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私立「聖・百合女学院」  作者: カイリ
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1.祝!百合女入学初日!

私は琴野鈴音ことのすずね


憧れのセント百合ゆり女学院じょがくいんに合格して、晴れて今日から華のJKになる。


ネイビーのセーラー服に赤のリボン。


窓ガラスに写ったた自分の姿を見て、


あぁ、私は今日から百合女ゆりじょ生なんだ。


と、改めて実感した。


散りかけの桜並木に囲まれた講堂へと続く道を歩きながら、華のJKになった気分をじっくりと噛み締めていた。


厳かな雰囲気の入学式を終え、講堂から教室へと向かう。


もちろんまだ友達はできていない。


百合女の制服に身を包んだ同級生たちがとても眩しく見え、


早く仲良くなりたいなぁ。


と、心の中でつぶやいた。


教室に到着しそれぞれ席に着くと、担任の日比野ひびの先生が軽く挨拶をした。


日比野先生はメガネをかけていて細身で背が高く、いかにもキャリアウーマン風の雰囲気が漂う人だった。


「早速だけど、いきなり校則違反をしている子が何人かいるようね。」


日比野先生が冷たい口調でそう言った。


初日から校則違反?


そんな度胸のある子がいるのか、と私は思った。


「全員立って。」


先生がまた冷たくそう言い放ち、私たち生徒は全員その場で立たされた。


先生が一番前の端の席から一人ずつ生徒の横に立ちチェックしていく。


私は後ろの方の席なので何をチェックされているのかここからではよく見えない。


その場で座らされる生徒と、立ったままにさせられる生徒。


どうやら違反をしている生徒は立ったままにさせられているようだ。


アクセサリーや髪型?


そう思ったけど百合女はそんなに校則に厳しくないはず。


私の番が来た。


先生は私の顔と身体を見回すと、私のセーラー服の上着の裾を軽くめくった。


中に着ていた薄い水色のキャミソールを見て、


「はい、あなたもね。」


と当然のように言い放った。


しまった!インナーは白じゃなきゃいけなかったのか!?


と、私がとっさにそう思っていると突然先生がスカートの上から私のお尻を触った。


「ひゃっ!」


突然のことに私は変な声をあげてしまった。


「あなた下も違反ね。そのまま立ってて。」


先生はため息混じりにそう言うと次の生徒のチェックへとうつっていった。


なに?なに?なにを違反してるんだろう?


私は頭の中をぐるぐるさせられながらその場に立たされていた。


全生徒のチェックを終え、先生が再び教壇へと戻っていった。


全体の3割くらいの生徒が立たされていた。


立たされている生徒の共通点が見つからない。


「早速違反をしている子たちは入学説明会に参加してなかったのかしら?」


あきれたように先生がため息をついた。


入学説明会?参加してたけど途中で居眠りしてしまったやつだ。


「聖・百合女学院は教師も含めて男子禁制。女性はみな女性としての美しさと品位を保つために聖なるおきてを破ってはいけません。」


先生が冷たい口調でそう続けた。


聖なる掟?居眠りしてる間にそんな説明があったのか。


私は大事な説明会で居眠りをした自分を責めていた。


「セーラー服の上着の下にキャミソールやシャツを着ている子がいるようね。そしてスカートの中、下着の上に重ね履きをしている子。全員校則違反です。」


え?


私はあっけにとられていた。


「当校では常に女性としての美しさと品位を保つために、そういったものの着用は禁止されています。本来あるべき姿からかけ離れるような行為は女性としてあるまじきことです。」


ん?


まだ私の頭の中は''?"でいっぱいだった。


「明日からは違反は認めません。以上です。では本日はこれで終わりです。皆さんさようなら。」


さらっとそう言い放って先生は教室を出て行った。


教室内は少しざわついていた。


ひとりまたひとりと教室をあとにする生徒がいる中、私は棒立ちのままだった。


頭の中が真っ白になった私は、少ししてから教室をあとにした。


教室を出て寮へと続く道を歩く。


百合女は全寮制だ。


学校の敷地内に寮があるため、通学という概念は存在しない。


つまり"聖なる掟"を守ったとしても、その姿を学内の人間以外に見られることはない。


寮に到着し、自分の部屋へと向かった。


寮は全員個室である。


個室と言ってもベッドと机と椅子だけがあるとても小さな部屋。


部屋に入り一人になると、我にかえった私はとりあえず中に来ていたキャミソールとスパッツを脱いだ。


上も下もスースーして気持ち悪い。


とりあえず"聖なる掟"を守った格好になった私は、ため息をつきながらベッドに仰向けに寝転んだ。


お腹の辺りにフワっと涼しい風を感じた。


「わっ!」


誰に見られているわけでもないのに、私は上着とスカートの間から見えてしまったお腹とおへそを慌てて隠した。


え?本当にこれで毎日生活するの?


これからの学校生活に不安を感じながら憂鬱な気分で1日目を終えたのだった。

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