い距離だった。それでも田沼親子は進み、山を越えて二葉村に到着した。しかし、あいにく二葉村の地図を持ってきていなかった。二人は村役場へと歩を進めた。

「あのぅ、私達は二葉家に向かいたいのですが、道を教えてくれますか?」

「地主様のお家までですね? 少々お待ちください」

 慶二郎は地図を受け取り、印しのつけられた場所を目指した。地図はわかりやすく、一時間もする頃には二葉家が姿を現してきた。辺境の地だから土地も安いのか、二葉家は広大な土地を有していて、家も立派だった。家の高さは外観から察するに三階か四階程度。絢爛(けんらん)豪華(ごうか)と言っても差し支えはない。

「父上、かなり大きな家ですね」

「冬真とは昔からの友だけど、奴は(あきな)いの才があるからな。大成するだろうとは思っていた」

 慶二郎はネクタイの位置を整えてから、入り口の門を叩いた。すると、ギシギシという(きし)む音を発してから門は少しずつ開いていった。

「わたくしは二葉家使用人(がしら)三上(みかみ)(まさる)と申します。冬真様の隠居パーティーの招待状をお見せください」

「これですか?」

 慶二郎は胸ポケットから、冬真から届いた手紙に同封してあったカードを渡した。

「田沼様一行でございますね。承知いたしました。どうぞ、中へ」

「ああ、はい」

 門をくぐり抜け、広い庭を素通りし、邸宅の玄関扉を三上は開けた。外観もさることながら、内観も素晴らしい。使用人もよく働いているのだろう。床はピカピカに光っており、ちり一つ見受けられなかった。

「田沼様、靴をお脱ぎください。隠居パーティーは一階の大広間にて行われております」

「わかった。案内を頼みますよ」

「もちろんでございます」

 慶太は慶二郎の後に続き、その慶二郎も三上の後を追って大広間に向かった。大きな扉の先では(にぎ)やかなパーティーが(もよお)されており、慶二郎も慶太も胸を(おど)らせた。

「田沼様、このパーティーは本日の正午までは交流会の形式となっています。ワインでも飲みながら、食事会までに参加者一同と仲を深めてください」

「なるほど。正午を過ぎたら、食事会が始まるのですか?」

「いえ、正午から四時間は休息にしています。自由に行動していただいて構いません。午後四時を過ぎましたら、一度、一階の大広間に集合します。それから食事会を開始しますので」

「休息と言っても、どこで休むのでしょうか?」

「冬真様がパーティー参加者それぞれに部屋を割り振っています。各自は割り振られた部屋でお過ごしください」

「よくわかりました。ありがとう」

「ええ。パーティーをお楽しみくださいませ」

 三上は礼儀良く深く頭を下げてから、大広間から立ち去った。

 立ち尽くして、どうしようか悩む慶二郎を見つけた冬真は近寄っていった。

「久しいな、慶二郎」

「冬真。相変わらず商売一筋か?」

「当然だよ。それより、そちらのお子さんは?」

「私の息子さ。慶太という名前だ」

 冬真はワイングラスをテーブルに置いてから、慶太の顔をよく確認した。「よろしく、俺は二葉冬真。君のお父さんと、昔からの友達だよ」

 人見知りをする慶太は、赤面になって慶二郎の背に隠れた。

「すまんな、冬真。慶太は初対面の人と話すのが苦手なんだ」

「そうだったのか。悪いことをしたな......」

「そこまで気にすることでもないだろ」

「だと良いんだが」

 慶太も一応は成人していて、三人でワインの飲み比べを始めた。そうすると、慶太も次第に打ち解けていった。それをワインのアルコールが助長し、慶太と冬真は以前からの知り合いと見間違えるくらいの仲になっていた。アルコールとは恐ろしいものである。

「どうだろう、慶太君。俺の息子達とも会ってみないかい?」

 普通なら慶太は(かたく)なに(こば)むところだが、アルコールのせいかあっさりと冬真の提案(ていあん)を承諾した。

「それは良かった。では、息子達を連れてくるから少し待っていてくれ」

 息子を紹介出来ることがよっぽど嬉しいのか、冬真は満面の笑みを浮かべて大広間を退出していった。

 しかし、またすぐに戻ってきた冬真の背後には、これからの社会を引っ張っていくような若々しい少年達の姿があった。あれが冬真の息子ということだ。

 冬真の息子は五人いて、それぞれ年齢はばらけていた。長男坊が成人しているとしても、五男は12歳か13歳と言った感じだ。ただ、顔立ちは少なからず冬真に似ている部分があった。養子とかではないわけだ。

「紹介するよ、慶二郎。息子達だ」

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