3.神咲都生徒会長
「みなさん、ご入学おめでとうございます。生徒会長の神咲都です。」
舞台上の女性は静かに、でもハッキリと聞こえる声で挨拶した。
私は息をするのをしばらく忘れていた。
その女性はこの世のものとは思えないほどの美しさだった。
気づいた頃には舞台上で喋っているのはすでに別の生徒に変わっていた。
生徒会長が登場してから舞台袖に戻るまで一体何分くらいあったのだろうか?
そんなこともわからなくなるほど、私の中でしばらく時が止まっていた。
舞台上では生徒会の活動についてや、ハウスの門限、校内でのマナー等、さまざまな説明が行われていた。
前半部分を聞き逃してしまった私は一度深呼吸をして、きちんと今説明をしてくれている先輩の話に集中した。
「さてみなさんお待ちかねの、校内活動についてご説明します。」
そう舞台上の先輩が笑顔で切り出すと、講堂の一年生たちから歓声とまではいかないが嬉しそうな声がもれていた。
校内活動?
これも入学説明会で私が居眠りしてる間に説明があったのか?
そもそも私は百合女のことをそこまで詳しく知らずに、表向きの華やかさだけで入学を決めたところがある。
少し恥ずかしくなってきた。
よし、ここでしっかり勉強しよう。
と、仕切り直し先輩の説明にしっかりと耳を傾けた。
先輩の話を要約する。
校内活動とはいわゆる委員会と部活動の中間のようなものである。
百合女には部活動というものが無く、この校内活動というのが部活動でもあり委員会でもあるとのこと。
一例として文学推進部とは図書委員と文芸部が、ガーデン管理部とは環境美化委員と園芸部が混ざったようなもの。
中でも一位二位の人気を争うのがカフェ運営部らしい。
百合女は外部でのアルバイトが禁止である。
そのためこの校内活動では、なんと学校側から生徒に対して対価が払われるのだ。
要は学校に対して奉仕活動を行うことで、学校側からバイト代が払われるようなイメージらしい。
全く知らなかった。
他のみんなは知っていたようだ。
つまり学校生活を楽しみながら、お小遣いまでもらえる素晴らしいシステムということになる。
私は初耳のそのシステムに驚きながらも、いまだに頭からあの人の姿が離れなかった。
神咲都先輩かぁ。